007―1 7回目の憑依 ~孔伷さん、ついに中華全土を統一する?~
―― 184年1月 春 ――
『蒼天已に死す!』
時は内乱のさなか。凶悪な漢帝国の支配に反乱軍の秘密基地から住民反乱を仕掛け、漢帝国に対し初めて勝利を収めた。さらにその戦闘の合間に、反乱軍のスパイは帝国軍の究極兵器の設計図を盗み出すことに成功。それは“死星”と呼ばれ大陸全土をも粉々にするパワーを持つ移動要塞基地だった。
凶悪な帝国軍に追われながら、張角は盗み出した設計図――太平要術の書――を手に故郷へと急いだ。住民を救い天下に自由を取り戻すために……。
――西暦184年、中華全土を天下泰平へと導くため各地で群雄たちが声を上げた……。
あげれるかぁッ!! なんだ死星って! 3年前はこんなのテキストじゃなかったはず。
『フォースの力を信じるのじゃ』
『我が師、南華老仙よ。この力をもって天下泰平を目指します』
ああ、これで張角は奇跡の力を起こせるように……ってなるかぁ!! 結局ダークサイド堕ちてるし。
えーと、ループのたびにバグッてハニってない? そもそもこれ、いつまでループするんだろ……。
『――君主を選んでください』
ん? なんだ? いつもの勢力図を真上から見ているこの感覚。そして光っている場所が2つ。
1つは譙、勝手知ったる孔伷の所領。そしてもう1つは――
寿春……てことは劉繇? 何で劉繇が選べるようになってる?
君主を倒したって条件なら陶謙だってそうだし、董卓だって一度は倒した。だけど西涼も徐州も光っていない。
今までのループは当たり前のように孔伷オンリーだった。劉繇だけが他と違う理由……。
『――仕えてもいいが、果たしてわしを飼い慣らせるかな?』
あー、そうか厳白虎に襲撃されたせいで、すっかり忘れてたけど劉繇は一旦配下になってたな。
つまり君主を配下にすると、次のループから選択出来るようになると……? なるほど。
いや、なるほどじゃねぇわ! 違う違う、ループ前提をやめてくれ。
選べる君主が増やす方法じゃなくて、このループやめる方法が知りたいんだよ! それが無理ならせめて張角にかけられた術を解除してほしい。
むむむ……やっぱり善政敷いた中華統一が正解ルートか?
それなら劉繇の方が張英が初期配下にいるし、何よりすぐに成都に旅立てて有利だ。きっと孔伷よりはスタートダッシュがいいと思う。
『――君主を選んでください』
でもなぁ……ここで孔伷を止めるのは…………なんか悔しい。
登用してもダメ、計略かけてもダメ、内政もまともに出来ないし、名声が低いダメダメな奴……なんだけど、ここで劉繇を選ぶのは負けた気がする。
今回を最後の悪あがきってことで、孔伷とやってみようと思う。
『――君主を選んでください』
ちょ! はいはい分かりました! 孔伷さんと一緒に中華統一してくるから、もうループしないで?
『孔伷を選択しました』
――俺は……今度こそ間違えない! …なんでダサい感じが出るんだろ。
◇
「あらーん、孔伷様ァ、喬玄ちゃんが外交の使者として来ちゃったわよォ」
ちょっと待てい! 執務室の向こうで取り次いでる文官がおかしい。
「コンコンッ! アンッ! 入りまーす、入っちゃいまーす」
でかい……! 後ろの喬玄も大きい老人だけど、それをほとんど隠すレベルの巨漢、内股でよちよち歩きなのと、宦官服でかろうじて漢文なにがしってのは予想できるが……。
「そこのクリーチャー、わしが返事してから入室しろ……」
唇だけぷりぷりのクリーチャー、怖い。
使者の前だし精一杯の虚勢を張ってみた。
「ノーンッ! あたくしの名は漢文官ジー、んでもぉ、キャンディちゃんって呼んでねん」
お太り様特有のこもった声を無理やり裏返らせる話し方。……宦官らしい宦官、こいつみたいな嗜好は日本の戦国時代でもある! 大丈夫、落ち着け俺。
『わし、無理……』
早くも孔伷さんが小窓のブラインドを下ろしやがった! お前の配下だろ!
「……ふう。わかった、では漢文――」
「キャンディちゃんよぉ?」
「…………漢――」
「キャンディよぉ?」
「か――」
「おキャンディよぉ?」
話が進まねぇ!
「――キャンディちゃん、使者殿を通してくれ……はあ」
「はーい、どうぞォ!」
肌艶の良いたぷたぷのもち肌コラーゲンボディを揺らしながら漢文が横にずれると、ドン引きした表情を慌てて直す喬玄がいた。
「……孔伷殿、立て込んでいるところすまんな。急ぎの用を思い出したので要件だけ――」
まあ、同盟の申し込みを喬玄自ら使者として来てるわけだが……すぐ帰ろうとするのやめて? お茶……いやお酒でもどう?
「おお! 君主自らお越しとは……そうだ、酒――」
「孔伷殿! 急いでおる、本当にすまん。さっき急用を思い出したのだ!」
いや分かりやすい嘘をつくな。喬玄が帰ったらこのクリーチャーの相手しないといけないからもう少し……。だめか。
内容は、喬玄が金1160で同盟しよう。
たしか、張角の壁にしようとしてんだよな。でも、俺はこのあと陶謙、劉繇を攻めていくしかないわけだし、別に無駄に敵を増やす必要はないか。前回は斬りかかった気がするけど忘れよう。
「貴殿直々の申し出、この孔伷断るわけにはいかぬ」
人の良さそうな顔した野心家の口元が弛む。
「さすが孔伷殿、寛大な返事をいただけると思っておりましたぞ……」
なんか含んでるけど、今回はこっちも利用させてもらおう。お金は重要だからな。
「ところで、ちょうど洛陽で手に入った酒が――」
孔伷が振り向いたときには、喬玄はすでに早馬の上だった。
「孔伷様ァ、ご命令を――」
甲高ッ! とりあえず今月最初の命令は決まっている。
「戦争の準備をしたいから、漢武を――」
「ははっ! 漢武官侍、ここに控えてござる――」
やっぱお前が漢武かい! いやね、でっかいクリーチャーの横にちらちらと視界に入ってはいたのよ。でもなるべく考えたくなかったんだ!
だってこの世界、三国志って言ってるのに、純和風な戦国時代の裃を着たちょんまげだぞ? この世界の神様! うちの文官、武官がバグってますよ! えと、スタイルは細見の筋肉質で容姿もちょんまげを除けばまともではある。
「えーと、とにかく徐州攻めの準備をしてくれ……」
「ははぁ! かしこまりつかまくりでござる」
もうお腹いっぱいです。
今回の孔伷のお付き、クリーチャーとエセ侍言葉野郎だってよ。
うーん、小窓の孔伷さんは両手のひらを上に向けてやれやれだぜって……今回も不安しかないッ! つーか代われ!
◇
―― 徐州の戦い ――
【1日目】
自軍兵力1部隊2万、対する陶謙軍の兵力は4部隊1万9000。
今回、喬玄とはまだ同盟を組んでいない陶謙軍。救援に行ってない王朗も守備に回っていた……前回より3000多い。
そして安定の雨からスタート。
【2日目】~【6日目】
激励で士気を上げ、王朗をワンパン。突っ込む糜竺を飲み込み、ひたすら陶謙をぶっ叩く。
『陶謙軍の君主を倒しました』
予定調和なり!
◇
「仕えてもいいが、三食にスウィーツつけてくれないと裏切るぞ!」
うーん、清々しいな俗物。3年前に厳白虎に斬首された王朗が再び配下になった。相変わらずの俗物さに好感が持て……ない、仕事しろよ!
「有り金すべて寄越すなら仕えてやろうチュー!」
「帰れ!」
「覚えてろチュー!」
もしかしたらチューは言ってないかも、とりあえず曹豹は在野に下る。
「……何を言っても無駄、それがしの気は変わらぬ」
陳珪先生、今回はダメでした。
「忠臣は二君に仕えぬ……」
糜竺君もダメか……。謎の儒教は忘れたのか?
「さて最後は陶謙殿だが……、わしに仕えてくれないか?」
ちなみに、あの変態コンビは交渉の邪魔になるからこの場にはいない。
「よもやこれまでか……、うむ決心がついた。孔伷殿についていこう」
おお! ついに陶謙がデレた!
―― リザルト ――
【ステータス】
名前:陶謙
所在:徐州
身分:一般
忠誠:89
年齢:53歳
武力:31
知力:60
政治:65
魅力:75
勇名:2470
経験:35100
陣形:魚鱗 生者 鈎行
特殊能力:火計 同討 収拾
陶謙恭祖、徐州の刺史。皇甫嵩と一緒に西羌討伐で功績を立てて出世街道を邁進する。しかし、上司張温のパワハラが納得できずに大喧嘩、その後涼州に左遷されるも、黄巾討伐時に長安にいた献帝に物資を支援して、徐州牧に就任した。演義では曹操の襲撃のご縁で出会った劉備に惚れ込み、死に際に徐州をプレゼントとした。陳珪先生と同じく頭から顎まで真っ白な毛根の持ち主だが、もふもふ度は高い53歳。
――ティリンッ
『184年 黄巾の乱 君主陶謙を配下にしました』
あ、これこれ……言われたらどこかで聞いた気がする。いろいろテンパってて理解はできてなかったけども!
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