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右も左も魔女ばかり ~離島の魔法特区にある高専に入学した僕の想定外な日々~  作者: 於田縫紀
第6章 魔女と旅行 ~恋人は魔女?~

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第129話 怪談? 『桃太郎』R15指定?

 3階というけれど、実態はロフトというか屋根裏部屋だ。

 上は傾斜しているけれど、床面積はかなり広い。

 少なくとも1階の倍以上ある。

 これは、もしや……


「これ、隣の部屋と繋げてないか、壁とっぱらって」


 昨年もここに来た愛希先輩が指摘。


「その通りなのですよ。ちょっとだけ修先輩に改造して貰ったのです。出る際には元に戻すので問題無いのです」


「工作魔法と修理魔法だけれどね。杖を使えばこれくらいは何とか」


 おいおい、持ち主に無断で家の改装か。

 隣も借りているから、きっとバレはしないだろうけれど。


「という訳で怪談の夜なのです。世田谷先輩、新作をお願いするのです」


「はいはい」


 世田谷美南先輩が出てくる。

 修先輩と同じ大学3年生だそうだ。

 エイダ先輩の姉だけれど、血は繋がっていない。

 ただ同じ黒魔術使いだと聞いている。


「では始めます。昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでおりました。おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に……」


 あれ、これはどう聞いても桃太郎だろう。

 そう思いつつも聞き続ける。


「雉が飛んできて言いました。桃太郎さん、団子をひとつ下さいな……」

 うん、今までは間違いなく桃太郎だ。

 他の人も不審な顔をしている。


「そして桃太郎はサル、犬、雉を連れて悪い鬼がいるという鬼ヶ島に向かいました。鬼ヶ島の鬼たちは桃太郎が舟で近づいてくるのを見ると、『人が来たぞ!』と大声でわめき、騒ぎ始めました」


 うん、まだ桃太郎だ。


「桃太郎が上陸すると、鬼達が襲いかかってきました。しかし桃太郎は強い。黄金の、いや桃色の右拳で先頭の鬼に殴りかかります。『うわああっ』鬼はそう叫んで倒れました。桃太郎の殴った鬼の顔の右側は大きく裂けて潰れた目玉が落ち、吹き出した大量の血とともに脳漿が浸みだしてきました。

『ふっ、拳が汚れちまったぜ』と桃太郎は独り言を言いました」


 今、遠くで何か叫び声が聞こえたような……

 鳥の声だろう、きっと。

 窓がガタガタと鳴ったのも風のせいだ。


「『くそう、よくも仲間を!』

 鬼達は棍棒を持って一斉にかかってきました。しかし鬼の棍棒の一振りを桃太郎はあっさりかわします。

『ふっ、時が止まって見えるぜ』

 そして桃太郎は鬼の懐に入ってアッパーの一撃!

『タイガーアッパーカット!』」


 グギッ、バタッ。

 今、確かに音がした。

 それも割と近くで。

 世田谷先輩の話は、まだ続く。


「鬼の首は裂け、血を吹き出したままダンスを踊るかのように動いて倒れました。首から上はもう何処にも見当たりません。

『人間め、残念だが貴様にはかないそうもない。でもせめて女子供を逃がすまでは俺達も倒れる訳にはいかない』

『ならば倒れろ。ペガ●ス流星拳!』

 リーダー格の鬼は桃太郎の放つ無数の拳により、粉々になり消え去りました。あたりに残る血しぶきと濃厚な鉄の香りだけが、そこに誰かいた事を僅かに物語っていました」


 ギャー!

 さっきより近くで、鳥の声が聞こえた。

 鳥の声だよな、間違いなく。


 ドサッ、バタッ。

 近くの別荘の扉が壊れているんだろう。

 そうに違いない。

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