覚醒
頬に何か、温かい感覚があった。
ぼんやり目を開けた後、直ぐにハッとして身体を起こす。
「……寝ちゃってた、のかな?」
途端に冷や汗が出る。
いつまた襲われてもおかしくない環境で眠るなんて、ありえないことだ。
「ニノさんは!?」
彼女を探して、起き上がる。
そこで私は、鬼の死体を目にした。
「……っ!?」
思わず悲鳴をあげて後退る。
「……あ、そっか、これ、私が」
少し時間が経って、思い出した。
その首の存在しない屍は、私が生み出したものだ。
──物音が聞こえた。
私は雷に打たれたような衝撃を受け、目を向ける。
人影があった。ちょうど、ニノさんが目を覚ましたところだった。
「ニノさん!」
名前を呼ぶと、彼女はぼんやりした様子で私を見た。
寝起きは弱いのかもしれない。そんな呑気なことを思いながら、彼女に近寄る。
ニノさんは、不思議そうに周囲を見ている。
その白い頬が少し光っていた。気になって光の元を探すと、どうやら天井に細かい穴があり、陽光が差し込んでいるらしいことが分かった。
(……朝になったのか)
そう思った直後の出来事だった。
「……いやっ」
最初、それが誰の声か分からなかった。
「いやぁ!!!」
確かな悲鳴。
それでもまだ、誰の声か分からなかった。
いいや、違う。これは現実逃避だ。
そんなわけない。間違いであって欲しい。そんな思いが、目を逸らさせている。
私は、ゆっくりと歩いた。
そして悲鳴をあげた女の子の前に立ち、その名を呼んだ。
「……ニノ、さん?」
彼女は膝を抱え、ガタガタと震えていた。
「……ご、ごめなさ……私、太陽の……下では、こう、なの」
彼女は顔を上げる。
その表情は、私の記憶にある彼女とは別人だった。
「……どこか、暗い場所は、ないかしら?」
彼女さえ目を覚ませば、全て解決する。
その淡い期待は──あっけなく、砕け散った。






