凍てつくことのは
「───いいか、氷は要するに温度の低い水だ。つまり水を作り出す延長に」
「おい……俺は魔法畑の出じゃないんだぞ‥‥ そんな一遍に言われても解らんって‥‥」
‥‥目の前で、トイヴォネンが魔法で氷を生み出す事に四苦八苦している‥‥‥
まぁ‥‥それはそうだろう‥‥ 氷を魔法で作るなんて、研究所ですら聞いたことがなかった‥‥
うちの孫は、魔法に対する考え方が そもそも違う‥‥
「すいませ~ん」
……孫が、両手のバケツ一杯に氷を持って来たとき、トイヴォネンの表情は 少し引きつっていた。
孫を自慢しようと 口元まで来ていた言葉を、そのまま静かに呑み込んだ……
‥‥少し苦かった‥‥‥
◆◆◆◆◆◆◆◆
「氷の大きさってどれ位がいいですか? 」
流石に運搬に塩梅のいいサイズなんて解らなかったので、ちょいとトイヴォネンさんにお伺いをば。バケツの横 半分々々にサイズ違いを詰めて、とりあえず四種類をサンプルに。
一番大きいのは冷凍庫の製氷皿クラスで、小さいのは小指の先ほどを。
「……う~~ん………よく解らないから‥ やりやすいのでいいよ‥‥?」
「えっと、どれでも手間は変わらないんですけど……」
…………
………
……
…あれ~ぇ… 着地点が見つからない流れだコレ‥‥
ど~しよう‥‥効率よく冷やすなら小さい氷だけど……
「とりあえず溶けにくい方がいいだろう。大きいのにしておけ」
お~ ナイスじいちゃん助け船! ありがと~~!!
「それにしても ああいうのも売れるんですね~。 味付け肉なんて、どこにでもありそうなのに」
「いやまぁ‥‥それぞれの家とか‥料理人あたりは作ってるだろうけど…… あんなレベルのはそうそう無いと思うよ‥‥?」
いや~ またまたぁ~~
「それに肉なら、馴染みが有る分 売れやすいと思うんだよね。 それで美味しくて目先が変わった味なら、飛びつく客なんて 多分いっぱいいるから」
何ですとっ?! そう言う事なら
「じゃあもう二つ、そういうの有るんで焼いて来ま~~す!」
「‥‥なぁ‥ 悪い大人に騙されない様にしてやれよ‥‥‥」
「‥‥分かってるよ‥‥ お前もくれぐれも頼むぞ‥‥‥」
…………………
「──とりあえず一つ目です~。次のも焼けたらすぐ持って来ますんで~」
「あ‥この匂いは‥‥」
「えっとっ コレはどういう料理?」
「ジンギスカンです~」
「……なぁ‥‥ジンギス‥‥カン‥‥‥って‥‥?」
「……そういう名前なのは初めて知ったが…… まぁ、とりあえず食ってみろ‥‥驚くぞ……」
「………!っ 旨い!! 肉の旨味が濃いな!! 凄い贅沢なっ甘みの有る味付けだけど、全然肉が負けてないぞ!!! 何なんだコレは!!!」
「‥聞いて驚け‥‥ ソレ、羊の肉だ‥‥」
「…ハッ!? 羊!!? あんな臭い肉が!?」
「………どう思う……? 廃羊なんか幾らでもいるよな………」
「確かに綿羊牧場じゃあ……コレは世の中が変わるかも
「お待たせしました~~」
も一つお次はカルビをバ~ン!!
「……えっと‥‥コレはどういう‥‥」
「…えっ~と‥‥焼き‥肉‥‥?」
「……まぁ…確かに、肉が焼けてるけど‥‥」
‥‥いやまぁ…… でもコレを焼き肉と言わないで何と言ったらいいのか‥‥‥
コレのレシピって、牛のアバラを 擦り下ろしタマネギ代わりのアサツキの根っこに、下ろしニンニク、甘みと酸味出しにコケモモのコンポート、ついでに臭み飛ばしのコケモモワインとカシスワイン、濃口醤油 水飴、ゴマ代わりの煎ったクルミと 焙煎クルミ油‥‥‥
ここに唐辛子が………唐辛子があればもっと焼き肉に近づけたのに~~!!!
「…うわぁ コレもまた‥‥ 後を引くっていうか‥‥病みつきになる類の味だね‥‥」
‥‥お褒めいただいてるのは嬉しいけど、やっぱり詰めが甘いよなぁ~~‥‥ 今度、ワサビあたりで実験しよう‥‥
「──あっ、そうだ‥‥ 頼まれてた鉋、持って来たよ」
「えっ!?本当ですか? ありがとうございますっ!」
やった~~!! 頼んでてくれてありがと~じいちゃ~ん!!!
「………あれっ………?」
……うん‥‥まぁ確かにコレ、鉋と言われれば鉋だ間違い無く‥‥
…でも‥‥見慣れない物が、ニョキッとその身に生えていた………




