秘めたるは蝋にて
さて、色々渡せる物もまとまったし‥‥瓶詰めしましょっか。
まぁ行程は 実に簡単。
瓶に入れる→口に木栓をはめる→栓の縁を蝋でグル~っと密閉する→魔法でいらん細菌を殺菌する。 以上。
火を通さなくてもサクッと殺菌出来るんだから、魔法ってホント便利。
………と ここで‥‥ちょっとした不安が頭をよぎった‥‥‥
‥‥‥これ‥‥誰かが悪い事しようと思ったら‥‥簡単に出来ちゃうよねぇ‥‥ 開けたらまた、蝋で固めるだけだもん………
「すいませ~ん、これらってもう、詰めたまんま売っちゃいます~?」
「えっ? うん‥そのつもりだけれど‥‥」
なるほど、それじゃあこのまま封印した方がいいね。
これらを使って なんか別のものを作って売るって訳じゃなさそうだし、異物混入とかされるとやだし‥‥ となると‥‥‥
「じいちゃ~ん 封蝋のスタンプ借りていい~?」
「…いいが‥‥何に使うんだ‥‥?」
「開けられたら分かる様にしとこ~って思って。 ほらっ 誰かにヘンなもんを入れられるとアレだし」
「……そうか‥‥ で‥? どうするつもりなんだ‥‥?」
「え~~と、木栓の縁をグルッと密閉するでしょ。 でっ、瓶の肩に木栓越しに細い紙を渡して、両端と木栓の上に蝋でスタンプしたら、まぁ大丈夫かなぁ~~って思って。 」
封蝋って力を加えたら簡単に砕けるから。 念のため木栓の上は二カ所にスタンプしよっと。 栓の縁側に。
「………お前、孫に商売人の‥‥‥心得なんてなんて教えられる訳ないよな?」
「‥‥あぁ‥‥ お前が教えたんじゃないのか‥‥?」
「いや‥‥?…………ホント聡い子だなぁ‥‥」
ポタタとたらして即座にキュッ! 紙を指でなぞれば…… うん!紙もピンと張っていい感じ!!
あっ待てよ。 スタンプの偽装って可能性も‥もしかしたらあるかな‥‥?
よしっ この紙帯を、こっそり魔導書にしとこっと! 魔力を通したらホワッと光る感じにっ!
そして破れたら魔導書が機能しなくなる感じにっ!
ついでにこっそり、炙り出しになるやつも塗っとこっと! 薄めた水飴でいいかな!? 剥がそうとして熱を掛けられたら、変色して再利用出来ない様に!!
という訳で、今貼ったやつは 一旦剥がし々々……
こんな辺鄙なとこまで魔導書の製作依頼が来るんだから、作れる人が少ないんでしょ 多分。となると偽装の心配が大分減る……んじゃないかなっ
となると、何か書かないと‥‥ う~ん‥てっとり早くジグザグの線で行くかな……… あっ‥‥‥
製造年月日‥‥そうだまだ入れてないや! よ~しそれで行こ‥‥っと思ったけど、これまたもう一つ問題‥‥‥
「あの~~すいません…… 今日の日付って‥‥」
「…………ん……日付‥‥?
‥‥おいヘンリ……お前んとこにカレンダー無いのか‥‥?」
「‥‥あぁ‥‥」
そう‥‥考えてみたら家にカレンダーが有った試しが無い。
………以外と無くても困らないんですよね~~‥‥‥
なにぶんポツンとお山の二人暮らし。
しかも隠遁生活。
予定を合わせる相手がいない。
なんせ冠婚葬祭とは無縁ですから‥‥
数少ないお知り合いを考えてみても‥‥
ご近所さんのヴオリネンさんのとことは、お互いお天道様のご都合に振り回されてる身の上だから、何時々々(いついつ)会おうったって、そりゃ難しいし。
向こうもこちらもブラッと尋ねて、いなけりゃ帰る。 届け物があったら玄関先に置いて。
トイヴォネンさんとだって、来れたら何日後って いつもザックリ決めていく感じだし。
それに短いスパンで来られるときならともかく、間隔が離れると、お天気+お仕事の都合だってコロコロ変わるだろうし、オマケに遠いしで、来る日がズレるなんてよくある事。 あっマキネンさんもか。
ここにゃあ電話も無けりゃあ 細やかな郵便だって無いから、どうしたってこうなっちゃう。
日付感覚がザルにもなりますよ‥‥
あと野良仕事にしたって、正直 日の長さとか 暑さ寒さとか、お天気の案配とか、そこら辺に生えてる草やら木やらの様子を見てたら、季節の感じは大体掴めるから、無くたって 今のところ困る様子は別になかったし‥‥‥
「‥‥カレンダーぐらい買えよ‥‥‥」
トイヴォネンさんのその言葉に思うところが有ったのか、じいちゃんはカレンダーを注文した。
………けど‥‥すぐに日付を数えるのを忘れて、今が何日か解らなくなって‥‥
部屋の片隅でホコリを被るのは そんなに遠くない先のお話。




