解ける羽衣
ウチの孫は、時々妙なことをする
鉋に初めて触れた孫は 探る様な様子で、押して使うそれを手にし 引く素振りを見せた。
きっと、木を削る道具とだけ 知っていたのだろう。何かの本で読んで。
と、そのときまでは、それほどの違和感は抱かなかった‥‥‥
しかし、木槌を持って来た孫は‥‥‥ それはもう、手慣れた様子で鉋を分解して見せた‥‥‥
‥‥‥使い方を解っていない様だったのに 一体なぜ‥‥‥
本で知識を得ていたのか?
‥‥いや‥それなら、鉋を押して使うことを 知っていないとおかしい‥‥
‥‥‥更に‥‥こちらの疑問を駄目押しする様に‥‥‥ 孫は鉋の刃を研ぎ始めた‥‥‥
家には今まで砥石は無かった。有ったのは研ぎ棒だけだ‥‥‥ なのに何故‥‥さも当たり前の様子で 砥石を扱えているのか‥‥
‥‥‥そして、膨らむこちらの疑問を置き去りに、孫は‥‥‥ 鉋で氷を削り始めた‥‥‥
◆◆◆◆◆◆◆◆
───さてしっかり研げたのも解ったので、もっかいバラして水洗いっと‥‥
……さて‥‥ では始めますか!!!
魔法で氷の塊をドン!! そこに鉋を構えます!!!
やぁ~~~やっとこの時が来た~~~~!!!!
よ~~し作るぞ!! 文字通りの意味のカキ氷!!!
思いの始まりは、コンポートにしても 未だ酸っぱかったカリンズさん。
んで、思ったわけですよ‥‥
ギリッギリまで酸っぱいカキ氷が食べたいなぁ~~~って!!!
で、こさえてみましたカリンズシロップ。
材料は、これまた酸っぱく仕上がったスモモのワインと、隠し味にちょっぴりの梅酢、そして勿論カリンズのコンポート。
酸っぱいものってブレンドすると、複雑みが増すんだよね~~
前世じゃお酢なんか、良くブレンドしたなぁ~~
これをサッと火に掛けてアルコールを飛ばしてっと。
まぁ飛ばさなくても、大人の味で美味しいと思うけどね~。
そして出来上がったそれを、魔法で作った綿雪に掛けて、期待いっぱいに一匙目………
純白ふわふわなところにスプーンをそっと差し込み‥‥ シロップの浸った氷は、四半分くらい‥‥ そっと持ち上げる‥‥‥
その一掬いを口に含めば‥‥ キンッと走った酸っぱさを、溶けた氷がサラリと流してくれる‥‥‥
‥‥‥のが理想だったんだけど‥‥ ところがぎっちょん、どうもしっくり来ない‥‥‥
ふわっとした綿雪じゃ、空気をたたえている分溶けるのが遅くて 酸味が気持ちいいスピードで消えてくれない‥‥無理に溶かそうとすると、冷えすぎて口の中痛いし‥‥。 後 その空気の分、全部溶けても水気が少ないのも玉にキズ。 一匙のシロップ量を減らせばバランスは良くなるけど、今度は物足りなさ感が‥‥‥
じゃあダイヤモンドダスト的な がっちり冷やして作った結晶だと‥‥コレはコレで粒溶けが遅い。 まぁそりゃあ‥‥‥低温で作った分 しっかりとした結晶構造なんだろうねぇ‥‥‥
‥‥何か‥‥‥何か上手い手は無いかな‥‥‥
悶々とする頭の中に、ふと‥閃いた‥‥‥
‥‥そうだ、過去に‥‥ じゃなかった、前世に立返ってみようと‥‥
氷を削る道具………は流石に無いだろうけど、鉋はあるでしょ この世界にも。
そしてじいちゃんに鉋をねだる覚悟を決めて、残ったシロップを 魔法で作ったザラメ氷にぶっ掛けて食べた‥‥‥
‥‥‥それが存外 美味しかったのが、なんか悔しかった‥‥‥
‥‥‥そして辿り着いた今日この瞬間‥何度脳裏を過ったことか‥‥‥
それでは行かせていただきます!!! 記念すべき一かき目!!
グリップ握ると使いづらかったから、今は前世の日本の鉋みたいな構えで!!!
ガシュ!!
‥‥あ‥刃 出し過ぎだったか~‥‥‥ 台頭をコンコン叩いて引っ込めてっと……… では改めまして‥‥‥
シャッ!!
‥‥あっ‥今度は引っ込め過ぎた‥‥ これじゃ削った端から溶けてっちゃいそう‥‥
まぁ 木を削るんならいいんだろうけどねぇ‥‥ 台尻をコンコンっと‥‥
ザシャ!!
よ~し今度は良い感じ!
溜まった削り花をどんどん器に移してっと‥‥う~ん 握らないグリップが何とも邪魔‥‥ そのうち上手いこと考えよう…………
………よし‥これで最後の一かきにしよっと‥‥
器の頂上にふわっと落とし、少し密度を上げる為に、軽くきゅっと押す‥‥
そこにそ~っと‥‥ カリンズシロップを垂らして行く‥‥‥
‥‥‥出来た‥‥かも知れない‥‥ 夢にもたま~に見た一杯が‥‥‥
おもむろに匙を刺す…… 立ちのぼる冷気を唇に感じ……
……パクリ………
………ゃったぁ~~バッチリだぁ!!!
‥‥リンと舌に響いた酸味を、ハラリと溶けた氷が穏やかに静めていく‥‥‥
‥‥あぁ~美味しい……… そして懐かしいなぁ~この食感‥‥ 今度 別の味も試してみよっと‥‥
◆◆◆◆◆◆◆◆
「……なぁ‥‥お前の孫はああいう事をしたかったのか??」
「‥‥‥多分‥?‥‥」
「……えっと‥‥いや……氷の菓子は鉋が無くても出来てたよな‥‥」
「……あぁ‥‥」
「‥‥何でわざわざ鉋で??」
「………さぁ‥‥」
スマホがダメになりました‥‥‥ ラインも出来ないものは、流石に古すぎた様で‥‥
パスワードは大文字か小文字かを覚えておくことをオススメします。
ホント酷い思いをしました‥‥‥‥




