#013
「お待たせしました!」
「わりぃ。遅くなった」
家の中に入ると、サーラとご夫妻が、一足先に食べていた。
「KOH。このポトフ、凄く美味しいよ!」
「バーンズを呼んで来てくださって、ありがとうございます。KOHさんも、冷めないうちにどうぞ」
「はい。いただきます」
ポトフにサラダに、ステーキも。美味しそうなパンもある。
「うーん! 美味しいです。奥さん、料理上手ですね」
「あらまあ。ありがとうございます。ポトフ、まだまだありますから、たくさん食べてください」
元いた世界だったら、カップ麺かコンビニ弁当で済ませてた。
こんな食事をしたのは、いつが最後だっただろう。
「あの。バーンズさんから聞きました。《カゲロウ》に関する書籍が、あるとか」
「その本なら、書棚にある。後で読んでみると良い」
***
食事を終え、就寝まで時間がある。
ソファーに座っていると、おっちゃんが例の書籍を持ってきてくれた。
おっちゃんが見せてくれた書籍は、文庫本のような大きさで、ハードカバーの書籍。
「《カゲロウ様》に関する事は書かれている。ただし、それが事実だという証拠は、何処にもない」
「それでも良いです。この世界で何があったのか、俺はそれを知りたいだけなので」
いつの間にか、外は嵐がやって来ていて、おっちゃんとバーンズさんは、様子を見に行ってしまった。
「ホルタンクの様子を見てくる」
「俺も行こう。嵐が来てるんだ。一人で行くのは、危険過ぎる。KOH、すまねぇな」
「お構い無く。何かあったら、呼んでください」
家の中にいても聞こえてくる、どしゃ降りの大雨と強風の音。窓ガラスも音を立てて、もはや災害の初期段階。
「凄い嵐ですね。奥さん」
「そうね。すぐに治まると良いけど」
サーラは奥さんと一緒に、ダイニングテーブルで、何やらハンドメイド中。アクセサリーのような物を作っていて、楽しそうにしている。
読み進めていると、奥さんが俺に話し掛けてきた。
「KOHさんは、《カゲロウ様》の何を、知りたいのですか?」
「《カゲロウ》とは何者なのか。この世界を作った理由と、冒険者をこの世界に閉じ込めた理由。ですかね」
「私が知っている事を、一つだけ。良いですか?」
「どんな情報でも、嬉しいです」
奥さんから聞けるなんて、誰が想像できただろう。
《カゲロウ》に関する事なら、何だって構わない。
「《カゲロウ様》は、愛する人を亡くし、その人の魂を、スフィアの大地に幽閉したと、云われています」
「魂を幽閉した? その魂は、どうなっているんですか?」
「鳥籠の中に、入っているそうです。詳しい事は、その。お伝えしたいのですが……。うぅ」
頭を抱え、転げ落ちるように、倒れてしまった奥さん。
「奥さん!? どう、しよう。奥さん!」
「落ち着け、サーラ。おっちゃんたちを連れて来る。それまで、側にいてやってくれ」
「分かった! 気を付けてね」




