#012
「《カゲロウ》とは、どんな人物なんですか?」
「分からない。我々が持つ知識は、全て《カゲロウ様》が与えてくださった」
「でも、俺たちと出会ってすぐ。おっちゃんは、《カゲロウ》に会ったと言っていた」
「俺の意思とは違う、言葉が出た」
プログラミングされていたか。それなら、辻褄が合わないのは、納得できる。
《カゲロウ》とは一体、何者なんだ。
「夕食の用意が出来ましたよ。さぁ、冒険者さんも、こちらへ」
「ありがとうございます。奥さん」
ダイニングテーブルに招かれ、美味しそうな香りに、ホッとする。
「バーンズは、まだ外かしら?」
「そうだろうな。まぁ、すぐ来るさ」
「俺、呼んで来ますよ。せっかくのポトフ、冷めちゃいますし」
「そんな。お客さんに、頼めませんよ」
「外は、もう暗い。何かあってからでは、後の祭りです」
ローブを着て、外へ。
明かりは、ランプを借りて、バーンズさんを探す。
「バーンズさん。何処ですかー? バーンズさーん。何処ですかー?」
何度も声を掛けてみるけれど、返事は一向に帰って来ない。
ガサガサッ。
何かが、背高草を分けて、進んでいる?
「バーンズさん? バーンズさんですか?」
音のした方にランプを向けた。しかし、そこにバーンズさんは、いない。
『グルルル』
獣の声だ。まさか、襲われたのか? それならば、早く見つけて、怪我の処置を、しなくてはいけない。
「バーンズさん、返事してください!」
「KOH。俺なら、此処にいる。後ろだ」
「へ?」
振り向くと、腕組みをしているバーンズさんが、立っていた。
「小屋にいたんだけど、気づかなかったか?」
「それなら、そう言ってくださいよ。今、獣の唸り声が聞こえて」
「ガーグウルフか。また来やがったのか……」
「家畜、大丈夫ですか?」
「ガーグウルフ対策の、バリアを張ってある。だから平気。早く家の中に入るぞ」
この世界は、害獣対策にバリアを使っているのか。
俺たちのいた世界だったら、電気柵とか、有刺鉄線で囲うのに。
「バリアなんて、凄い世界ですね」
「これも全て、《カゲロウ様》のおかげなんだ」
それは、聞き捨てならないな。
家に戻りながら、《カゲロウ》のことを聞き出そう。
「会ったこと、あるんですか?」
「ない。《カゲロウ様》は、伝説上の人だからな」
「その伝説って、何なんです? 何か言い伝えみたいな?」
「うーん。難しいな。ただ、スフィア人は、《カゲロウ様》によって生み出された。《カゲロウ様》に関する書籍は、書棚にあったはず」
なんだと!? そんなこと、おっちゃんは何も言わなかったぞ!?
「それはっ! それは、読んでも良いですか!?」
「あ、お、うん。大丈夫。だと思う」
「ありがとうございます! それなら、急ぎましょう!」
「おい、落ち着け。おい!」
これで、《カゲロウ》に一歩近づける!




