表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/25

変局 1

 シズさんは足を止めた後、スマホのような薄い板を使って、多分、どこかに連絡した。


 音が聞こえないから何を言っているのか分からないけれど、叫んでいることは分かる。


 その様子をぼんやり見ていると、連絡を終えた様子のシズさんが私を見た。


 それから私に向かって手を伸ばし、何か言った。瞬間、その手から不思議な光が現れ、私を包み込んだ。


「聞こえますか?」

「……はい。えっと、あの、何を?」

「回復魔法です。気になるでしょうが後にしてください。いくつか聞きたいことがあります」


 魔法!? と驚きながらも、シズさんの切羽詰まった様子を見て頷いた。


「あなた、どうして平気なのですか?」

「……平気? ああ、耳のことなら、痛かったですけど」

「その話ではありません。私が言いたいのは、要するに……」


 シズさんは少し怖い表情で私を見て言う。


「この状況に対して、恐怖を感じないのですか?」

「……そう、ですね」


 私自身も何度か疑問に思ったこと。

 それは、他人の目から見ても異常なことだったようだ。


「理由は分からないですけど……全然、平気です。逆に怖いくらい」

「……なるほど」


 シズさんは溜息を吐いて、


「あなた、今どんな称号を設定しているのですか?」

「称号ですか?」


 ──現在設定されている称号名は【透明な心】です。


「透明な心?」


 脳に直接語り掛けるような声。

 久々に聞こえた声を反射的に復唱すると、シズさんは少し緊張した様子で言う。


「やはり、ユニーク級……効果を教えて頂けますか?」


 ──称号【透明な心】は、精神負荷による影響を完全に無効化します。

 私がシステムの声をそのまま伝えると、シズさんは目を丸くした後、失笑した。


「あなたは、過去に拷問でも受けたのですか?」

「ええっと……」

「いえ、失礼しました。無理に答えなくて結構です。どうせなので聞きますが、その右眼はスキルですか?」

「……右眼、ですか?」


 私がきょとんとしていると、彼女は手鏡を取り出して私に見せた。


「……なに、これ」


 鏡に映る私の右眼は、とても不気味な模様をしていた。

 瞳の色は紫で、中央にある瞳孔は点のように小さい。そして瞳孔に向かって渦を描くような白い線があった。


 ある予感がして、私は左目を塞ぐ。


「……見えてる」


 見えないことが当たり前だった。

 ずっと、普通になりたいと願っていた。


 この特殊な模様は、とても普通とは呼べない。それでも、ずっと空洞だった右眼を取り戻せたことは、私にとって大きな出来事のはずだ。


 だけど、何も感じない。

 あー、見えるなー、としか思えない。


(……称号のせい、なのかな?)


 ──称号を変更しますか?


(……うん、そうだね。えっとなんだっけ? ワールドイズマイン? アレにしよ)


 ──成功。称号を【独り言の女王ワールド・イズ・マイン】に変更しました。


 どうやら称号が変わったらしい。本当にゲームみたいだ。

 これでどんな変化があるのか分からないけれど……やっぱり凄いネーミングだ。


 多分、口に出して言うのは無理。恥ずかしい。

 でも初めて友達から貰った名前だ。あのやりとりで友達になったというのは実感が持てないけれど、それでも少しだけ、嬉しいと思える。


(……あれ、今、嬉しいって)


 その違和感に気が付いた瞬間、震えが始まった。

 続けて一日振りの──あるいは数年振りの感情が芽生え、暴れ始めた。


(……なに、これ)


 ふんわりとした理解はできる。幸せな気持ちと不安な気持ち。それを何倍にも大きくしたような感情が、身が震わせている。


 怖いと思った。

 原因は、先ほど称号を変更したこと以外に考えられない。


 あんなの心の中で思っただけだ。

 それがこんな、スイッチを切り替えたみたいに──怖い。


「あなた、どうして急に……まさか称号を変えたの? 馬鹿、今すぐ戻して──」


 シズさんは途中で言葉を切ると、目を見開いた。


「とにかく守れよクソシステム! 結界Ⅰ(けっかい・いち)!」


 彼女が謎の言葉を叫び、周囲から風の音が消えた。

 私が突然の出来事に困惑していると、今度はギィィィというガラスを引き裂くような音が鳴り響いて、私は思わず耳を塞いだ。


「ああクソっ! ふざけんなっ、どっから現れやがった!?」


 最初、誰の言葉か分からなかった。

 消去法でシズさんだと理解したけれど、その驚きは直ぐに上書きされた。


 頭上の星明りが消えている。

 その代わり、バチバチと白い光が輝いている。


 その光に照らされて見え隠れするのは、赤黒い世界。

 やがて歯のようなモノが見えた直後、再び世界が明るくなった。


「……」


 言葉が出なかった。

 私の目に映ったのは、巨大な黒い狼。


 それも、一頭だけではない。

 二頭の狼が隣同士に並んで立ち、私とシズさんを睨み付けていた。

ーーー 現在公開可能な情報 (シズ) ---


名称【?】

年齢【?】

種族【人間】

性別【女性】

称号1【治癒者・上級】

称号2【現実主義者・上級】

等級【2】

成長【41/99】

生命【198K】

精神【286】

物理【330】

物理耐性【389】

特殊【476】

特殊耐性【424】

スキル【なし】

魔法【回復Ⅰ】【結界Ⅰ】


ーーー 魔法について ---

・その効果をイメージできる【詠唱】をした後【魔法名】を口にすることで発動することが多い。

・魔法名は術者が自由に設定できる。

・効果は【特殊】に依存することが多い。

・発動する度に【精神】を消耗することが多い。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

▼この作者の別作品▼

新着更新順

 人気順 



▼代表作▼

42fae60ej8kg3k8odcs87egd32wd_7r8_m6_xc_4mlt.jpg.580.jpg c5kgxawi1tl3ry8lv4va0vs4c8b_2n4_v9_1ae_1lsfl.png.580.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ