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右も左も魔女ばかり ~離島の魔法特区にある高専に入学した僕の想定外な日々~  作者: 於田縫紀
第1章 魔女の洗礼

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第1話 刀の工房と包丁作り

 工房は、学校の裏手に近い方にあった。

 一見倉庫とか自動車の整備場のような建物で、中には工作機械や工具類の他に漁船にしか見えないもの等も置かれている。


 工房の左側では、米国系軍人という感じの金髪マッスルな大男がバイクを整備していた。

 この迷彩服の大男は、さっきのオリエンテーションで見て知っている。

 確か僕と同じ魔法工学科の3年生で学生会役員、名前はロビーさんだったと思う。


 そして僕はこの場所を知っている。

 高専の学生会のWebページで見た奴だ。


「ここって、学生会の工房ですよね」


 彼女は頷く。


「そうなのですよ。刀の工房はここにあるのです」


 学生会から場所を借りている、という事だろうか。

 彼女は勝手知ったるなんとやらという感じで、右奥の方へと歩いて行く。


「初日から刀というのも何ですし、試しに包丁あたりを作ってみるですか」


 彼女はそう言うと、奥から鋼材をいくつか引っ張り出してきた。


「本式には精錬からやるのですが、今日はお試し工程という事で」


 彼女はそう言って僕の前に鋼材を並べる。


「日本刀の構造は知っているですか?」


「確か硬い鋼と柔らかい鉄を組み合わせて……」


 彼女は頷く。


「一般論ではそうなのです。最近は色々別の説もあるのですが。まあ今回は見本という事で一般的な日本刀と同じ程度の作りの包丁を作ってみるです」


 そう言って彼女は、鋼材を手でいとも簡単にバキッと折って3本並べた。


「え、今のって……」


「必殺加工魔法手抜き版なのです。本来は向こうの加工機械でやるのですが、今日は省略なのです」


 彼女の言葉に僕は納得する。

 そうだよな、普通の人間が5ミリはある鋼板を腕力で折ったりはできないよなと。


 ここは魔法特区の魔技高専だ。

 彼女も魔法を使える、つまり魔法使いなのだろう。

 どちらかというと魔法少女という感じだけれども。


「僕は魔法を全然使えないんですけれど」


「全く問題は無いのですよ。私も加工魔法は覚えたばかりで苦手なのです」


 確かにバキッと折ってというのは、加工魔法としておかしい気がする。

 彼女は魔法使いとしては、それほど能力が高い訳ではなさそうだ。


「とりあえずこの硬い鋼材を軟鉄でサンドして、ここに入れてやるのです」


 彼女は鋼材を巨大ペンチのような工具で挟んで、一番左の炎が見える穴に入れる。


「この炉は鋼材の接着用の炉なのです。魔法効果たっぷりで分子まで完全に密着させるのです」


 さすが魔技高専、便利なものもあるもんだ。

 完全に全体が真っ赤になったところで、彼女は炉から鋼材を取り出す。


「さて、素材が分子単位で密着したので、次の工程なのですよ」


 彼女はそう言うと、今度は隣の炉に鋼材を入れた。


「この炉は、展性と延性を一時的に増大させる炉なのです。例によって魔法効果たっぷりなのです」


 今度は全体が明るいオレンジ色になったところで取り出し、頑丈そうな金属製の台の上に置く。


「ここからはスピード勝負なのですよ。叩いて叩いて伸ばすのです」


 横に置かれていたハンマーでオレンジ色に光る鋼材を叩く、叩く、叩く。

 たちまちのうちに3枚重ねの厚めの鋼材は伸びて、形を変える。

 鋼材が光を失うとまた炉に入れ、光る状態にして出して叩く。

 数分後、鋼材は明らかに刃物の形に姿を変えていた。


「冷めたら砥石で研げば完成なのです。どうです、試しにやってみないですか」


「いいんですか」


 思わず僕は前のめりに聞いてしまう。

 なかなかに面白そうだ。


 金属が叩いているうちに思い通りの形へと変わっていく。

 それを自分の手でもやってみたかった。

 包丁なら作った後に寮でも使えるだろうし。


「材料代とかあまり高いと払えないんですけれど」


「大量に在庫はあるので問題ないのです。あと今回は初心者用ですので、カットその他はサービスでやってあげるです」

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