星34 隠されている遺跡
ややあって、辿り着いた場所は自然にできたらしい洞窟だった。
ツヴァイ「この中か」
中に精霊がいると確信を持って行動しているらしいツヴァイの後に続いて、洞窟の中へと足を踏み入れる。
薄暗い。
そう思ったら、目の前が明るくなって驚いた。
自然に光るのは、特殊な石材だ。
視線を周囲へと向ければ人工的に作らられた、石壁。
遺跡の中へ来たようだった。
ステラ「ここって……、遺跡ですよね」
ツヴァイ「ああ、みてぇだな。それも、決められた手順でのみ入れるようになってる、特殊な造りのやつだ。入ってこれたのは、空間が歪んでいたからか……」
つまり、偶然入り込めたというべきか。
空間のねじれのせいで迷子になっていたが、そのおかげで精霊に会えるというのは少し複雑だ。
会えないよりは大分マシなのだが。
もしもの場合の出来事で、精霊も迷い込んでいたというオチは嫌だ。
ステラ「この遺跡の事、王都の人たちは知ってるのかしら」
ツヴァイ「さあな、案外ずっと前に見つけて調べた後、放置してんのかもしらねぇし、今までまったく見つからなかったかもな」
ステラ「遺物とかないかしら」
ツヴァイ「気にするとこそこかよ」
そちらだって大事だ。
二年の最後まで遺物が見つからなかったら、在学してきた期間がまるまる無駄になってしまうのだから。
誰だって、自分の頑張りを無駄にはしたくないはずだろう。
何か良い物でも落ちてないかとあちこちに視線を向け、観察しながら進んで行く。
ツヴァイ「余裕だな。余所見すんな」
ステラ「いたっ」
頭をこづかれる。お叱りを受けてしまった。
気を引き締める。
だが、見た限りだとそれらしいものは一切見当たらなかった。
装飾品らしいものがないどころではない。
飾り気というものがまるで感じられない場所だった。
ステラ「今までの遺跡とは、何か違う感じがします」
ステラが今まで訪れた事のある遺跡は、どれも人の目を気にした物だった。
より良く見せよう、より美しくして見せよう。
そんな人の意思が感じさせられる建物だったのに。
眼の前にある遺跡からはまるでそんなものが感じられなかったのだ。
ステラ「何て言えばいいのかしら、ひどく実務的……な感じがするのよね」
まるで、目的以外に使えればそれだけで十分みたいに。
洞窟と言う場所から繋がった事に何か関係あるのだろうか。
何か後ろめたい事でもしていたとか?
脳裏に浮かんだそんな想像を頭を振って払おうとするが、そこに
ステラ「……」
どこからか血の光景が重なった。
真っ赤な血がしたたっていて、血だまりが広がっていて……。
そういえば、
隣にいる人は誰だっけ?
知らない人だっただろうか。
その人が話しかけてくる。
ツヴァイ「……テラ、ステラード。おい、何ボケっとしてやがる」
ステラ「……あ、すいません、ちょっと考え事を」
ツヴァイ「ったく、いくら俺でもカカシ抱えたまま無傷ってわけにはいかねぇぞ」
ステラ「カカシって。でも、すいませんちょっと、見た事があるような気がして」
ツヴァイ「ここにか?」
ステラ「はい、でもきっと気のせいです。だって……」
ステラは今の今までこんな場所がある事を知らなかったのだから、訪れたはずがないのだ。




