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右も左も魔女ばかり ~離島の魔法特区にある高専に入学した僕の想定外な日々~  作者: 於田縫紀
第1章 魔女の洗礼

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第2話 包丁作りと魔女の師匠

 彼女にカットしてもらった鋼材を、例のペンチで挟んで最初の炉へと入れる。


「こっちの炉は、全体が赤くなった時点でOKなのです」


 彼女の言葉に従って赤くなった鋼材を取り出す。


「次はオレンジ色を超えて、白く光り出したところで取り出すのです。あとは頑張って叩くのです」


 という訳で炉を見て、白く見えたところで取り出す。

 そして彼女がやっていたように台の上に置いて、叩きまくる。


「全体をうまく均一に伸ばしつつ、刃に向けて細くなるように叩いて、かつ形を整えるよう頑張るのです。私はさっきの包丁を研いでおくです」


 もう叩く状態になっているので脇見も出来ない。

 ひたすら言われた通り、そしてさっき彼女がやっていたように叩いていく。


 なかなか思ったとおりの形になっていかない。

 でもあせって力強く叩きすぎたり同じ場所を何度も叩いたりしたら、その部分が薄くなってしまうだろう。


 我慢してとにかく全体を伸ばすよう、そしてその中で刃を、背を理想に近くなるように叩いていく。

 何とか形になる頃には、既に僕の顔にはかなりの汗が浮かんでいた。


 実際には5分も作業をしていないだろう。

 それでもかなりの時間、叩いていたような気がする。


「お、これは初めてとは思えない出来なのです。冷めたら研いで仕上げるので楽しみにしておくです」


 彼女の声が、僕のすぐ背後から聞こえた。

 僕としては完全に思い通りの形になった訳では無い。

 もう少し背は丸みをつけたかったし刃の均一さもまだまだだ。


 ただ面白かったし、初めてにしてはそこそこ程度のものは出来たと思う。

 もっとも鋼材の選定やカット等は彼女にやってもらったから、全部自分で作ったとは言い切れないけれど。


「詩織ちゃん、今日は刀作っているの?」


 背後で別の女性の声。

 包丁に夢中で、背後に他の誰か来たのに全然気づかなかった。


 振り返ってみると、肩より少し長い栗色の髪と白いポロシャツに紺系チェックのスカートの女子学生。

 多分年は僕より大分上、4,5年生位の落ち着いた感じの綺麗な人だ。


 今の彼女の言葉からすると、僕をここへ引っ張ってきた魔法少女は詩織ちゃんというらしい。

 先輩だから、詩織先輩というのがきっと正しいのだろう。


 しかし雰囲気的に、どうもそんな感じがしない。

 なので彼女のことは、詩織ちゃん先輩と呼ぶことにしよう。

 もちろん心の中では、だけれども。


「香緒里先輩どうもなのです。今日は新人さんお試しセール実施中なのです」


 香緒里先輩と呼ばれた女子学生は、僕を認めて頭を下げる。


「どうも初めまして。魔法工学科5年の薊野香緒里と申します。詩織ちゃんがご迷惑をおかけしていたらごめんなさい」


 僕も慌てて頭を下げる。


「魔法工学科に入学した三輪と申します」


「今お試しで包丁を作ってみたのですよ」


「へえ、ちょっと見ていいですか?」


 香緒里先輩が近づいてくる。


「香緒里先輩は私の刀作りの師匠なのですよ。この魔法効果付の炉も香緒里先輩がつくったものなのです」


 そんな感じは一切しない。

 どちらかというと、文学書を持っている感じが似合いそうな人だ。


 まあ詩織ちゃん先輩も刀工という感じは全くないのだけれども。

 ファストフード店のバイトが似合いそうな感じだ。

 この島にファストフード店は無いけれども。

 香緒里先輩は僕の作った包丁をじっと眺める。


「初めて作ったんで出来はちょっと勘弁して下さい」


 彼女は首を横に振る。


「これで初めてというなら、凄くセンスがいいと思います。綺麗に全体が伸びているし、刃の部分も綺麗に薄く出来ているし。大体は伸びきらなくて太く短いものになってしまうか、刃の部分を叩きすぎてよれよれにしてしまうかなんですけれどね。ひょっとして審査魔法か工作系の魔法持ち……ではないみたいですけれど」


 彼女に見つめられて、思わず心臓が超過勤務をしてしまう。

 こちとら女性に免疫が無いのだ。

 ましてこんなきれいなお姉さんなんてのには。

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