星46 しっぺ返し
シェリカ「何言ってるの、エルルカ。そんなの駄目に決まってるじゃない」
エルルカ「それは私が落ちこぼれだから?」
シェリカ「違う、そうじゃない。私はエルルカの事が心配だから……」
エルルカ「余計なお世話。自分の事は自分で決めるわ」
言い争う姉妹の言葉を聞きながらステラは混乱する。
エルルカの気持ちはありがたいが、どうしてそんな事を言いだしたのか分からなかった。
同じ学校であるシェリカならともかく、エルルカとツヴァイは何の接点もないと言うのに、自分の命を駆けようとする理由が分からなかった。
それともステラには想像できないだけで、二人には何か接点があるのだろうか。
エルルカ「どうせ、どうせ私は守られるだけの存在で、何もできない人間だって……姉さんはそう思ってるんでしょう?」
シェリカ「違う。違うわ、エルルカ。私はそんな事、一度だって思っていない」
エルルカ「違わなくない。剣も握れない落ちこぼれの私なんて、剣守の恥だって皆言ってる。知ってるから」
シェリカ「そんな事……」
拳を握って小さく震わせるエルルカは、ツヴァイの近くへと歩み寄る。
エルルカ「こんな私にも出来る事があるんだもの。なら、やるべき。私の命より多くの人に心配されているこの人の命の方が重い」
シェリカ「待って、エルルカ。そんな風に自分の事を言っては駄目。やめてちょうだい」
エルルカが、ツヴァイに向けて手をかざして何かを唱えようとした時、ずっと目覚めなかったツヴァイが顔をしかめて起き上がった。
ツヴァイ「ごちゃごちゃ耳元で騒いでんじゃねぇよガキ。うるせぇな。おちおち眠ってられねぇじゃねぇか」
ステラ「先生!?」
どうして、と思う。
今までどんな異呼びかけても起きなかったのに。
だが、どこかおかしい。
変な感じがした。
目の前にいるのは先生なのに、どこか先生に見えないのだ。
シェリカ「ありえない。自力で呪いに打ち勝つなんて、それこそ伝説級の人間くらいのものなのに」
シェリカが言う。
それは本当にその通りだ。
昔話に出てくる勇者くらいなら、納得できるが、どうして先生がと思う。
ツヴァイ「くそが。あの野郎。偉そうに喋ってケチケチしてんじゃねーよ。契約してやってる分際で……ああ、何だ。いたのかお前ら。心配させて悪かったな。俺なんかの為に空気悪くすんなよ。ちょっと知り合いの力を借りるのに手間取っちまってな」
ステラ「知り合いって……、先生今まで眠ってたんですよね」
ツヴァイ「ああ、まあな。色々あんだよ。そこんとこは聞くな」
応える声は歯切れが悪い。
呪術の力を打ち消す知り合いなんて一体誰がいるのだろう。
そもそもツヴァイはずっとここに寝ていたではないか。
ツヴァイ「捕まえるつもりが、しっぺ返しをくらっちまったな」
ツヴァイはやはりヨルダンにやられたのか。
先生をしのぐほどの力量をもつとなると、あの場でステラ達が戦っても勝てたかどうかわからない。
特に今日は一般市民もきているし、他に被害を出せなかったし。
ステラ「でも、良かった。本当に、もしかして駄目なんじゃないかって思ったんですよ。心配させないでください」
ツヴァイ「ああ、悪かった。……って言っただろ、おい、こら泣くな」




