#015
ロッキングチェアに座り、窓の外の様子を見ながら、バーンズさんを待っていた。
「お待たせ。バーンズ特製、ホットシナモンミルク」
「ありがとうございます。いただきます」
「外、まだ荒れてんな」
「そうですね。嵐はすぐに通り過ぎると、思っていましたけど」
「嵐の夜ってのは、長いもんなんだよ」
「へぇ」
作ってもらったホットミルクを飲みながら、ただ静かに、二人で外の様子を見ている。
「美味しい……」
「そうだろ?」
「はい。それに、すごく落ち着く」
「リラックス効果ってやつかもな」
「ですね」
外の様子は変わらない。むしろ、更に酷くなってきた。
「こりゃ、明日も大荒れだな」
「ホルタンクたちは、大丈夫なんですか?」
「こんなの、日常茶飯事だ。アイツらも、慣れっこだよ」
「そうですか。そうだ、聞こうと思っていたんですけど」
「どうした?」
「奥さんが倒れる前、《カゲロウ》が亡くなった愛する人の魂を、スフィアの大地に幽閉したと言っていたのですが」
バーンズさんは何も言わず、ただ嵐の外を見ているだけ。
「バーンズさん?」
「《カゲロウ様》のことは、あまり口にしてはいけないんだ。この世界の創造神であり、伝説上のお方だ」
「本を読んでみたのですが、何も書かれていませんでした。真っ白なページだけで。おっちゃんも奥さんも、一体」
「さぁーな。俺には全く分からない。そろそろ、俺は寝る」
「そうですか。おやすみなさい」
「おう。おやすみ」
バーンズさんが自室へと行ってしまったため、俺は暖炉の火を見つめながら、ロッキングチェアで揺れる。
《カゲロウ》の正体を掴めれば良いけど。
大体このゲームは、フルダイブ型のゲームなんだろうか。
ログアウト出来ないのは、チュートリアル中だから? そういや、セーブすら出来ていない。
このままだと、無断欠勤扱いになるよな。でも、退勤したわけではないから、まだ勤務中?
元の世界に戻るためにも、早く次に進まなければ。
「そろそろ、ローブは乾いたかな」
ロッキングチェアマグカップを手近なテーブルに置いて、ローブの確認。
「うん。大体乾いたな。でも、もう少しか」
夜はまだまだ長い。再びロッキングチェアに座って、ホットシナモンミルクを飲みきる。
「ほっとする……」
風雨の音が心地良い。ガタガタ鳴っている窓の音は少しうるさいけれど、それも徐々に心地良く思えてくる。
暖炉の薪の燃えていく音。何ていうんだっけ。なんかリラックス効果があるんだよな。
微睡みが俺を包み込んで、抗うことなくこの身を任せた。




