安曇、ショックを受ける。
「それにしても、テンプレに騒がしいとこだったなぁ、ギルドの酒場。」
ギルドを出た俺達は受付嬢に渡された依頼書に目を通しながらボヤく。
「だねぇー、下品だよあそこは。」
あそこをあまり快く思っていないのか碧は顔を顰めながら言った。
「ま、気持ちを切り替えて今は依頼でしょ。」
リイアはあまり気にしていないのかな?
……いや、訂正。結構嫌だったみたいだ。
背中から瘴気みたいなのが出てきそうな感じになってる。
顔に出てないだけか。
「それもそうだな。えっと……今気づいたんだがリイア、お前なんか色気みたいなの出てないか?」
そう、今までは気が動転していて気が付かなかったが、リイアには学校ではなかった色気があるのだ。
設定が褐色肌のアマゾネスだからだろうか、それとも衣装の「踊り子」によるものなのか。
「え、えぇぇ///……ってこれ、スキルだよ。」
リイアは一瞬だけ頬を染めていたが、直ぐに我に返ったようで冷静に言った。
《スキル》
スキルとは《LUO》における魔法とはまた違った技のようなものだ。
スキルには熟練LvというものがありLvが高いほどその効果は高くなる。
また、熟練Lvを上げる際には本人のLvは上がらないためあまりあげる人は少なかった。
たとえばスキル【料理】なら熟練Lvが高いほどそのプレイヤーの作る料理は美味しくなるといった感じだ。
「スキル……そうだ、スキルがあったんだ!」
俺はそれがあることを今まで忘れていた。
スキルを忘れるなんて俺はどうかしていたかもしれない、《LUO》ゲームの中で一番俺が全力になったスキルを。
ちなみに安曇は《LUO》プレイヤーの中でも珍しいスキル厨と呼ばれる熟練Lv上げに情熱をあげるプレイヤーの一人だった。
そのためLvが碧達よりかなり低かったのだ。
スキルは冒険者カードの裏側に記述されているが、任意で隠蔽する事が可能である。
「スキルの確認は……そうだ、冒険者カードの裏って事だったな。えーっと、『隠蔽解除』っと、どれどれ……」
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スキル
【暗殺】Lv1/1
【秘宝探索者】Lv1/1
【投擲】Lv2/7
【隠密】Lv2/5
【気配探知】Lv3/5
【料理】Lv1/3
【野営】Lv1/3
【道具作成】Lv1/3
【■■■】Lv■/■
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「…………………………」
「あは、あははは、あはははは…………どんまい」
「…………ま、まぁ、また頑張ればいいですよ、ね?」
二人が俺を慰めてくれているが俺は石像と化していた。
そんな俺を通行人も奇異の目で見てくるが俺にそんなものは気にならない。というか気にできない。
いや、薄々分かってたさ。Lvも結構下がってたしスキルも下がっているんだろうなぁとは!
でも、でもさ……少し、少しだけ期待したんだよ、情熱を注いだスキルならもしかしたらって!
でも、現実って……辛いんだなぁって、うぅ……(泣)
◆
二十数分後
「はぁぁぁーーーー……」
「まぁ、次頑張ろ、ね。そうしよ。」
「ま、まぁそうだな次頑張ろう。あははは」
どうしてだろう、俺の笑い声が空虚に聞こえるぞ?
未だに立ち直れていない安曇ではあったが、とりあえず切り替えようとしていた。
しかし、その哀愁漂う姿は周りの人をいくらか心配させた。
「お兄さん、これ、あげる。元気出して?」
見かねた近くの子供が屋台の串焼きを俺にくれた。
これでいくらか立ち直れるかもしれない。
「あぁ、ありがとう。少しだけ元気が出たよ。」
そう言って笑いかけると子供は安心したようで親の所へ戻って行った。
「じゃあ、行こうか。」
「どこだっけ?忘れたんだが。」
「えっと、《フォズムの沼地》ってとこだね。」
《フォズムの沼地》
フォズムの沼地とはフォズムD級危険区域(Dランク以上のパーティでないと入れない区域)と呼ばれる場所の中に存在する沼地だ。
そこの土は軽い毒性を含む薄紫の土であり、毒を使うモンスターが多く棲息している。
ビゲインの西門から出て真っ直ぐ行くと着く。
「それじゃぁ、『システム』で『マップ』っと、おおっ!」
俺はあることに気づいて声をあげた。
「ん、どしたの?」
「これ見ろよ。《死者の洞窟》の手前だよ、ここ。」
《死者の洞窟》
《LUO》に存在するC〜S級の地下迷宮。安曇のお気に入りのダンジョンで上層から下層に行くにつれ、難易度が上がる。
全七階層のダンジョン。
毒性のモンスター、屍が多いダンジョン。
そう言って俺は碧達にマップを見せる。
《フォズムの沼地》と書いてある先に《死者の洞窟》と書いてある。
「えぇー、《死者の洞窟》ぅ?」
碧はあからさまに顔を顰める。
まぁ、それもそうか。碧はこのダンジョンに限らず、屍系苦手だもんなぁ。
だがしかし俺はそんなことで意見は曲げない!
「それでも、行くぞ。欲しい素材あるし。」
「私は別にいいよぉ?一応あそこにも武器の素材あるから。」
リイアはニヤニヤしながら言う。
これはあれだ、絶対なんか考えてる。
「えぇー…………はぁ、仕方ない、現在傷心中の安曇君に免じて行ってあげよう。」
ま、そういう事で行きますか。
ス、スキル…………うぅ




