表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネヴァースフィア  作者: 天城なぎさ
ハイド原野にて/消えた一家を探せ
PR
16/18

#016

KOH(コウ)、起きて! 大変なの! KOH (コウ)ってば!」

「んん……」


 強めに揺さぶられ、仕方なく目を開ける。

 窓際のロッキングチェアには、太陽の日差しが届き、窓の外は雨粒でキラキラだ。


「サーラ、強すぎ」

「だって、全然起きないから! 起こすこっちの身にもなってよ」

「知らない。あ、そうだローブ」


 サーラから逃げるように、暖炉の前に置いていたローブを取りにいく。

 それにしても、なんだか静かだな。おっちゃんたちは、ホルタンクのとこか。


「嵐の後だもんな」


 独り言を呟き、ローブを羽織る。

 うん。良い乾き具合。


「おっちゃんたち、何処にもいないの。バーンズさんも、奥さんも」

「は? 外にいるだろ。酪農家の朝は早いし、嵐の後でもある」


 全く。サーラは一体何を言い出すのか。ゲームのNPCとはいえ、酪農家設定なら朝は家畜の世話がある。


「外も見た。背高草を掻き分けて、確認した。ホルタンクって野生動物はいるけど、誰もいないの」

「この家全ての部屋は、確認したのか?」

「したよ。全部確認した」


 いない訳がない。彼らはNPC だ。何者かに襲われてHPを全て削られたなら、復活しないのは分かる。この家の住人が消え去るなんてこと、他に何かあるのか?


「メニュー画面の確認は?」

「メニュー画面? 何で?」

「何かストーリーが始まってるとか、クエストが発生してるとか、あるだろ」

「見てない。どうしよう、失踪事件だよね?」


 サーラは今、パニックに陥っている。俺が冷静に状況把握しなければ、おっちゃんたちの失踪の真相が分からない。

 とにかく、ステータス画面の確認をする。


「昨日と何も変わっていない。クエストの発生も無しか」

「どうしよう、KOH (コウ)……」

「もう一回、部屋を確認する。その後に外」

「うん」


 リビングを出て、廊下へ。ドアは3つ。奥には階段。近いドアから確認していく。


「ベッドルームか。ダブルベッドってことは」

「ここは、おっちゃん夫婦の部屋だよ。多分」


 ブルーの掛け布団を捲って見ると、そこにおっちゃんたちの姿はない。

 床まで届いている白いカーテンの裏側にも、ベッドの下の隙間にも。


 おっちゃんたちはいない。


「クローゼットは見たのか?」

「開けられなかったよ。ゲームの世界だからかな」

「そうか」


 実際、クローゼットに近づいてみると、開ける為のコマンドは現れないし、手を近づけてみても、空を切るだけだ。


「ダメか。次の部屋に行くぞ」

「うん」


 ベッドルーム出ると、次ははす向かいのドア。


「ここは……。バスルーム?」

「そうみたい。ここは隠れるような場所は無かったよ」

「小さい子どもなら、隠れられるか。大人だと無理だな」

「だよね」

「ん? これは?」


 脱衣所だろう場所に、洗濯機がある。それには疑問を持たないが、その右横。壁と洗濯機の間の数センチの隙間に、大きめのキャンバスが置いてある。手に取り確認。


「真っ白だ」

「何々? キャンバス?」

「何も描かれてないんだ」

「でも、何でここに? 脱衣所とバスルームだよ、ここ」


 何故ここにあるのか疑問ではあるけど、特に不審な点はない。細工も無いようだし、ここに置いていただけだろうな。


「もう一つ、ドアあったよな」

「湿気でダメにならないのかな」

「何が?」

「キャンバスだよ。こんなとこに置いてたら、ダメになっちゃうよ」

「何か理由があって置いてるんだろ。このままにして……。うわっ!」


 只持っていただけのキャンバスに、みるみる内に肖像画の様な絵が浮かんできた。

 艶やかな白くて長い髪、大人しそうで柔らかな表情の、女の子。


「肖像画だ」

「可愛い女の子だね」


 肖像画にサインはない。裏側も確認すると、『愛しのノ』と書かれていた。ノの続きは消したのか、それとも自然に掠れたのか、読めなくなっている。


「おっちゃんたちの、娘さんかな?」

「それに関しては、何とも言えない。誰が描いたのか知らないけど、飾れば良かったのにな」

「そうだね。次の部屋に行こう」

「次は、サーラが寝てたゲストルームか」


 女の子が描かれたキャンバスを、洗濯機に立て掛けて置いて、バスルームを出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ