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星78 脱出



 ヨルダンを倒した後、遺跡の内部に振動が伝わって来て、動いているような感じが伝わってきた。


 僅かな浮遊感。

 もしや、この建物、地下に潜っている?


 モグラじゃあるまいし、と思ったが。

 否定するには濃すぎる二週間だった。


ステラ「まずいわね。早く出口へ向かわないと。外に出れなくなるかも」


 ステラ達は急いでその場から後にしようとするが、だが遺跡の内部の構造ががらりと変わっていた。


 立体迷路みたいになっていて、出るのに凄く時間がかかりそうだし、下手したら迷ってしまいそうだった。


 ヨルダンはやられてもただでは起きない性格だたらしい。

 一応気絶させて運んではいるが、ちょっと放り出したくなった。


ステラ「性格悪過ぎよ、貴方」


 時間がないと言うのに。


 だが、こういう時こそ当てにする力があるではないか。


ステラ「エルルカ、お願い。私達を助けて」

エルルカ「けど、私の力なんていつもは予言未満、ただの占い程度。こんな大規模な迷宮の出口なんて分かりっこない」

ステラ「そうかもしれない。けど、今頼れるのは貴方しかいないの」

エルルカ「無理、そんなの。私なんかに……」


 戸惑いの声を上げるエルルカに次に声をかけたのはシェリカだった。


シェリカ「エルルカ、皆の言ってる事なんて所詮はうわべだけの言葉なのよ。今まで聞いてきた奴らの言葉に惑わされないで、貴方の力は何でもなくなんかないわ」

エルルカ「姉さん……」


 けれど、それだけでは足りない。


 ずっと今まで悩んできたエルルカの心を動かすには、足りないのだ。


 彼女には自分のやる事に対した意味も利からもない、という価値観が染みついてしまっている。


ステラ「私の言葉も、シェリカの言葉も貴方の心には届かないのね。悔しいけど、私達はまだまだ、ただ十数年生きてきただけの子供なんだわ」


 良くも悪くも自分達はまだ子供なのだ。


 だから大人の言葉を借りなくてはいけない。


ステラ「だから、貴方と同じだった私を救ってくれた先生の言葉を聞いてほしいの」

エルルカ「私と同じ?」

ステラ「私もエルルカと同じで自分に価値がないって思ってたの。ステラード・グランシャリオ・ストレイド。この名前を聞けば意味が分かるわよね」

エルルカ「王族?」

ステラ「そう。魔物に襲われて傷をつけられたせいで、身分を剥奪された人間よ」


 ニオ以外にこの事を話すのは初めてだ。


ステラ「小さい頃の私は体が弱くて外を走る事すらできなかった。だから権力争いで落としやすかったんでしょうね。私ですらたどりつける分かりやすい罠だったわ」

エルルカ「そんな事が……」

ステラ「誰も信じられなかった。皆私の事を価値がない人間だって言って、危害を加えてくる人に見えた。でもそんな私に先生は言ったのよ」


『本当に何もできない人間なんてこの世にはいない。俺が見て来た世界には、誰もそんな奴はいなかった。それが真実だっ』……て。


ステラ「無価値だって言われてる人はね……ただ、普通の人達にその価値が分からないだけ。ただ、芽が出ていないだけか、持ってる力だけが求められていない環境にいるだけなんだって」


 そうだ。

 人の価値を測る事の出来る絶対の定規はない。


 王族で無能だったステラは、騎士として見どころがあって優秀だった。それだけの話。


ステラ「エルルカ、なら価値がない貴方に聞くわ。貴方は一体誰に認めてもらいたいの? 誰にとっての価値ある人間になりたいの……?」


エルルカ「私は、私は……」


 彼女は言葉にしようとする。

 自分の内心と向き合い、秘めた己の望みを。


エルルカ「姉さんの、皆の力になりたい」




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