星39 自由時間
そんなこんなで、メイドさんの役をやり終えて後退したステラは、今度は自由時間だった。
ステラ「そういえば、途中から先生の姿が見えないけど、どこに行ってるのかしら」
教室で監督教師として、見守っていたはずのツヴァイだが、いつのまにやら気づいた時にはいなくなっていたのだ。
ステラ「珍しいのよね」
表面上では面倒くさがってはいるものの、意外と職務にはあれで忠実な人だ。
勝手にほっぽり出して、どこか行くとは思えなかった。
そんな風に考え事をしていると、誰かとぶつかってしまった。
?「きゃ」
ステラ「あ、ごめんなさい」
悲鳴を上げてた相手は、ステラにぶつかった反動を受けて尻もちをついてしまったようだ。
慌てて手を差し伸べる。
ステラ「大丈夫?」
見ると、十歳くらいの少女だった。
文化祭では生徒でない人たち……一般の者達も出入りしてくるので、誰かの身内か、純粋に興味のある子だろう。
ステラ「怪我はしていない?」
?「へいき。転んだだけだから」
パット見た限りでは怪我をしていないようにみえてほっとする。
騎士を目指す者が、不注意で誰かに怪我をさせるなんて事に奈たら、本末転倒だろう。
……私は先生の様に、誰かを助ける騎士になりたいんだから。
ステラ「本当にごめんなさい。そうだ、お詫びと言ってはなんだけど、はいこれ」
?「別に気にしないでいいのに」
学校内で使える店の割引チケットを少女に手渡す。
ステラ「使いきれなさそうだから、渡すだけよ」
?「そう。じゃあありがたくもらわせてもらうわ。それと、聞いていいかしら」
ステラ「私で答えられる事なら」
?「姉さんがこの学校のどこかにいるはずなんだけど、探しても見つからない。心当たりはない? シェリカ・クロスソールっていう名前なんだけど」
少女はこの学校に在籍する女生徒の妹の様だった。
せっかく見に来たはいいが、肝心の姉の姿が見つからないので、困っているらしい。
そんなのはもったいない事だ。
賑やかしいイベントを思うように楽しめない歯がゆさというのは、ステラも少し知っている。
初めて王都の町に出た時も、車いすから降りられたらもっといろいろな所にいけるのに、と何度思ったか。
ステラ「シェリカさん……。名前だけなら聞いた事があるわ。確か、いつも試験の成績優秀者で……」
?「……姉さんと私は、剣守の一族だから。それより居場所を知ってるのなら案内して」
ステラ「そうね、いるかどうかは分からないけど、彼女がいるクラスなら分かるわよ」
確か三年の教室だった気がする。
Aクラスなので、一番端だ。
ステラ「案内するわ。こっちよ」
そう言って、ステラは先に立って歩こうとするのだが、人ごみが多くなってきている景色を前にして思った。
ステラ「はぐれちゃったら大変よね。手を繋がせてもらっても良い?」
?「……まあ、良いわ。好きにして」
躊躇いがちながらも、手を伸ばしてくる少女の手を掴んで歩き出す。
そういえば名前をまだ聞いてなかった。
ステラ「私の名前は、ステラよ。貴方の名前を教えてもらっても良い?」
エルルカ「エルルカ。エルルカ・クロスソール」
ステラ「そう、エルルカね、エルルカちゃんの方がいいかしら」
?「……エルルカ、ちゃん……。それはやめて」
顔をしかめられた。
ちゃん付けした方が親近感が湧くとおもったのだが、それだとさすがに扱いが子供っぽ過ぎるのだろう。




