EP 11
現代ミリタリーと異世界素材の融合〜最強のコンバットアーマー爆誕〜
理不尽な借金を完済し、Cランクへの特例昇級と金貨500枚という莫大な特別報酬を手に入れた英一たち。
翌朝の「マミユの工房」は、かつてないほどの活気と熱気に包まれていた。
「さあ、英一さん! この資金と素材を元手に、もっともっと凄いものを作りますわよ!」
マミユは作業台の上に、先日討伐したレッドオーガの上質な革と、大量の鉄鉱石を広げて目を輝かせた。
「ああ。次は、俺の着ているこの防具の構造を、異世界の素材で完全再現する」
英一は、自分が身につけている漆黒のタクティカルベスト――現代の特殊部隊が使用する『防弾チョッキ(コンバットアーマー)』をコンコンと叩いた。
「この防具は、セラミックとスチール、それにポリエチレンっていう強靭な繊維を組み合わせて作られてる」
英一は黒板に図解を描きながら、冶金学と現代兵器の装甲理論を解説し始めた。
「衝撃を『砕けて散らす』硬い層と、それを『受け止めて歪む』柔らかい層の組み合わせだ。これなら、魔法の直撃だろうとオーガの打撃だろうと、威力を完全に無効化できる」
その未知の工業理論を聞いた瞬間、マミユの青い瞳が、ドワーフ族特有の天才的な職人の輝きを放った。彼女の脳内で、英一の現代知識が異世界の素材へと猛烈な勢いで変換されていく。
「なるほどですわ……! それなら、硬い『せらみっく』の部分は、ミスリルを混ぜて特殊な焼き入れをしたドワーフ鋼の積層プレートで代用できますわ! 薄い鋼を何枚も重ねることで、衝撃を分散させるんですの!」
「そして、衝撃を吸収する『ぽーりえちれん』の繊維部分は……討伐したレッドオーガのなめし革を、秘伝の薬液で何層も貼り合わせれば、同じ効果が出せますわ!」
英一とマミユの思考が、完璧に噛み合った。
「よし。俺が炉の温度と鋼の炭素定着を完璧にコントロールする。前衛の視点からの調整は、ラウス、お前に任せるぞ」
「おう! 実戦で動きやすい関節の作りなら、俺の長年の経験に任せとけ!」
三人の共同作業が始まった。
英一が科学的な温度管理で極限の鋼材を生み出し、マミユがドワーフの神業で薄く強靭なプレートへと鍛え上げる。そして、ラウスが実戦を想定した可動域のフィードバックを与える。
かつては寂れていた工房に、燃え盛る炉の熱気と、リズミカルな鎚音が力強く響き渡る。
種族も、育った環境も、持っている技術もバラバラな三人が、互いを絶対的に信頼し、一つの目標に向かって力を合わせる。
そして数日後――。
工房の作業台の上に、革新的な防具が鎮座していた。
ドワーフ鋼の積層プレートは黒曜石のように鈍くも美しい輝きを放ち、深紅のレッドオーガの革がしなやかにそれを繋いでいる。要所にはマミユのセンスが光る精緻な彫刻が施され、それはもはや防具を超えた「芸術的な兵器」の風格を漂わせていた。
「完成ですわ……! マミユ印の、最新式コンバットアーマー!」
「よし、耐久テストをやってみよう」
英一は完成したばかりのアーマーを木製のダミー人形に着せると、ラウスに向かって顎をしゃくった。
「ラウス。お前の両手斧で、闘気を限界まで込めて全力で叩き斬ってみろ」
「えっ!? お、おいおい英一、いくら何でも俺の全力が出たら、せっかくの新作が木っ端微塵になっちまうぞ!?」
「いいからやれ。絶対に壊れない」
英一の揺るぎない自信に、ラウスは息を呑み、愛用の両手斧を上段に振りかぶった。
「壊れても知らねえぞ……うおおおおおっ!!」
轟音。
熊耳族の剛腕から放たれた必殺の斬撃が、アーマーの胸部に直撃した。
ガギィィィィンッ!!!
「ぐおおっ!?」
甲高い金属音と共に、ラウスの両手斧が大きく弾き返された。
ラウスは手のひらが裂けんばかりの反動に耐えきれず、斧を取り落として尻餅をついた。
「な、なんだこりゃあ……!?」
ラウスが驚愕の声を上げる。
ダミー人形が着ているコンバットアーマーは、表面のドワーフ鋼プレートにわずかな亀裂が入っただけで、内側のレッドオーガ革の層は完全に無傷だった。斬撃のエネルギーが完全に分散・吸収され、内部へのダメージは「ゼロ」に抑え込まれていたのだ。
「す、すげえ……俺の全力の一撃が、完全に殺されちまったぞ……!?」
「大成功ですわ! 英一さんの知識、本当に凄すぎます!」
マミユが歓喜の声を上げて英一の首に抱きつく。彼女の頭上に浮かぶ青いマーカーが、誇らしげに輝いていた。
「よし。これで世界最高の盾が完成したな。……これを売り込みに行くぞ」
「また『ミスリルの牙』のバントクさんのところに行きますの?」
マミユの問いに、英一は首を横に振った。
「いや。こんなオーバースペックな防具を普通の武器屋に卸しても、技術を安く盗まれるだけだ。もっとデカい市場を狙う」
英一の視線は、辺境の街スタラントを越え、遥か大陸の経済の中心を見据えていた。
「大陸五大企業……『ゴルド商会』に、直接専属契約を持ち込む」
「ゴ、ゴルド商会!? あの超巨大企業にですか!?」
「マジかよ……! あんな雲の上の連中を相手にするってのか!?」
驚愕するマミユとラウスを前に、英一は不敵に笑った。
現代の軍事理論と、異世界最高の技術。この「最強の切り札」があれば、異世界の経済すらも完全にコントロールできる。
「神眼のエイイチ」が仕掛ける、規格外のビジネス無双が今、幕を開けようとしていた。
読んでいただきありがとうございます。
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