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17。次の駅は天国(中)

第十七章:次の駅は天国(中)


ユキ(望望)の母は、スクリーンのストーリーに感極まって涙を流しながら、ユキに手を取らせ、優しく握りしめた。


ユキの父も同様に深く感慨にふけっていた。娘が演芸界での活躍をひたすらに目指しており、ニューヨーク市の演劇と映画の専門的な教育資源も豊富であるにもかかわらず。そして、アメリカの生活に適応することも同じくらい非常に困難な挑戦であるにもかかわらず。彼女の自立心を養うために、この数年間、香城に留まらせたことで、確かに彼女の成長を見守る多くの時間を逃してしまったのだ。


***


武は療養所を訪れることがますます増えていたが、昏睡状態の夏を見守る立場から、心も子供のようになってしまった夏の世話をする立場へと変わり、心身ともに疲弊しきっていた。武の母でさえ見かねて、二人が火遊びをしていると非難した。小夜は罪悪感に耐えながら、毎日武と共に夏の元へ通っていたが、心の中に生じる恐怖と不安感が、彼女を次第に精神崩壊の縁へと追い詰めていた。


〇 シーン 5-1:療養所・中庭(昼)

数ヶ月が過ぎた。武は療養所にいる夏をますます頻繁に見舞うようになっていた。芝生の上で、夏は蝶を追いかけて走り回り、銀の鈴のような笑い声を上げている。


武はベンチに座り、うつろな目で夏を見つめている。目の下には深いクマがあり、全体的に一回り痩せこけ、まるで生ける屍のように憔悴しきった表情をしている。


武(モノローグ):「以前の俺は、ただベッドのそばに座って、昏睡状態の夏を見守っているだけだった。でも今は、心まで子供に戻ってしまった夏ちゃんの世話をしなければならない……。毎日、毎分、毎秒、俺は自分に言い聞かせている。彼女の手を握ってはいけない、キスをしてはいけない、彼女を『彼女』と呼んではいけない。俺はただの『お兄ちゃん』なんだ、と。」


夏が武のそばに走って戻り、彼の腕を引っ張って揺らす。


夏:「お兄ちゃん!お兄ちゃん!かくれんぼして遊ぼうよ!」


武(無理に元気を出そうとするが、疲労を隠しきれない):「ああ……お兄ちゃんと遊ぼうな……」


武が立ち上がろうとした時、足元がふらつき、危うく倒れそうになる。昏睡状態の夏を見守る立場から、心まで子供のような夏の世話をする立場へと変わり、このような長期にわたる役割演技と心理的抑圧が、彼を心身ともに疲弊させていた。


〇 シーン 5-2:療養所・廊下の突き当たり(昼)

武は壁に寄りかかりながら、廊下の突き当たりにあるベンチまで歩き、座り込んで息をつく。


武の母が保温ポットを手に持って近づいてくる。息子の人とも幽霊ともつかないその有り様を見て、ついに耐えきれなくなる。


武の母(目を赤くし、厳しい口調で):「武!鏡で今の自分の顔を見てごらんなさい!いつまでこんな風に自分を痛めつけるつもりなの!?」


武(うつむき、片手で顔を覆いながら):「母さん……俺は大丈夫だ、ただ少し疲れてるだけで……」


武の母:「もう見ていられないわ!あなたと小夜、一体どういうつもりなの?あなたたち二人はどう見ても恋人同士なのに、毎日ここに来ては、夏ちゃんの前でただの友達のフリ、良きお兄ちゃんとお姉ちゃんのフリをして!あなたたち二人、完全に火遊びをしているようなものよ!」


武(勢いよく顔を上げると、両目は血走っている):「じゃあ俺にどうしろって言うんだ!?母さん、だったら俺にどうすればいいか教えてくれよ!!こうでもしないと、夏ちゃんはいつでも崩壊してしまうんだ!俺が夏ちゃんに借りがあるんだ!俺が彼女をこんな風にしてしまったんだ!医者だってはっきり言ったじゃないか、『君は罰を受けるべきだ!』って!」


武の母(ひどく心を痛めて):「あなたが夏ちゃんに負い目があるのは分かるわ。でも、小夜はどうなの!?小夜があなたたちに何か借りでもあるの!?小夜がもうずっと前に精神的に限界を迎えていること、分かってないの?こんなごまかしを続けていたら、遅かれ早かれ全員を死に追いやることになるわよ!」


〇 シーン 5-3:武と小夜の小さなアパート(夜)

狭いアパートの中は、息が詰まるほど重苦しい空気に包まれている。小夜は暗い部屋の中で一人ソファに座り、両腕で膝を抱え込んでいる。窓から差し込むかすかな街灯の光だけが頼りだ。ドアの鍵が回り、武が疲労困憊した体をひきずって入ってくる。彼は暗闇の中にいる小夜を見て、ハッと立ち止まる。


武:「小夜?どうして電気をつけないんだ?」


武は手を伸ばして明かりをつける。眩しい光が点灯し、そこには青白い顔をして、恐ろしいほど虚ろな目をした小夜がいた。小夜は毎日武と共に夏の元へ通う中で、心の中で強い罪悪感に苛まれ続けていた。


小夜虚ろで掠れた声で):「武……今日、夏に聞かれたの。どうしてお姉ちゃんはいつも、悲しそうな目でお兄ちゃんを見つめているのって……」


武(胸が締め付けられ、歩み寄って彼女を抱きしめようとする):「小夜……」


小夜(武の手を乱暴に振り払い、全身を震わせる):「触らないで!」


武はその場に凍りつく。


小夜(涙が溢れ出し、次第に感情がコントロールできなくなる):「武、私たち一体ここで何をしてるの?私は毎日夏に会いに行って、毎日彼女の前で優しいお姉ちゃんを演じてる……でも本当はみんな分かってる、私は泥棒なのよ!私は親友の彼氏を盗んだの!」


武(苦しそうに頭を抱える):「小夜、違……君がそばにいてくれなかったら、俺はとっくに……この世にいなかった。」


小夜(ヒステリックに泣き叫ぶ):「そうよ!あんたを愛してるわ!私は最初、あんたを支えるために、全身全霊であんたと一緒にいることを選んだの!でも今、夏が目覚めたじゃない!彼女が目覚めたのよ!彼女が私に向けて笑いかけるたびに、自分がすごく恥知らずで汚らわしい存在に思える!彼女は一瞬ですべてを思い出して、そして自分を裏切ったのは私だと指を差すわ!軽蔑の眼差しで私を見て、私に一生その目を忘れさせないようにするんだわ!」


小夜の心に生じた恐怖と不安感は、武には見せられない崩壊の縁へと、次第に彼女を追い詰めていた。


小夜(武の胸ぐらを掴み、泣き崩れる):「武、もう耐えられない……この罪悪感が、毎日私をなぶり殺しにしているみたい……もう本当に耐えられないの……もう無理よ……」


武は泣き崩れる小夜をきつく抱きしめ、自身も涙を流した。この小さなアパートの中で、二人の魂はこのような歪んだ関係の中で引き裂かれていた。


***


ユキは、シーン5-1が主演男優にとって大きな挑戦であったことを覚えている。なぜなら、極度に憔悴しきった「生ける屍」のような武を表現しなければならなかったからだ。主演のイッシン・ウォン(黄一心)には、単に疲れ果てたという演技次元にとどまらず、両目が虚ろで生気がなく、途方に暮れたような呆然とした感覚を出すことが監督から求められていた。それでこそ、武の母親が彼を真っ向から叱責できるからだ。


その中でも最も重要なのは、主演が醸し出す「生きる希望を失った」という感情である。


当時、ユキは彼をあまり静かにさせておくつもりはなかった。彼女は自分のクロースアップの撮影が終わると、そのままイッシンの隣に座り、足をブラブラさせながら、「非常に共感した様子」で気まずいお喋りを始めた。


「いやー、イッシンお兄ちゃん、あのね、最初私たちが告白シーンをいくつか撮ってた時、巨星監督は絶対に私を牽制しようとしてたのよ!なんと拡声器を持って私に『星の魔王決戦ダーク魔法少女』を朗読しろって言ったの。当時のスタッフ何百人もの目が私に釘付けだったの知ってる?あの感覚ってば、まるで火あぶりにされてるみたいだった。本お嬢様が社会に出た途端に、いきなり社会的に抹殺されるなんてあり得る?泣きそうだったわ。それにね、これ絶対にうちのエアリーママ(涼風)が私を監督に売ったのよ、じゃなきゃこんな名作が私のスマホに入ってるなんて誰が知ってるの?うぅっ、今回は本当に生きる希望を失ったわ、純粋に生ける屍よ……。今やスタッフ全員が私が暗黒系魔法少女好きだって知ってるし、巨星監督がストーリーのクライマックスで、私に直接魔法少女のコスプレ服を着せて演技を続けるように言うんじゃないかって本気で怖い。知ってるでしょ、巨星監督って劇的な矛盾を作り出すのが得意だから、私にこういう勝負服を着せることだってやりかねないのよ!」


彼女は一人でペチャクチャと喋り続け、話題があちこちに飛んではまた戻り、まるで明日の朝までこの気まずいお喋りを続ける勢いだった。


「はいはい、イッシンお兄ちゃんが何も言わないなら、私が本当に美人でスタイル抜群で青春真っ盛りで視聴者ウケが良くて、だからこそ魔法少女のコスプレが似合うって黙認したってことにするね。正直言って、この映画を撮るのに私も腹をくくってるから、(この映画が)ダメだったらそれこそ本当に生きる希望を失っちゃうわ。慰めて……」


なんと、「生きる希望を失った」ことに関するスピーチだったのだ。


「それからね、実は私が書いた『時のパズル』にも、生きる希望を失ったキャラクターが深く描かれているのよ!どれくらい知ってるか分からないけど、私が武則天のストーリーを書いた時、唐の中宗・李顕と唐の睿宗・李旦はどちらもかなり生きる希望を失って、目が死んでるように描写したのよ。」


1対1の歴史の授業になったのだろうか?


「考えてもみてよ。あの兄弟の半生は、かつて祖父の妃であった母・武則天にずっと支配されていたの。そして母が権力を失った頃には、二人とも権謀術数の使い方をすでに学べなくなっていて、唐の中宗・李顕は妻の韋后と娘の安楽公主の傀儡になり、唐の睿宗・李旦は最も才能に溢れた息子・玄宗李隆基の傀儡になったの。結局、二人とも生涯にわたって自分の意志で動けない現実に逆らうことができず、これこそ非常に『生きる希望を失った』と実感させられる見本みたいなものよ!」


「だから私たちの映画の話に戻るけど、」


私たちの映画の話に戻る!?


「実は夏ちゃんにも、生きる希望を失うような感情がたくさんあるの!例えば、告白する前からあんたたちが『恋人未満』だって気づいていたこととか、あんたと付き合っている時に上の空だと感じたこととか。その感覚だけでもう、すごく生きる希望を失っちゃうのよ。これはキャラクター間の共鳴で、私たちの脚本がすごく良く書けてるからこそ存在するの。遠慮しなくていいから、親切なアドバイスをしてあげたこのお嬢様に直接お礼を言いなさい!」


呆気にとられていた。


「さてさて、イッシンお兄ちゃん、気を取り直した?準備できた?本当に全く反応がないみたいだから、あと3分だけ話したら本当に口を閉じることにするね……」


「よし、もう口を閉じていいぞ。」後ろでブレーキを踏んだのは巨星監督だった。ユキが振り返ると、そこには巨星監督だけでなく、スマホで撮影している制作進行もいた。


「映画撮影において動物と子供が一番撮りにくいからな。林蘥望ちゃんが『生きる希望を失った』演技にすんなり入れるよう、恥ずかしくて爆笑するようなネタをいくつか交互に挟んでおけば、そう簡単には悟りを開いてしまわないだろうからな。」


このような「蟷螂の斧、黄雀後ろに在り(カマキリがセミを狙い、その後ろからスズメがカマキリを狙う=出し抜く)」の計略など、巨星監督にとってはお手の物であった。そして主演男優も、見事に「生きる希望を失った」状態に仕上がっていた。


***


夏の弟である冬馬はすでに成人しており、あらゆる困難を乗り越えてカナダから帰国し、姉の世話をすることを決意した。武と小夜の間の暗黙の了解を知った冬馬は激怒し、二人に直ちに消え失せるよう要求した。しかし、医師から夏に刺激を与えてはならないと強く警告されていたため、やむを得ず現状を維持するしかなかった。


〇 シーン 6-1:国際空港・到着ロビー(昼)

3年が経過し、夏の弟である冬馬は、かつて母親の後ろで自分の意志を持てなかったあの小さな少年ではなくなっていた。冬馬はスーツケースを引きながら到着ロビーに歩み出る。今はスタイリッシュなトレンチコートを着ており、その眼差しは固く鋭い。

姉が目覚めたという知らせを聞き、冬馬はあらゆる困難を排してカナダから戻り、姉の世話をすることを決心したのだ。


〇 シーン 6-2:療養所・病室前の廊下(昼)

冬馬は荷物を持ち、大股で夏の病室へと向かう。

病室の入り口のガラス窓の前に来た時、足がピタリと止まる。

ガラス越しに、病室内の光景が見えた。夏がうつむいて夢中でジグソーパズルをしている。その横に座っている武が、無意識に机の上のコップを取ろうと手を伸ばす。同時に、小夜もコップを取ろうと手を伸ばした。二人の手が空中で触れ合うと、小夜は自然な動作で裏返して武の手を握りしめ、その目には恋人同士にしか見られない暗黙の了解と、疲れ果てた依存の色が浮かんでいた。武も彼女に慰めるような視線を返す。


ドアの外に立っていた冬馬の瞳が激しく収縮する。あの親密なボディランゲージと息の合った様子は、絶対に「ただの友達」のものではない。


冬馬(歯を食いしばり、両手を固く握りしめて):「武……小夜……あんたたち、まさか……」


〇 シーン 6-3:療養所・屋上庭園(昼)

強い風が屋上に吹き荒れている。冬馬が屋上の鉄の扉を勢いよく押し開け、怒り心頭で飛び出してくる。武と小夜が彼女の後ろに続くが、二人の顔色は非常に悪い。冬馬が振り返り、鋭い刃のような視線で二人を激しく睨みつける。武と小夜の間の関係性を知り、冬馬は激怒していた。


冬馬(怒りのあまり逆に笑い出す):「なるほどね……どうりで、あなたたちが電話でお姉ちゃんの状況を話す時、いつも口ごもっていたわけだ!あなたたち二人、もうとっくに一緒にいたのね!」


小夜(顔面蒼白になり、一歩前に出る):「冬馬、私からも話したいことがたくさんあるの……少しだけ聞いてくれない……?」


冬馬(勢いよく小夜を指差し、厳しい声で遮る):「黙って!オマエは昔から口を開けばお姉ちゃんが親友だって言ってたじゃない!お姉ちゃんが(武を指差し)昏睡している間ずっと、あんたたちは裏で関係を持ってたのね!こんな不純な関係を続けて、恥知らずにもほどがあるわ!」


その言葉は重いハンマーのように、小夜の心を激しく打ち据えた。小夜は膝から崩れ落ちそうになり、幸い武が彼女を支えた。


武(小夜をかばうように前に立ち、震える声で):「冬馬くん!お願いだから小夜を責めないでくれ!あの時完全に崩壊していた俺を、小夜が救ってくれたんだ!全部俺が悪いんだ!」


冬馬(目を赤くし、涙を溜めているが、必死にこらえて落とさない):「そうね!おまえたちが悪いわけないじゃない?苦難を共にした愛情なんだから、すっごく偉大だわ!じゃあ私のお姉ちゃんは!?今の状態じゃオマエたちのことを見抜けるわけがないからって、日夜オマエたちをいい人だと思い込んでるのよ!オマエたち!スリルがあってさぞ興奮したでしょうね!」


冬馬は深呼吸をし、罪悪感に満ちた二人の視線から目をそらし、屋上へ上がってきた入り口の方へ視線を戻す。


冬馬(氷のように冷たく決然とした口調で):「今日という日まで、私が成人して、お姉ちゃんの保護者になれる日をずっと待ってたわ!これからは私がすべての責任を持ってお姉ちゃんの面倒を見る。だからオマエたち二人は今すぐ消えて。二度と私のお姉ちゃんの前に現れないで!」


武(焦って前に飛び出す):「それはダメだ!冬馬くん、君がそうしたい気持ちは当然だ!でも、夏は今ずっと俺たちを信頼しているんだ。もし俺たちが突然消えたら、彼女は耐えられない!」


冬馬(冷笑する):「耐えられない?それこそ偉ぶってるだけじゃない!オマエたち二人のような偽善者は本当に救いようがないわ!私、今すぐ病室に降りて、お姉ちゃんに全部話してくる!」


冬馬はきびすを返し、下の階へと駆け出す。武と小夜は顔色を変え、慌てて追いかける。


〇 シーン 6-4:療養所・主治医のオフィス(昼)

冬馬は怒りに任せて病室へ向かおうとしたが、廊下で看護師たちに止められ、オフィスへと通された。冬馬の計画を聞いた医師は、極めて深刻な顔つきになり、彼の考えが不適切であることをはっきりと告げた。


医師:「お気持ちは分かります!ですが、お姉様の状況を考えると、絶対にそのようなことはするべきではありません!」


冬馬(激昂して):「先生!あの人たちは私の身内じゃありません!偽りの優しさを持った他人です!」


医師(厳しい口調で、専門家の権威を漂わせて):「私は確かに警告しました。夏さんの脳は現在極めて脆弱な状態にあり、いかなる刺激も絶対に与えてはならないと。もしあなたが軽率に彼らの関係を暴露したり、これまでずっと寄り添ってきた『お兄ちゃんとお姉ちゃん』を無理やり追い出したりすれば、夏さんの認知は瞬時に崩壊します!その時、彼女は再び深い昏睡状態に陥るか、最悪の場合脳死に至る可能性すらあります。お姉様の主治医として、私はこの非常にリスクの高い事態を避けるために尽力してきたのです。」


冬馬はその場に硬直し、顔に浮かんだ怒りは次第に恐怖と無力感に変わっていった。彼女が振り返ると、ドアのところに立ち、同じように苦痛に満ちた顔をしている武と小夜が見えた。冬馬は、医師の言うことが正しいと悟った。姉の命のために、彼女は軽はずみな行動をとるわけにはいかなかったのだ。


冬馬(力が抜け椅子に座り込み、両手で顔を覆って押し殺したような泣き声を漏らす):「もう……こんなことになってるなんて……」


残酷な現実に直面し、冬馬はどうすることもできずに現状を維持し、武と小夜が引き続き「お兄ちゃん、お姉ちゃん」として夏のそばにいることを受け入れるしかなかった。亀裂はすでに深く刻まれ、三人の関係は薄氷の上を歩くようで、いつ粉々になってもおかしくなかった。


***


スクリーンに映し出された6-2の暗流が渦巻く「病室の内外が共に驚愕する」感情的なシーンに、観客は胸を締め付けられた。しかし、撮影当日の実際の状況も同様に、現場の俳優たちをハラハラさせるものだった。


脚本には夏ちゃんが「うつむいて夢中でジグソーパズルをしている」と書かれており、ユキに本当にやらせる事を与えるために、小道具スタッフは難易度の低い200ピースのキャラクターパズルを彼女に適当に渡していた。


本番のカメラが回った時、レンズは武と小夜の、空中で交差する禁忌と依存に満ちた両手にフォーカスする準備をしていた。これは抑圧的で、唯美的でありながら、裏切りの感覚に飲み込まれるようなクローズアップである。二人を演じる俳優が、「疲弊の中で互いに温め合う」ような悲壮な感情をようやく作り上げ、指先がゆっくりと近づき、そっと触れ合ったその時——


この極めて緊張感のあるロマンチックな瞬間に、本来ならば完全にパズルの世界に没頭し、簡単に完成させた後わざと崩しては再び組み立てているはずのユキが、突然、雷のごとき速さで「シュッ」と音を立てて、二人の重なった手の間に手を伸ばしたのだ!


「脚本ってこうだったっけ?」クレア‧イップ(葉暁睛)でさえ自分が台本を覚え間違えたか、このシーンが香城映畫の名物「飛紙仔(現場での急な台本変更)」で変えられたのかと疑った。


わずか数秒の間に、武と小夜の顔に浮かんでいた「悲壮と依存」は、リアルな「驚愕と疑念」へと変わってしまった。そしてドアの外で拳を握りしめ、「天を衝くほどの怒り」の感情を作っていた弟・冬馬も、完全に呆気にとられ、全く反応できなかった。


結局、巨星監督がNGを出し、説教をする羽目になった。「林蘥望ちゃん、このシーンはまだストーリーが分岐するルートまで発展してないんだ。だから、焦る気持ちは分かるけど、まだ創造の自由を十分に発揮する段階じゃない。悪いけど、その手を引っ込めてパズルに戻ってくれないか。」


「夏の私としてはね、たとえ6歳の小さい女の子でも『三本の矢』の物語くらい知ってるから、私たち3人が心を一つにして困難を乗り越えるっていう演技を、監督に選んでもらおうと思って。」


「その通り、私は今『必要ない』という選択をした。位置について、カメラが回るのを待ちなさい。」


「それからね、巨星先生も知っての通り、私、自分で手を動かして『時間のジグソーパズル』の内容をいっぱい組み立てたじゃない?こんな小学生みたいなパズル渡されて、もうササッと3回も4回も組み立て終わっちゃったんだけど。」


「そうだな、君が『香城一の脚本家』だという身分への『配慮』が足りなかった。君にいつも『幼稚な』芝居ばかりさせるべきではなかったな。だから、もっと想像力を働かせて、このジグソーを『時のパズル』の主人公や様々な歴史上の人物に見立ててくれないか。彼らをどう繋ぎ合わせるかしっかり考えてから、2つのピースを合わせるんだ。それでもまだすぐに3回も4回も完成させてしまうようなら、またその時話そう。」


完全に手玉に取られているユキだけでなく、クレアでさえ巨星監督のこの子をコントロールする手腕には感嘆させられた。まるで林蘥望ちゃんの「取扱説明書」を持っているかのように、彼女がどんな突拍子もない冗談を言っても、あっさりと受け流してしまうのだ。


第七節:苦痛を伴う決別と別れ

弟の冬馬が戻ってきた後、夏の封じ込められていた記憶に突破口が開き始めた。例えば、成長して大人になった弟を認識し始めるなど、認知と現実にズレが生じ始めた。冬馬を含め全員が非常に緊張し、決して焦ってはいけない、夏が自分自身で一歩ずつ記憶を振り返るのを待たなければならないと考えた。


〇 シーン 7-1:療養所の病室(昼)

ブラインドの隙間から差し込む陽光が、病室のベッドの布団の上に斑模様の光を描き出している。18歳の冬馬はベッドの前に立ち、少し体をこわばらせていた。彼女は、心がまだ6、7歳のままの姉・夏を見つめている。夏はベッドに座り、古びたぬいぐるみを手に持っている。


弟の冬馬がカナダから帰国して以来、夏の封じられていた記憶に、ついに言葉では言い表せないほどの突破口が見え始めていた。

夏(首をかしげ、一瞬困惑したような目をして):「あなたは……だれ?どうしてあなたの目、冬馬にそっくりなの?」

冬馬(鼻の奥がツンとするのを必死にこらえ、ゆっくりとしゃがみ込む):「お姉ちゃん……私だよ、冬馬だよ。」

夏(眉をひそめ、突然両手で頭を抱える):「ちがう……冬馬はもっと背が低くて、いつも『寝たらお姉ちゃんより大きくなる』って言ってたのに……どうしてこんなに大きいの?どうして大人の服を着てるの?」


夏の呼吸が荒くなり始め、彼女の認知と目の前の現実との間に激しい乖離が生じ始める。脳の奥深くで強力に抑え込まれていた記憶の欠片が、鋭いガラスのように彼女の神経を切り裂き始める。彼女は、目の前にいる大人になった弟のことが分かっていたのだ。


夏(苦しそうに喘ぎながら、無意識に涙をこぼす):「車のフロントガラスが割れてるの……パパ!!」


夏は突然、胸をかきむしるような悲鳴を上げ、ベッドの上で丸くなって激しく震え出した。冬馬は顔面蒼白になり、慌ててベッドサイドの緊急ナースコールを押した。


〇 シーン 7-2:療養所・病室前の廊下(昼)

病室のドアは固く閉ざされ、中からは医師と看護師が夏を落ち着かせる声と、鎮静剤が注射されて次第に静まる気配が聞こえてくる。ドアの外は、空気すら凍りついたかのように重苦しい雰囲気に包まれていた。全員が極度の緊張を感じていた。


武、小夜、そして冬馬の三人は廊下に立っていたが、誰も一言も発することができなかった。


主治医がドアを押し開けて出てくると、マスクを外し、極めて深刻な表情を見せた。


医師:「夏さんは成長した実の弟さんを見たことで、彼女の認知システムに多大な衝撃を受けました。私共で明確な評価を行った結果、決して焦らず、少しずつ夏さんに周囲の現実を理解させていけば、彼女は徐々に認知の調整を完了できると楽観視しております。」


武(切羽詰まった様子で前に歩み出る):「先生、それじゃあ夏は今どうなっているんですか?絶対にすべてのことを思い出すってことですか?」


医師:「記憶というのは水道の蛇口のように、ひねれば出るというものではありません。彼女は今、苦痛を伴う融合の過程を経験しているのです。現在は認知が極度に混乱している状態です。」


冬馬(目を赤くし、歯を食いしばりながら):「なら私は今、どうすればいいんですか?しばらくは会えないということですか?」


医師:「どうか皆さん、落ち着いてください。夏さんのことで決して焦ってはいけません。彼女の脳は度重なる情報の爆発には耐えられません。夏さんが自分自身の力で、一歩一歩記憶を振り返り、整理していくのを待たねばならないのです。この過渡期においては、皆さんからのいかなる強引なアプローチも、彼女を崩壊の縁に追いやることになります。」


武、小夜、冬馬の三人は顔を見合わせた。彼らは、もはやすべての身を切るような痛みから逃げ隠れできないことを悟っていた。


***


「幼い頃の記憶と大人になった弟との間に生じる激しい衝突」の際の極度の混乱と息苦しさを表現するため、林蘥望は撮影が始まる前、誰にも邪魔させずに鏡を見つめ、薄暗い小道具部屋に一人で丸一時間座り込み、自分自身を徹底的に「夏さん」の世界へと追い込んでいたのだった。



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