翡翠の豆と、外れたタガと
ウチの孫は、時々妙なことをする
まぁ‥‥薄々そうではないかとは思っていたが‥‥ あの臭い立つ、壺の中身は食べ物だった‥‥
‥‥そして存外それが美味かった‥‥
緊張の糸が、ゆるりとほぐれたその時に‥‥
「──家に鉋ある?」
……………
「───と言う訳だ。鉋を頼む」
「………変わった子だなぁ‥‥‥」
マルクも同じ感想だった
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チマチマと
チマチマチマと
チマチマと
ナイフでこさえた楊枝で、かち割ったクルミの核‥‥というか実をほじくり返していた‥‥‥
‥‥‥何故なら台所の、食用油が心本無くなってきて‥‥‥
ほじくった実を絞れば、いい感じの油が絞れると思って。
ちなみに二巡目に、生のクルミの実を使った生絞り油は何とか出来た
ので欲をかいて、今度はクルミを火に放り込んで ローストした感じのもパキャパキャかち割り、チマチマチマと チマチマと
香ばしいゴマ油みたいになったらいいなぁ~と思って
長い木材 二本の一端を、ロープで縛って、
下の木は丸く皿状に削り そこにクルミを入れ、その削った窪みに合う、半円状の木を挟んで、テコの原理でギュウギュウプレス!!
滴り落ちる油を、下に容器を置いておけばバッチリ回収、一丁上がり!!
ちなみに絞り滓、軽く炙ると意外と美味しかったり。まだそこそこ 油分残ってるせいかな?…
……………………
………うん……… 量を‥‥‥量を絞るのはツライ…………
………まぁ今日も……そこそこ取れた‥‥かな?
空は茜、疲れを携え 帰ってくると、見慣れた馬車が玄関前に。ということは
「トイヴォネンさん いらっしゃ~い」
「おぉ戻ったか。カンナな、次来る時にマルクが持って来てくれると」
「えっ!ホントですか~! ありがとうございます~」
「あぁ アハハハ‥‥いやぁでもいいの? なんかこう 他に……女の子だし‥‥」
‥‥‥いや‥‥女の子って‥‥うん、話 反らそ。
「あっ ビール飲んでるんですか!?」
「あ~っと…エール‥」
「じゃあなんかツマミ作りますね~~」
「‥‥ビールって何?」
「‥‥何だろうなぁ‥‥‥」
───さ~て 毎度お馴染み雪室へゴー!あと畑にもなんか…… あっ、ビールっていえば‥‥畑行ってひっこ抜いてこよ。
……………
「──とりあえず枝豆でつないでおいて下さーい」
「?、枝豆??何?」
「えっ???‥‥あっ、イヤほら‥‥昔売ってくれた豆………
あれの若いやつです……塩茹でしただけですけど‥‥」
まぁ‥‥お酒に合う様に‥‥ ヘタの少し下の所から切って、莢の中に塩気が入る様にはしてあるけど……
「………おぉっ!?何コレ 美味いね!!」
「あっ 気に入ってもらえて良かったです~ じゃあ枝豆でなんか作りますね~」
「──いやぁまさか、育ちかけの豆がこんなエールに合うなんてなぁ。
お前の孫は凄いな」
「ホントよく思い付くよな‥‥」
………………
ではではご好評にお答えして また新たに枝豆を茹でて豆を取り出し、
ところで残った茹で汁、結構良い出汁 出てるんだよなぁ~~
さぁ此処に、残った莢を入れてもう一茹で、更に出てこいグルタミン
それはそれとして、千六本にしたニンジンとカブ 枝豆の豆を一緒に天衣を絡め、クルミ生絞り油でジュワァ~~!!!
枝豆のかき揚げ 一丁上がり!!
因みに油を大盤振る舞いなのは、トイヴォネンさんが食用油を持って来てくれたから‥‥‥うん、これだけ買えば当面大丈夫だねぇ‥‥‥
「お待たせしました~ 天ツユとおろしでどうぞ~」
「ぇ‥え~っと‥オロシ?‥‥」
「あっ、え~と大根おろ……辛いカブの擦りおろしです。
乗せて食べるなり 天ツユに溶くなりで、お好みでどうぞ~」
さぁ、次の料理にレッツゴー!
「‥‥なぁ‥‥天ツユって?」
「その黒い汁よ‥‥見てない内に作ってたから、詳しいことは俺にもわからん‥‥」
「あっ そぅ‥‥‥
──‥‥これ凄くエールに合うな」
「‥‥なあ‥」
………………
続きましては、厚揚げにでもと 重しをして水気を抜いてたお豆腐を、洗った石に押し付けるようにしてキメ細か~く擦り潰し、繋ぎにカタクリ粉を少々。
因みにカタクリ粉は、水飴こさえるときに作ったデンプン。
あれを取っといて乾かせば出来上がるわけで。
‥‥‥あっ、そーいえば ウチの山にゃあ、ほんもんのカタクリが生えとるんだった‥‥ そのうち そっちでも作ってみようかな?
‥‥でもカタクリって、エッライ成長スピード遅いんだよなぁ‥‥ヘタすると全滅‥‥まぁなんとなったら [成長促進]でどうにかなるかな? うーん‥‥
おっと、いかんいかん考え込んじゃってた。
ではでは 枝豆と、ニンジンとゴボウ代わりのアザミの根っこを みじん切りにしたのも練り込んで、手に油を塗ってコロッとまとめて油でジュワァ~~ ホイッと完成がんもどき!
更にさっきの枝豆出汁に、ナイフでこそいだ薫製肉をワサリ。
グルタミン×イノシンの合わせ出汁をこさえて漉して、薄口醤油に塩 水飴を少々。仕上げに水溶きカタクリ粉でトロみをつけて、ホイッ 仕上がった餡を、がんもどきの上にトロ~リ掛けて、まだまだ元気なアサツキを 小口に切ってパラリッと。
「は~い。味が薄かったら醤油かけてくださ~い」
さ~て 次 次っと。
「………これは?……」
「‥‥俺も初めて見る……」
「‥‥そっか……
………美味いな」
………………
そろそろお肉も行こうかな?
溶いた小麦粉をフライパンに薄~く引いてカリッカリに焼いて、粉々に砕けば、うん こいつはパン粉代わり。
ではでは牛のランプを筋切りしてから打ち粉して、玉子は無いので かなり濃ゆ~い水溶きカタクリ粉を纏わせ、その外になんちゃってパン粉も纏わせて
そして三度目の油でジュワァ~!! 早めに上げて休ませ余熱でゆっくり火を通し、仕上げにもう一回油に入れて二度揚げ!!
ザクッと包丁を入れると‥‥よし! 中はキレイなミディアムレア!!
牛カツ一丁上がり!!
「は~い、ワサビ醤油か味噌ダレでどうぞ~
後 糠漬け、口直しにしてくださ~い」
まぁワサビって言っても山ワサビだけど。香りは控えめだけどホワッと広がって、ほんのちょっぴりの甘みに ドカンと来る辛みも相まって、これはこれで美味しいんだよねぇ。
味噌ダレは、ポロネギの白いとこと、
ニンニクっぽいポロネギの根っこ…… コレ、ほとんど前世の無臭ニンニクだよなぁ~‥‥
これらをみじん切りにして油で炒め
豆味噌と 米っぽい粟味噌の合わせ味噌と 水飴と 少々の水をよ~く混ぜたのを、炒めてるところにジャーッと!
「ねぇっ、そろそろ座って一緒に食べたら?」
「あ~~すいません、まだ仕込んでるのがあるんで~」
「………凄いな……いつもああなのか?」
「‥‥まぁな‥‥今日はいつもより 張り切ってるけどな‥‥」
「……そっか………ところでワサビ……って?」
「そこのレホールのことらしい‥‥」
「あ~ そうなのか‥‥しかしこれも凄いな‥‥この 中の肉、高級な店のステーキみたいな火の通り加減だぞ……
‥‥なぁ‥‥ところで……このショウユと‥‥ミソ‥だったか?? これって売れるくらい有るか?」
「‥‥ぁ ‥あ~~…それは後で孫に聞いてくれ……」




