006―1 6回目の憑依 ~つまるところ神なんていない~
――あーあ、太公望のくせに名声300もないのかよぉ、たくっ宝貝的なチートアイテムくらい装備しとけよ無能ッ!
――しっかも配下に水滸伝、春秋戦国&項劉記武将、日本の蝮の連合軍揃えてんのに、何で勝てない! 何で苦戦するんだ! たく、使えない新君主だな。
――は? 内政? しこしこ民忠あげるより、徴兵からの戦争しまくりで現役武将全部集めれば俺の勝ちだろ!
――武将の雇いすぎで予算オーバー? 大陵の半分は占拠してんのにか? あーもう、ないなら略奪で集めりゃいんじゃね? どうせ名声0でも3回はお前らに命令できるんだからな!
――くそ、『各地で住民反乱が起こっています』って全部俺の領地じゃねえか!
――徴兵なら金はほとんどかからんし、一気にたくさん集められるな。募兵のたびに金2000も兵士に払ってたら金がもたん、やれッ!
――平時で兵士が逃げる、城を占拠するたびに兵士が住民に減らされる、なんで保護してやってる帝のガキが、俺に追討令を出す? 洛陽、燃やすぞ!
――……おい、なんで忠誠99の張良が引き抜かれる? おい、白起、豹子頭! 特殊能力もない無能なお前らを育ててやった俺を置いていくのか!?
――予算オーバーで武将に払う金がない? 忠誠度が一気に半減…………。うがあああああああッ! なんでだ、なんでだあああああッ!
俺は夢を見ていた。
チート武将たちを配下に始めたのに全然上手く進まなくて、セーブ&ロードを繰り返しながら三国志5をやっている昔の夢を。
なんで今さらこんな夢を見たのかわからない、そもそも俺は三国志2しかやってないはず。
これは孔伷に同じ道を歩ませるなって警告なのか、それとも俺が今こんなことになっている原因であるのなら――
◇◇◇
―― 184年1月 春 ――
『譙の住民が噂をしているようです』
「この土地の土じゃ作物が育たなねえよ。あー生活が厳しなぁ、太守様にはもっと土地を開発してほしいよ」
当たり前のように始まる……。6回目か、これはいよいよ中華全土を統一するまで終わらない気がする。てか俺って三国志5の経験者なのか? 記憶にないだけで今までも世界を渡っていたとか? まあ考えたところで答えは分からないのだろうけど。
「――天の声がおっしゃった。譙の民が天への捧げ物を届け出ております」
なんて? 人が考えごとしてるときに……。
この世界線の漢文(仮称)が後ろによぼよぼのお爺さん連れて入ってきた……って、何その武器はッ!? 普通は誰かが預かるだろうよ、セキュリティどうなってんの。ちなみに今回の漢文はスタートから様子がおかしい。
「失礼しまっす。俺んとこ畑ぇ、耕してたらこんなん出てきたんだ! それでよ、こんな重てえ物騒なもんは太守様に届けとけぇってな? かかぁに言われたもんで持ってきたんだ。――あ、よいしょっとぉ!」
ゴガンッガンッ! うん、重たいのは分かるけど丁寧に置いてくれ? ほら、床が凹んでるぞ、弁償しろ爺め。
短い戟が2本、ひたすら重たそう。槍の穂先と斧を足したこの武器って実際に見ると凶悪だよなぁ。
「えと、これは……」
「――天の声によれば、これは双鉄戟に間違いございません。1本が80斤の重さ、それを2本も持てる武将はそうはおりませぬ。ああ、天よ!」
「「「天よ!」」」
ちょ! 漢文と同じような格好の奴らが両手を上に……散らかる! 情報が散らかるからじっとしてて!
まずは爺さんから! 爺さん、これ抱えてきてたやん。持てるだけでもすごくね? この爺さん武将に出来ない? で、これは誰の持ち物?
『てんい』
持ち手に墨で名前が書かれてた。小学生かッ!
てんい、これって典韋の落とし物ッ!? あとで本人から返せって言ってこないよな、怖い。
次に双鉄戟、ゲーム的には武力アップアイテムってとこか。孔伷さんの武力が32から39に上がったけど……ねえ? 普通なら絶対持てないよね? いやいや小窓の中で腕曲げても力こぶとか出てないから! つーか腕ほっそ!!
……これは誰か強い人に渡して護衛してもらうのが正解だな。とりあえずお礼を伝える。
「あ、ありがとうござる」
「へい、これからも譙をよろしくおねげぇしやす」
お願いされたとて! 孔伷は黄巾から全力で逃げるからね!
「うむ!」
とりあえず鷹揚に頷いておこう。どっちにも取れる感じで。
「では失礼しやす」
後でお爺さんに金をいくらか包んでおこう。
「天の声に耳を傾け、これからも天に感謝なさい」
「「「感謝を!」」」
…………。
「えっと漢文?」
「どうなさいました孔伷様?」
だいたい漢文まではデフォルトだから呼んでみたら正解だった。
「その、天の声とか漢文の後ろの天に祈ってる奴らはなんだ?」
さっきから恍惚な表情しながら埃まみれの天井を見てて怖いんだけど。なんかぶつぶつと呟いてるのもマイナス印象です。
「ああ、天の声とは何か!? なんとも哲学的な問いかけ……孔伷様にも天から届いているはずです。どうぞ心を開き、声を受け入れ――」
なんかよく分からないことを延々と聞かされた……。
「何教だよ……」
「「「「儒教です」」」」
「嘘つけッ!」
「嘘……? 我らの信じる天の声を嘘だと? 良いですか、孔伷様。天の声と儒教の教え、それらが共通するものはつまり――」
さらによく分からないことを延々と聞かされた。でも目がばっきばきに決まってて途中で言葉を遮ることさえ許されない雰囲気で、端的に言うと地獄だった。
ちなみに、主導権は俺のまま。孔伷さんは小窓を閉めきって中で怯えている。そんな今回のヤバい漢一族の名は――
「漢文官エフと申します」
名前も電波だった!
「え? 漢文、官……なに?」
「エフですが、何か?」
いやこれ以上は聞いてはいけない雰囲気。急に中国人もびっくりの謎発音、どんな漢字を当てているのか……あ、なんでもないです、はい。
◇
「孔伷様、ご命令を――」
命令、うーん。お爺さんには悪いけど陶謙討伐を今月かまして、危険区域からの離脱か、双鉄戟を手土産に張角さんと同盟交渉をするか……悩むな。
同盟交渉から空白地への移動が一月遅れる。でも同盟60ヶ月が上手くいけばその間に人材を集めたり、巡察して名声上げたりできる……。
名声は大事だからな、あの夢が俺に欠けてる記憶の一つだとしたら……。くそ、こういうときにゲームならセーブ&ロードで先がわかるのに!
「孔伷様、ご命令を――」
あ、はいはい。
「徐州を攻める」
「おお! 天の声もまさしくそうすべきだと! 孔伷様、ご武運を」
「「「ご武運を!」」」
それやめて!?
「孔伷、行っきまーす!」
その場から離れたくてアムロの物まねで出陣した。(効果は何もない)
◇
―― 徐州の戦い ――
【1日目】
自軍兵力1部隊2万、対する陶謙軍の兵力は3部隊1万6000。
天候は豪雨、徐州の戦場は前回と変わらず。救援の使者が喬玄の元に走ったのを見たから、今回も超短期決戦でやるしかない。
兵士たちの士気は訓練してないけど44。
対するあちらさんは、中央の城に陶謙1万、すぐ近くに糜竺3000、森を越えたところに陳珪3000。
俺の部隊は西から東へ箕形の陣で行軍を開始、雨音が兵士たちの音を隠してくれる。まあ、伏兵も奇襲もできないから単純に寒いだけだが……。あ、これ火計が使えないぞ。
陶謙軍に動きなし。
【2日目】
陶謙の陣形は今回も西向きの魚鱗、こちらも定石通り正面を外して側面をつく!
「……進めぇ!」
口数少なめの漢武の号令の元、2万の兵が陶謙に襲いかかる。ちなみに、漢武の名前の最後も謎文字だった。謎の電波を受け取っているのかは不明だ。
「……自軍損害1000、陶謙の損害は2600!」
お、武力が増えたせいか100人ぐらい損害を多く与えられたようだ。ありがとう名も無き白髪爺さん。
よし! って――
陶謙の突撃、糜竺の突撃、陳珪の側面攻撃のフルボッコ!
「があぁ! くそ、私の天運はここまでか……」
『孔伷が糜竺を捕らえました!』
「ふう、ヒヤッとしたけどまだ1万3300、負傷兵5600。よし、このまま勝つぞ!」
【3日目】
孔伷軍1万2200、陶謙3000、陳珪は今回も陶謙の背後に布陣。
漢武に持たせた双鉄戟の影響が地味に出てる。孔伷さんが持てるわけなかった!
【4日目】
孔伷軍9800、陶謙軍の側面を攻撃、陶謙は玉砕覚悟の突撃!!
「ぬうぅ! 孔伷ごときに遅れを取るとは!」
『孔伷が陶謙を捕らえました!』
よしッ!! 殺意が高い陶謙爺の突撃のおかげで前回よりも一日早い決着だ。
『陶謙軍の君主を倒しました』
ゲーム的な勝利通知で、大きく息を吐いた。
感想お待ちしとります




