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ネヴァースフィア  作者: 天城なぎさ
ハイド原野にて/消えた一家を探せ
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11/18

#011

 そんなわけで。俺たちは、おっちゃんこと、リチャードの家に、お世話になることになった。


「すみません。馬車に乗せて頂いて。何と礼をしたら良いのか」

「礼なんて良いさ。もうすぐ着くぞ」


 そこは、高原とでも言おうか。見晴らしの良い、草原と森の融合した場所。


「ほい。到着」

「ありがとうございました」

「のどかな所だね~」

「ここは、ハイド原野の外れなんだ」


 赤い屋根の二階建ての家。童謡の中の家なのかってくらい、分かりやすい家だ。家の隣には、煙突の付いた小屋。

 草原の方を見てみると、乳牛モンスターが10頭程、柵で囲まれたエリアの中で、放牧されている。


「あれ? 親父、客人か?」

「おぉ、丁度良いところに。母さんは?」

「お得意のポトフを作りすぎて、どうするか悩んでる」

「それなら、大丈夫だろ。二人分」

「で、その人たちは? 見かけない顔だな」


 おっちゃんの息子か? 麦わら帽子にオーバーオール姿の無愛想な男。

 無愛想というよりは、俺たちに対して、警戒している様子。


「この2人は、冒険者でな。魔法使い(ウィザード)KOH(コウ)と、回復術師(ヒーラー)のサーラ。とりあえず、一晩泊める」

「はじめまして。KOH(コウ)です。お世話になります」

「サーラです! お世話になります!」

「ちなみに、サーラのネエちゃんは、セイラスチーズを知っている!」


 おいおい。おっちゃん。まだ言うか。


「で、こっちが、俺の息子。バーンズだ」

「ども」

「可愛くねぇな。そんなだから、嫁が来ねぇんだ」

「うるせー。彼女くらいはいる。親父に、あれこれ云われる筋合いはねぇ」


 アハハハハ。俺たちはどうしたら良い。


「お袋に言わなきゃだろ? 突然来たなら、何の用意もしてない」

「そうだな。KOH(コウ)、サーラ。こっちだ」


 おっちゃんに連れられ、赤い屋根の家の中へ。

 淑女そうな奥さんが、皿に盛られた料理を、キッチンから運んでいる。


「あら。おかえりなさい。お客さん?」

「冒険者の、KOH(コウ)とサーラ。一晩泊めたい」

「あなたが、冒険者さんに興味を持つなんて、珍しいわ」

「セイラスチーズを知っていたんだ。このチーズを知っている奴に、悪い奴はいない」

「そうでしたか。冒険者さん。狭い我が家ですが、どうぞ。ポトフ、お好きかしら?」


 淑女だ。物腰柔らかな、淑女。今までの人生で、こんな人に会ったことがない。


「ポトフ、大好きです! 私、お手伝いしますよ!」

「ありがとう。でも、お疲れでしょう?」

「大丈夫です! 泊めて頂ける、お礼です!」

「そう? それなら、サラダを運んでくださる?」

「もちろんです!」


 サーラは、奥さんのお手伝いをするために、キッチンへ。

 俺は……。


「ニイちゃん。少し、いいか?」

「何かありました?」


 おっちゃんに促され、ダイニングと繋がるリビングの、一人掛けのソファーに座った俺。

 何か、されるんじゃないかと、不安になる。


「《カゲロウ様》に会いたいと、言っていたな」

「ええ。会える方法が、あるんですか?」

「いや。簡単には会えない。俺が、《カゲロウ様》に会ったのは。会ったというより、元々知っていたんだ。セイラスチーズを。酪農のことも、チーズ作りの方法も」

「つまり、先天的な記憶が、あるんですね?」

「ああ。記憶に操られているような、そんな感じなんだ」


 この《ネヴァースフィア》は、MMORPG。つまり、ゲームの世界だ。


 冒険者と呼ばれる俺たちは、プレイヤー。

 スフィアの大地に暮らす、スフィア(びと)たちは、ノンプレイヤーキャラクターになる。


 そうなると、『NPC』の略で現される彼らは、ゲームの創造主による情報が、記憶となるに違いない。

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