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右も左も魔女ばかり ~離島の魔法特区にある高専に入学した僕の想定外な日々~  作者: 於田縫紀
第2章 魔女のいる日常

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第37話 招き猫のキーホルダー

「しかし酷い状態ですね」


「自覚はあるんだけれどさ。今年で4年目だけれど、年々悪化しているような気がする」


 キッチンで夕飯の下準備をしている僕に、ルイス先輩が応えてくれる。

 男性陣と女性陣の半数は大広間に戻ってきている。

 酔っ払いとトド化した連中はまだ露天風呂だ。

 一応医療専攻の月見野先輩がモニターしているらしい。

 でもあの人も結構飲んでいたけれど、大丈夫なのだろうか。


「何なら夜はさっぱり目で抑えておきますか」


「その必要はない。僕はそっちの方が好みだけどさ。なんやかんや言ってもみんな胃袋が丈夫だからな。あと2時間もすれば完全復活する」


「強靱ですね」


「魔法使いだからな」


 魔法使いとはそんな強靱な人種だったのか。

 RPG等ではひ弱扱いされているけれど、現物は違うようだ。


 僕以外は、

  ○ ルイス先輩が大広間の座卓の場所で読書  

  ○ 修先輩と詩織ちゃん先輩が男性更衣室の中で何か工作中

  ○ ロビー先輩が卓球台の横で筋トレ

  ○ 典明が昼寝

  ○ 風遊美先輩、香緒里先輩、世田谷先輩が隣の部屋

  ○ 理奈先輩と美雨先輩と沙知先輩が何か縫い物作業

  ○ 他はまだ露天風呂、ただし月見野先輩以外は皆よれよれ

という感じだ。


 さて、下準備はひととおり終わった。

 後はご飯を炊き始めてからで大丈夫だろう。

 手を洗ってキッチンを出る。


 真っ先に見えるのは女性3人でやっている縫い物作業。

 よく見ると縫っているのはコテコテな黒ゴシックのメイド服だ。

 これは深入りすると危険だ。

 見なかった事にしよう。


 寝ているというか倒れている典明をパスして左の男子更衣室へ。

 まあ厳密には男子更衣室では無いんだけどさ。


 扉が開いているので中を覗き込む。

 修先輩がやたら小さい何かをピンセット片手に作っていた。

 何やら基板のようなものを取り付けて最後に蓋をして、そしてふと気づいたようにこっちを見る。


「あ、ちょうど良かった」


「確かにちょうど良かったのです」


 詩織ちゃんは今修先輩が作業していた物を手に取り、僕に渡す。


「学生会入会の記念品なのです」


 渡されるまま手に取ると、それはキーホルダーサイズの招き猫だ。

 実際にキーホルダー部分もついている。

 ぱっと見た限りでは他に何も変わったものには見えない。

 今閉めた蓋も脚の部分になっていて、蓋とはわからない。


「いいんですか。何か色々入っているようですが」


「これは朗人用の魔法訓練具なのですよ。指で招き猫を挟んで持って、招き猫を魔法の対象を睨むように向けるのです。その状態で魔法を念じると、魔力の訓練になるのです」


 修先輩も頷く。


「まあまだ論文化はしていないけれど、ある程度は効果があると思うよ。まあ期待せずに持って歩くだけでもいい。もし気になったらたまに持ってトレーニングする程度で」


「いいんですか、そんな物を」


「元は私のお古なのですよ」


 え、詩織ちゃん先輩って最強の魔法使いでは……

 修先輩が苦笑する。


「元々は魔道具、それも最強クラスの増幅・集中用具として作ったんだ。要は魔法使いの杖の超小型高性能版。詩織が長い事使っていたけれど新しい杖を作ったので用済みとなっていたんだ。それを詩織の要望でトレーニング用に改造した。だから金銭的なものはほとんどかかっていない。この大きさだしね」

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