005―4 5回目の憑依 ~だから一騎討ちするときは体力ゲージに(略)~
「あー! 腹いっぱい食えるって幸せだなぁ!」
「飲めッ! 食えッ! 騒げッ!」
「3番ッ! 漢武、裸踊りするであります! はっ、よっ!」
あー、みんな楽しそうだなぁ。ねえ、孔伷さんもそう思うよね? あ、気力39しかないし、戦争にも行けないくらい疲れてるんだっけ。
あんだけ格好つけて、『……行こうか、下邳に』って発したあとに出陣武将リストに孔伷さんがいないんだもの。
あー、恥ずかし! 酒宴で気力を回復させたところで、来月まで行動はできない。
気力コントロールまでは想定外だった。でもまあ、みんな楽しそうで良かった。
漢文は漢武の裸踊りに眉をしかめてるけどね。
「――見苦しいものを……。そういえば王朗殿には鉄板ネタがあるとか?」
おい、八つ当たりで王朗に絡むな。
「……漢文殿、それは無茶ぶりというものッ! それがしにはそこまで人生経験はございませぬ」
「またまたぁ、どう見ても50――「23歳です」――は?」
「「「「「は?」」」」」
一瞬にして静かになった、誰もが口を開けて王朗を見ている。数秒の間があいて、会場の空気がどっと揺れる。明らかにおっさんが23歳と真顔で話すシュールさに、魅力63の補正が入ったのか大爆笑。
「いやいや偏将軍、面白すぎ」
「ま、負けたであります!! 体を使った盛り上げ方をやった自分が恥ずかしいであります!!」
「――くくくっ、私の無茶ぶりにこのクオリティでのレスポンス。なかなかの切れ者のようです」
参謀(笑)って影で笑ってた漢文が、王朗を見直しただと!? ちなみに会場の笑いを一気にかっさらった本人は――
「それがし、本当のことを言ったのだが……」
一人、首を傾げていた。なお、ステータスにはきちんと23歳と表示されている。
さあ命令書がなくなった。そろそろヤバい時期だ。
ごめんなさい、あと1ヶ月待ってください。って誰かに願ったところで――
『張角軍が譙へ攻めこみました』
来ちゃうよね。譙は放棄だ、でもね? 徐州には来ないで……。
『孫堅軍が建業へ攻めこみました』
劉繇がさらに遠くへ追いやられ、俺は少し有利になったぞ! 来月、来月になれば…………。
『張角軍が徐州へ攻めこみました』
ま、じ、か……。殺意高すぎだ!
◇
―― 徐州の戦い ――
【1日目】
自軍兵力2部隊2万6485、対する張角軍の兵力は本軍5部隊6万0301、後続5部隊4万8000。マジで大人げない!
天候は大雨、徐州の戦場は、先月と同じく城数は街道沿いに3つ、森を越えたところに1つ。攻めやすい印象は攻められる側にまわるとキツい!
兵士たちの士気は王朗と一緒で44。
対するあちらさんは、西から張宝ら4部隊、厳政部隊8800が北西に出てきた。
とりあえず中央の城に孔伷が2万、東の森の先にある城に王朗の部隊6485を配置した。ちなみに陣形は二人とも錐行陣だ。
勝てるとは思わないが、最後まで諦めない!
「諦めてたまるかぁ! 皆の者、わしについて来い、敵をけちらしてやろうぞ!」
――わああああぁぁぁッ!!
よし、やっぱり孔伷さんの初手は激励だろ。火計が雨で使えないし……。王朗は特殊能力がないから城で待機。
じりじりと近づく張宝たち。
【2日目】
王朗を南の街道沿い、ぎりぎり張宝の部下たちに先制されない位置に進めて待機。なんとか兵糧庫を奪いたいところだけど、張宝が近くで目を光らせてるせいで近づけない。
「城はこの張梁がいただいたぞ! もう勝ったも同然だ!!」
張梁の城盗りコールに盛り上がる張角陣営。張宝が兵糧庫を守るらしい。
【3日目】
孔伷さんの2回目の激励で士気は84になった、王朗は一歩前に進めて待機。
「城を陥落させたぞ! おい、宝物庫はどこだ?」
厳政が北西の城を占拠、略奪する気満々じゃないか。
管亥が王朗に接近するも、手前でストップ。あっぶねぇ!
【4日目】
風向きは北――
「火計は成功だ! 恐れおののく敵兵の顔が目に浮かぶわい」
孔伷さんが見事な手際で、城の西側を放火した。周囲に広がれば時間は稼げる。
王朗は管亥が釣れたから後退、張梁は城を占領したところで動かず。張宝がこっちに来てくれれば、王朗に回り込ませて兵糧庫を獲るんだけどね。
「孔伷様、敵襲でありますッ! 高昇であります!!」
ぐあ! 高昇に兵1500を削られた。
厳政は箕形陣で正面に布陣、弓矢しか届かない距離にいる。張梁、管亥は王朗の近くで待機。じわりじわりと首が締まる……。
【5日目】
よし! 火が高昇の陣に燃え移った! 天気は曇りでセーフ、てるてる坊主をお城に飾ろう。
張角軍を引き付けたところで、孔伷は張宝の近くまで部隊を進める。錐行陣のおかげでかなり進める代償として……とても疲れる。
王朗は俺がいた中央の城に移動して、できるだけ更に敵を集めてほしい。
「死にたくなければ消化を急げッ! そこ、手を休めるなッ!!」
高昇は大慌てで消化活動。管亥はマイペースに東の城へ向かい、張梁は南側から王朗に接敵、厳政は俺の尻を追いかけてくる。思い通りに戦況は進まない、遠くからダンダンッと土を踏みしめる音が聴こえる。
――間に合わないか。
【6日目】
援軍が到着した、敵のだけどね。ヤバい、下手に張宝の近くに進めたせいで綺麗に囲まれた。俺、超ピンチ! くそっ! ここまでか……。
これ以上は何も出来ない、やけくそで張宝に一騎射ちでも仕掛けてみるか……と思ってしまったせいか、気づけば孔伷さんが主導権を握っていた。
「雑魚にかまってられるか! 張宝、わしと一騎討ちいたせ!」
待てぇ! いや少し思った、思ったけど逃げさせてくれよ。なに勝手してんだよ!
しかも、この戦場では誰よりも武力低いけど、セリフだけなら超強気だぜ!
「……ふぉのふぉおふ、ふふぇふぇふぁふぉ!」
「ちょっと何言ってるかわからない」
張宝がなんかのお札を口に咥えたまま喋ろうとするから、全然伝わらない。
一応、勝負は受けてくれるらしい。ぐるりを敵味方の兵に囲まれてお互いに矛を構える。手汗がひどい、矛が重たいから放り出したいです。張宝が一騎討ちすると決まると主導権が俺に戻る。――最後まで責任持とうよ。
「我こそは孔伷、一手お手合わせ願いたいッ!」
激励2回使ったせいで、体力がすでにレッドゾーン。ふかふかベッドで眠りたいレベルの疲れだ。
「……ふぃふぁふぁふぉふぅえ、ふぉれふぉ――」
「その札、いっぺん取れえ!」
ふぉふぇふぉふぇと全然伝わらないのに長セリフはダメだろ!
「行くぞ、キエエエェェェ!」
ガキンッと一合、よく打ち合えたと俺は自分を誉めてあげたい。……逃げるぞ!
「今日は調子が悪かったな……、運のいい奴だ。覚えてろーッ!」
すでにいい終える頃には自陣が見えるが、後ろからすごい勢いで張宝が迫る。
「ふぉの……卑怯者がぁッ!!」
あ、張宝がお札取って叫んだ。で、また咥えた。まさかのファッションお札!? そんなことしてるおかげで、なんとか逃げのびたぞ。
「いやぁ、危うく追いつかれるところだったな……」
「……孔伷様、何しに行ったでありますかッ!?」
……だって恐かったんや。本当に戦う気なんてなかった。孔伷さんが勝手したけど、それは孔伷の中のことで誰にも理解できないだろう。
漢武と兵たちの視線で凍えそうだ。えっと今って夏だよね。
「ふぁいふぇ……隊列を乱すなッ! 怒涛の攻撃を見せるのだ! かかれぇ!!」
張宝の連続攻撃、痛い。超攻撃型の陣形――【密集】。援軍の劉辟、龔都コンビがさらに俺の肉壁を削いでいく。
残存兵力2400、最期の攻撃は――
「ふぉ……しまった、火か! 密集の陣の弱点を突くとは……やるな! はふ」
お前、お札咥えないと死ぬ病にでもかかってんの? いちいち大変ですね!
とりあえず張宝と兵糧庫を燃やしてみた。密集してる分、燃やされると大ダメージを与えられるらしい。ふはは、燃えろ、もっと燃えろぉ!
「……ふぇんほ、ふぁがふぃふぉりふぃ――」
たぶん雨乞いしたんだと思う。お札を離せないところを見ると特殊能力の発動のときは咥える必要があるんだろう。
…………ああ、雨が。天候操作できるってかなりチートじゃん。
「孔伷ッ! 見つけたぞ、覚悟ッ!!」
背後から龔都ッ! くそ、またお前か……。
「ぐうぁ!」
ザンッと肉を斬る音、背中いっぱいに広がる熱……。熱は身体中を巡り、やがて頭から抜けていった…………。
『世に聞こえし孔伷、今ここに散らん……』
『孔伷の一族は、歴史からその姿を消した……』
感想お待ちしとります!




