消夏の涼
側溝を浚い終わって家まで戻ると、スコップ引きずって畑の見回りに行くことに。
今度は見る場所がバラけているので、じいちゃんと手分けして回ることになった。
空は、澄み切った青空になっていた。
……スコップ重い‥‥ まだまだ小さい体だからなぁ‥‥ [筋力強化]やらの魔法を使い続けるのも、それはそれで疲れるし‥‥‥
さて、なんともなってなきゃいいんだけど……
………っと うわぁ‥‥‥
‥‥斜面削って作った畑の、その法面が‥‥
‥‥一部だけど、土砂崩れみたいになって‥‥畑に土が流れてるよ‥‥‥ ここ、上に木がないからなぁ~ 保水力 低かったんだろうなぁ……
被害は……蕎麦が二十二~三株ってとこかな? ホント崩れが一部で良かったよ‥‥ 不幸中の幸い‥‥かな?……
さてと、とりあえず[筋力強化]を掛けて、残った株を痛めない様にスコップで土をよけ、それから崩れた斜面にペンペンと戻していく。
届かない高さのところは魔法で土を持ち上げ……
魔法で作った板で抑えつける様にして、それから別の魔法でドッカンドッカン、ハンマーの様に板の上から叩きつけていく。法面が元に戻ることを願って。
……が しかし、そんなさなかに一つ問題が‥‥
‥‥‥蒸しあづいぃ‥‥‥
空はピーカン、恨めしい程の炎天下‥‥
あんな土砂降りの後にこれじゃぁ‥そりゃあねぇ‥‥‥ 早く片付けて とっとと涼しいとこに行こ‥‥
………さて、土は片し終わったし、株の様子を見ますか‥‥ 完全に土にやられたのは、流石に残念だけど諦めて‥‥‥
まだなんとか立ててる株は‥‥どうだろう?生きてるかな‥‥ 取り合えず[魔力感知]‥‥
[魔力感知]は品種改良の実験で、野菜と一緒に病気まで[成長促進]させちゃったときに見つけた魔法。
自分の体とおんなじ様に魔法で治せないかな?と思ったら、なんか上手くいかなくって、
ひょっとして他の魔力が邪魔してるのかな?とアタリを付け、
そこでこの魔法を思い付いて、野菜の株が魔力持ってないかなと見てみると、見事大アタリ。そしてやっぱりソレが邪魔していた。
‥‥ただ‥いざ治療しようとすると‥‥殺菌の魔法が株までイジメちゃって枯れちゃって‥‥
‥‥向こうの魔力が邪魔な分、強めに押し込む様な感じになって、加減が難しくて……まだまだ精進が必要な様で‥‥
生きてるものは どうやら、大なり小なり魔力を持っていて、
石やら枯れ木やらは、大体はウッスラ残留してる程度。
なので魔力の量を見ると生きてるか大体分かる。
事切れてたら、段々魔力が減ってくるから。さて……
……うん‥‥まぁ薄々気付いちゃいたけど‥‥‥
‥‥‥まだ 分からんね‥‥‥
‥‥明らかにオシャカなやつと、あんまり大差ない‥‥
そりゃそっか。植物ってちょん切ってすぐご臨終って訳じゃないもんなぁ。
もしそうなら、ちょん切って 花瓶に挿すのってなんなのよって話だし‥‥
あっそうだ、病気も見とこ。ベシャベシャな土 被ったんだし。
魔法で水を生み出してからシャワーの様にして泥を流し、細菌やなんかが湧いてないか魔法でチェック………
………まぁこっちも株の魔力が邪魔して、精度が大分落ちるんだけど‥‥ でもまぁ大丈夫そうだなぁ。
………さて……なんとかここは片付いた‥‥かな‥
…よ~し!もういいや! 日陰に逃げる!! 暑くてかなわん!!!!
‥‥‥って‥‥蒸し暑すぎて日陰すら……
……溶~け~~る~~…………
半ばすがる様な瞳をユラリと振って‥‥
‥‥視線の先へ歩みを向けた………
……その先にある 雪室を目指して………
………ギィー‥‥
‥‥ってな具合の音は、ちゃんと油を注してたから しなかったけど、
エラく立て付けの良い二重扉の内側を開けると‥
「‥‥おぉ‥やっぱり来たか‥‥」
じいちゃんが、扉の脇に座っていた。そりゃそうだ。今日の暑さは異常だもん‥‥ あ~~~~やっと人心地つけられる‥‥
「そっちはどうだった?」
「法面崩れてたから とりあえず戻しといたよ。まだ全部廻れてないけど‥‥ そっちは?」
「こっちはまぁ 大丈夫そうだったぞ」
良かったぁ~じゃあ今のところ被害は一ヶ所だけか~~
ふぅ とじいちゃんの横の壁に凭れ、そのままズルズルと腰を下ろした。
ここは斜面をくり抜いて室にした造りで、しっかりした入り口とは裏腹に、皮を剥いだだけの丸太と 切りっぱなしの板で補強した構造。所々隙間から土が見える‥‥
冷気が逃げなくて、崩れず潰れなけりゃそれでいいって感じの、何とも割り切った形。そして棚が打ち付けてある。
中央から壁際二メートル半くらいの地面は五十センチくらい掘ってあり、そこに雪を見上げる程盛って……アレ?
「じいちゃん、雪‥大分減ってない?」
「そうだなぁ、今年は暑いからなぁ…… 足すか」
「そだねぇ」
という訳で、早速魔法で氷を生み出した。
積もった雪の底の方みたいな、氷の粒が押し固まった様なのをドシャっと。
「‥‥なぁ 今‥‥」
「あっ氷 塊の方が良かった?」
「いや、そうじゃなくてな‥‥‥氷っていきなり出せるのか?‥‥」
「ん?うん………あの、えっとじゃあ‥今までどうやってたの?」
「おぉ?えっと こんな感じだぞ」
言うや否やじいちゃんは、盛られた雪山の上に 雲の中の様な、エラく密度の濃いミストを生み出し、
そこにこちらまで伝わってくる 強い冷気を生み出して、
その周囲を、魔法で覆った。伝わる冷気が弱くなったから、中の保冷かな?
「で、暫く待って覆いを消したら 上に雪が積もるんだよ」
なるほど~~ 雪が出来るプロセスをなぞってるのか~~
うわぁ~…こりゃまた綺麗な綿雪‥‥
「……そうだっ ちょっと待ってて」
その光景に ふと思い立ったものがあり、じいちゃんを待たせて、一度家に戻った………
「………お待たせ~~ ちょっとコレ持っててー」
家から持って来たスープボウル二つとスプーンも二つ、そして白っぽい茶色の液体を入れた瓶をじいちゃんに預けて、
自分はふわっと魔法で飛んで、ふわりと積もった綿雪を集めて持って来た。
さ~てこれをスープボウルに盛って、こんな日の為に冷やしておいた物を、近くの棚に取りに行く。
以前仕込んだコンポートのシロップに、同じ種類のベリーのジャム ベリーワインを合わせて、ユル~く火を入れてアルコールを飛ばした、
思い付きででっち上げておいた、カキ氷シロップを。
フワッフワで優しそうな感じだから……穏やかなグズベリーのがいいかな? ついでに凍らせてたベリーも上に飾っちゃお。
「‥‥‥コレは‥‥見た目だけで たまらんな‥‥」
「でしょ~~。溶ける前に食べちゃおっ」
ではでは早速一匙を………
………クヒュぅ~~~~!!!染みる~~~!!!!
冷たい筈なのに、たたえた空気で 少しほわっとして、それから口の中で解けて行く毎に、凛と冷たさが広がって、
そこに優しい甘みが、静々と舌を撫でてゆく‥‥
‥‥しっかしこのシロップ‥‥お財布の中身が心配になりそうな味だなぁ‥‥ ベリーワインが効いてるのかな?
「あぁ‥‥‥本当にたまらんなぁ……」
「‥‥ねぇ~~……」
はぁ~~幸せ~~…… さておかわりは……
プラムっぽいのを、グズベリーで出来た白いベリーワインと水飴で、軽く煮詰めて漬け込んだやつを持って来て‥‥
漬けた蜜をかけて、果実は魔法で凍らせて、キレイな石でシャリシャリ擦り下ろして上にかけて‥‥
更に上から、牛乳と水飴を煮詰めた‥‥ まぁ要するに練乳を棚から持って来てかけて………
……あぁ~~優しい味~~‥‥
穏やかな酸味を包む、柔らかな練乳の甘み‥‥ ホッコリするなぁ~~‥‥
……あ‥綿雪がなくなっちゃった…… ちょっと自分でも作ってみよっかな。
‥‥うーん‥‥同時に魔法が使えるなら‥先に空間覆った方が効率がいいかな? その中にミストを出して、そして冷気を……
そして覆いを消せば‥‥
あり? 六角形の薄い結晶だけど‥‥雪っていうよりはダイヤモンドダスト?
結晶の枝が伸びてないなぁ‥‥温度が低いのかな? なかなか奥が深いなぁ‥‥
さっきよりシャリシャリ感がありそうだから………
ハスカップのシロップに……家から持って来てじいちゃんに預けた茶色いやつ、
牛乳とバターと水飴で作った、キャラメルソースもかけてみましょっと。さてどんな塩梅かな?……
……お~~ これはまたしっかりとした味で。
ハスカップのドシッとした風味と味わいに、香ばしさとコクのあるキャラメルソースが合わさって、なかなか満足感があって美味しいなぁ……
さて、次はどうしようかな?梅シロップもいいかもなぁ………
………たまにはこんな贅沢もいいもんだな‥‥
お金は掛けてないけどねぇ……
そんな軽口なども飛ばし合いながらシロップをとっかえひっかえ、二人で日が傾くまで 酷暑の幸せを味わった……




