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右も左も魔女ばかり ~離島の魔法特区にある高専に入学した僕の想定外な日々~  作者: 於田縫紀
第2章 魔女のいる日常

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第39話 記念品分析中

「後で説明する。取り敢えず帰ってからだ」


 典明はそう言って、寮への道を急ぐ。

 土曜日夜23時。保養所で飯食って風呂入って騒いだ後の帰りだ。

 例によって泊まって行けとは言われたけれど、精神的安全の為に寮へ向かっている。

 そして典明は、さっき言った言葉の後は無言だ。


 寮の受付は既に閉まっている。

 なので外出札を裏返しただけで僕らは中へ入る。


 階段を上って3階、廊下を歩いて僕の部屋へ。

 何故毎回僕の部屋かというと、典明の部屋は既にとっちらかっていて中に他人が入れる状態ではないからだ。

 まあそれはともかく。

 典明は玄関の鍵を閉めると、ふうっと息を吐いた。


「どうしたんだよ、一体」


「中で説明する」


 そう言って部屋の中へと入り、そしてディパックを背中から外し前に置く。

 そして例の杖、ヘリテージ2と呼ばれていた杖を取り出す。


「ああ、正直ほっとした。というか道中気が気じゃ無かった」


「誰かつけてきていたとか」


「だったらとっととさっきの保養所に戻っている。あそこは危険人物が多すぎて安全だ。あんな危険な魔法使いの中に手を出せる存在がいると思えない」


 そう言って杖を握ったり構えたりしている。


「そんなに凄いのか、その杖」


「学校の購買で売っているのとは別物だな。桁が違う」


 飽きもせず色々と眺めている。 


「正直、詩織先輩が使っていたものに比べれば、若干劣るかもしれない。でもやっぱり今の水準では、最高とか最強の1つとしか思えない。冗談じゃ無く凄い逸品だ。視力0.1が初めて眼鏡をかけた時のような感動だ」  


「こっちはキーホルダー1個だけどな。えらい違いだ」


「どれどれ」


 典明は杖を構えたまま、僕の招き猫型キーホルダーを見る。


「これも……というか、多分この杖と作りや原理はほぼ同じだな。大きさが違うだけで。元々のこれは魔法の増幅器兼照準器、つまり魔法杖だ」


 典明は杖を構えて見るだけでそう判断する。


「そう言えばそんな事を言っていたな。わかるのか、それが」


「この杖を使えば。僕の分析魔法、ここでは検定魔法と言うらしいけどな、その精度が強烈に高まる。成分から構造から。既知のものならどういう仕組みでどういう理論で動いているかも全部見える。ただ、この杖はあくまで増幅器と照準器だけれど、このキーホルダーの機能はそれだけじゃ無い」


 何だろう。

 新機軸を組み込んだって、詩織ちゃん先輩は言っていたけれど。


「まずわかる部分からいこう。基本機能はこの杖と同じ、増幅器兼照準器だ。使っている機構もほぼ全く同じ。強いて言えば杖の方が大きい分、魔力安定化機能や魔力蓄積機能等の使いやすさに関する追加機能がついている位だ。性能はそれら追加機能と杖そのものの大きさで杖の方が上だが、あくまで基本設計は同一。同じ人間が作ったんだろうな、きっと。

 ただ照準器が極めてピーキーになっている。つまり普通の杖が1センチの光線だとすれば、これは0.1ミリの極細レーザーみたいなものだ。でもこれはあくまで調整でそうしているだけで普通にも戻せるだろう。何故そんな設定なのか理由は不明。

 そして招き猫の方にあと3つ、余分な機能が入っている。1つは多分ロガーだ。魔力記録計。これである程度の魔力の大きさや種類、発動時間等を記録しているんだろう。でもあと2つの機構、それが本官にはわからない。

 1つは何か固有の魔力を発しているような気がするがそれが何の為かわからない。強いて言えば発電量が微少な太陽電池。それに近い魔力系の何かだ。ごく微少な魔力を放っているけれどそれで何が動くという訳では無い。あっしには理解できない。

 もう1つの機構は逆に魔力を散らしているような何かだ。これも何かはわからない。強いて言えば何かに対するフィードバック回路に近い気がするが、これも吾輩の理解の外だ。

 結論、これはミーの理解できる機械では無い。これは何って言っていた」


「詩織先輩は、これを魔力訓練具だって言っていたな。魔法を訓練する為の道具だと。修先輩は持っているだけでいい、気になったら訓練する程度でいいって言っていたけどな」


 典明は頷く。


「案外本当かもな。少なくともそれが嘘だと言えない程度には色々凝った機構で作り込んでいる。人の手で作れる限度を超えた機構だ。多分工作魔法をフルに使ったんだろうな」


 なるほど。

 見かけは別として、これも杖と同じ位には珍しい価値のある品らしい。

 とすると次の議題は……


「さて、明日はどうする」


「拙者はともかく、おぬしは朝食作りに行かなければならぬのであろう。朝7時に」


 そうだった。

 刺し身茶漬けプリーズとか言われていたんだった。


「ならば小生も付き合わさせて貰おう。確かにあの魚は旨かった」


「助かる」


 あの寝乱れた危険な空間へ独りで突入する勇気は僕には無い。


「なら明日、6時52分な」


 そう約束して典明は立ち上がった。

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