星64 まだ良い人止まり
遺跡の奥へと辿り着いた。
そこには、この間見たのと同じような水槽が並べられている。
だが、注意深く調べてみると、他の部屋へと繋がる通路が見つかったのだ。
隠された扉をくぐってステラ達は先へと進んで行く。
ニオ「やだー。ジメジメしてるぅ。ニオ、湿気とか嫌い」
ライド「水が嫌いなんて、ニオちゃんほんとうに猫みたいなのな」
ニオ「にゃんだってー!」
ライド「それそれ」
ニオ達は楽しそうだ。
もうちょっと危機感とかないのだろうか。
いや、分かってる、それが彼女達の気の使い方なんだろう。
心配だというステラの気持ちを、少しでも和らげようとしてくれているのだ。
ツェルト「ステラもしっけたら、髪の毛とか大変な感じになるのかな。いや、ないな。だって俺毎日触ってるし。ちょっとさらっとしてたのがしっとりする感じで良い髪質だよな。触って良い?」
ステラ「だめ」
断るよりも前にもう触ってる。手遅れだ。
ツェルトの方は、普段通り過ぎて何か変わっているのか分からないが。
というか、ステラの髪の毛について詳しすぎないだろうか、ちょっと怖い。
ツェルト「あ、俺なんかステラから引かれた気がする。何でだろうな」
ツェルトは別に悪い人じゃないんだけど、こうもおおっぴらに好意を寄せられるとちょっと反応に困るのよね。
もし、ツェルトの事を好きになる子がいたらちょっと聞いてみたいかも。
こんなだけど、どこが良いのって。
嫌いじゃないのよ。うん。ほんとに良い人。
ステラの災難の多い学生生活にも、ぜんぜん文句とか言わないし。
結構親切だし。
たまに困ってると良く気づいてくれるし。
誕生日プレゼントとかくれるし、そういうとこは意外と細かいし。
それでもって、剣の腕は結構いい感じだし。
戦力面ではこのメンバーの中では一番背中を預けてもいいかと思ってるくらいだし。
あれ、結構良いところある。
私ってそんなにツェルトの事知ってたのね。
それでも、冷静に考えると。
ちょっと怖く思えるのは私だけなのかしら?
ニオ「うーん、ツェルト君って良い人止まり?」
ツェルト「やめろ、悲しくなるだろ」
何がそんなに悲しいのか、ちょっとツェルトは肩を落としている。
そんな事を考えている間にも、ステラ達はその部屋に辿り着いたようだった。
実験場を思わせる作りだ。
無機質で、殺風景で、何もない。
けれど、壁の一面だけがガラス張りになっていて、まるで自分達ガラスケースの中に入れられたかの様だだった。
水槽の部屋と似たような感じがする。
けれど、そんな事を考える前に別の既視感があった。
ステラ「ここ、来た事あるわ」
ニオ「ええっ?」
ステラは蘇って来る記憶を掘り起こして、前々から気になっていた事について述べた。
ステラ「ここでは、呪術の実験をしてるのよ。どこからか集められてきた生き物達とか、生物とかを相手に」
ニオ「ステラちゃん?」
ステラ「私もここにいた事がある。森の中で、皆とはぐれて魔物に襲われた事があるんだけど、その後、すぐに意識を失っちゃって皆と時間の感覚が合わなかったから、ずっと寝ていたんだと思ってたけど、そういう事なのかしら……」
ようするに、あの時ヨルダンに捕まっていたのだろう。
そうだと思う。
だとしたら、ステラは逃げ出せたのは偶然だろうか。
ヨシュア「あの時は、僕が姉様を連れ出して外へ逃がしたんですよ」
ステラ「ヨシュア!」
声が聞こえて、そちらへ視線を向けるとそこには弟であるヨシュアが立っていた。




