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ネヴァースフィア  作者: 天城なぎさ
ハイド原野にて/消えた一家を探せ
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14/18

#014

「おっちゃん! バーンズさん!」


 嵐によって吹き荒ぶ雨風。視界不良だし強風の向かい風だから、前進したくても、中々進まない。


「おっちゃん! バーンズさん!」


 ランプの明かりが見える方に声を掛けても、雨風のせいで、届いていない様子。


「どうしたものか……」


 早くしないと、奥さんの容態だって分からない。何が起きたのか、俺にはさっぱりだ。


「おっちゃん! バーンズさん!」


 こうなったら、最終手段。柵を越えて、背高草を掻き分けて、ランプの明かりの方へ。

 揺れる背高草。雨に濡れたおかげで、貼り付いてくる。


「よし。牛たちは大丈夫そうだな。バリアも大丈夫そうだ」

「そうだな。早いとこ、戻ろうぜ。親父」


 話し声が聞こえてきた。近くにいる。

 ここなら、大声で叫べば聞こえるはずだ。


「おっちゃん! バーンズさん!」

「うおっと、KOH(コウ)!? どうした!?」

「奥さんが、急に頭を抱えて、倒れたんです! サーラが付き添っています!」

「なんだと!? バーンズ、急いで戻るぞ!」

「はいよ!」


 親子は慣れた足取りで、背高草の中を走っていく。置いていかれないように、必死に走るけれど、流石は酪農家だ。慣れている。


 雨風は更に強くなり、横殴りの風に変わっていった。


「大丈夫か!?」


 おっちゃんとバーンズさんは家の中に入るなり、奥さんの元へ。

 俺は濡れて重たくなったローブを脱ぎ、バッグの中へ収納した。


「ソファーへ寝かせたら、少し呼吸が落ち着きました」

「そうか。ありがとうな、ネエちゃん。ニイちゃんも、知らせてくれて」

「いえいえ。お邪魔している身です。奥さん、持病か何か患われているんですか?」


 躊躇いがちに口を開いたのは、バーンズさん。


「お袋は時々、強い頭痛に襲われて、意識を失うんだ」

「医者へは? 通院されているんですよね?」

「このスフィアの大地には、医者はいない」

「それって、奥さんは治らないってことですか?」

「そうだな。だから、俺たちが見守るしかないんだ」


 外は雨風が強く、窓や屋根に叩きつけるように音を立てている。

 奥さんは、落ち着いたのかそのまま眠り、おっちゃんたちは奥さんを寝室へと連れていき、俺たちも用意された部屋で、眠ることとなった。


 が、全く眠くならない俺は、手持ち無沙汰で、仕方ないからリビングへ向かう。

 あれ? 皆寝るからって、リビングの明かりは消したはず。なのに、点いている?


「ん? KOH(コウ)か」

「バーンズさん。起きてたんですか?」

「まぁな。雨風がうるさくて、寝れねぇってな。そっちは?」

「俺は、ただ眠たくなくて。あ、暖炉使っても良いですか? ローブを乾かしたくて」

「あぁ。使ってくれ。今、火を」


 バーンズさんは暖炉に薪をくべて、マッチ棒を暖炉の壁面に擦って、火を起こした。


「スゲェ。マッチって、箱の側面に付いてる摩擦面でしか、着火出来ないと思っていました」

「箱の側面? そうなのか? スフィアの大地では、これが普通だからな。摩擦さえ出来れば、着火出来るぞ」


 マッチとか久しぶりに見た。普段マッチもライターも使わない生活をしてた影響だな。


「ありがとうございます。バーンズさん」

「気にするな。客人だからな」


 特に何か話すわけでもなく、ただ時間だけが流れていく。


「ホットシナモンミルク飲むか?」

「もしかして、飼われているホルタンクの?」

「あぁ。(うち)のは、シュガーを入れなくても、ほんのり甘いんだ」

「へぇ。飲んでみたいです」

「ちょっと待っててな。すぐ出来るから」

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