#017
1階最後の部屋は、サーラが使ったゲストルーム。
夫婦の寝室の並びにある、シンプルな部屋。
「サーラ。これは一体、何があった?」
「いや~。派手に寝ちゃった」
白で統一されたシングルベッド。枕は足元へ行き、シーツはしわくちゃ。掛け布団は、言わずもがな。
「おっちゃんたちのベッドルームと、ある程度同じだな。違うのはベッドがシングルってことか」
「うん。私が使ってたから、この部屋には誰もいないよ」
「いる方が怖いだろ。そんなの」
「それもそうだね」
カーテンの裏、ベッドの下。クローゼットは相変わらず、触れられない。
「ここにも、いないな。1階はこれで終わりか。階段は上れるんだよな?」
「大丈夫。ちゃんと使えた」
「無駄骨だろうけど、2階も確認しなきゃな」
「外にも捜しに行かなきゃだよ」
「ハァ。マジで何処に行ったんだよ」
サーラが使ったゲストルームを出て、2階につづく階段を上がる。
日が当たらないのか、朝なのに真っ暗で、薄気味悪い。
「気味が悪いな。よくここ上がれたな」
「気合いで、上ったよ」
「サーラって何者だよ」
「ただの回復術師」
夜の警らだって行ってただろ。路地裏だって、墓地の脇道だって通っていた。このくらいの薄気味悪さなんて、余裕だろ。
「よしっ!」
サーラだって上がって行ったんだ。ビビってんじゃねぇ!
階段を上がって2階に着くと、廊下の奥には短めのカーテンの裾から太陽の光が溢れていて、何故か揺れていた。
「サーラが窓開けたのか?」
「ううん。私が最初に来たときから、風に揺れてたよ」
「2階だと、バーンズさんの部屋があるのか」
「そうだね。バーンズさんの部屋は、あの窓の近くの、突き当たりの部屋だよ」
「あとの部屋はゲストルーム? 俺は2階を使うように言われてたし」
2階は両壁にそれぞれ2つずつ、計4つのドアがある。
そのうちの1つが、俺が使うように言われていた部屋。
「夜逃げなんてあり得ないよな」
「夜逃げなんて、するような家族じゃないよ」
「だよな。NPC が何の前置きも無く、消えるなんて……」
「そもそもさ、NPC って消えるの?」
「NPC でも、ストーリーに関係するラスボス的なキャラなら、ストーリー終了後に会えなくなるのは定石」
「そうなんだ。知らなかった」
「もしかして、サーラはゲームをあまりやらないタイプ?」
「RPGは好きだけど、私が好きなのは、モンスターを狩るやつなんだ」
「まさか、ハンティング・フロンティアとか? あれは神作だし、俺は全作やってる」
「おお! ハンフロ知ってる人、たくさんいるけど、全作やってる人に会うのは初めて!」
「まぁあれは、ソロか仲間内でやるやつだしね」
一部屋ずつ見ていくけれど、おっちゃんたち家族が消えた手掛かりが何も見つからない。
「バーンズさんの部屋が最後だね」
「ここに手掛かりのひとつくらい、あれば良いけど」
ドアを開けて、バーンズさんの部屋を見渡す。
「何も違和感無いな。探すだけ無駄か」
「手がかりの一つでも、何かあれば良いのにね」
「おっちゃんたちの部屋に何もなかったんだ。主人の部屋に何もなくて、息子であるバーンズさんの部屋に、何かあるとは思えない」
「とりあえず一階に戻ろう。下でどうするか考えよう」
二階の部屋を全て確認した俺たちは、何の手がかりも見つけられないまま、一階へと降りた。




