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懐かしき酸っぱさを求めて


 うちの孫は、時々妙なことをする


 今日は殆ど色づいていない緑の実を、大量に持って帰って来た‥‥‥



 ◆◆◆◆◆◆◆◆




 冬の名残などすっかり消え失せた 暖かめのある日、ふと思い立ち、再び桜のような木々のもとへやってきた。


 もしも想いの通りなら懐かしきものが手に入ると、少し心を浮き立たせて‥‥


 木漏れ日をこぼす枝々には望んだ光景が‥‥‥



 と思ったけど、ちょっと違った



 見上げる景色は それぞれの木ごとに、まだ実りの浅い 二センチくらいから四センチ程の、丸い実が実っていた‥‥‥ちょっと長めの柄の先に。


‥‥その柄が無ければ、望んだ光景と大体一緒だったんだけどなぁ‥‥

 多分、すももかプラムかプルーンかハタンキョウか、その辺の類かな‥‥じいちゃんが植え付けたんかな?


‥‥‥植えたけど忙しくてほっぽってたってとこかな‥‥?



 はぁ~‥‥残念だけどこれじゃあ………



………いや‥別にこれでも作れるんじゃ……ない‥かな?



 まっいいや、ダメで元々。とりあえずやってみますか、




梅の代わりに



………………



 さて、帰って早速 柄を適当にちょん切ってから実を洗って、水気をしっかり切っておいて、

 殺菌した瓶やら瓶やらをデデンと並べた。


 先ずは、幾つかの容器の底に塩を敷いて、おんなじ木から採った実を、塩の上に並べていって、


 更に上に塩を敷いて、


 実を敷いて、


 塩敷いて、


 実を敷いて………


………最後は塩で蓋をして、重石をしたら いっちょ上がり


 梅干しもどき、完成!



………してくれればいいなぁ……



 塩加減は 前世の昔ながらの梅干しは、20%くらいだったけど、


ここにある実は、針を刺して確認して見たら 実の厚さがマチマチだったから、完全に山勘。

 一応、厚さごとに調整はしたつもりだけど、はてさて どうなりますやら‥‥




 さてせっかくだから、他にも何かしよ。



 う~~ん‥とりあえず実を魔法で凍らせてから、水飴に漬けて‥‥


‥‥これで出来るかな? 梅シロップ(もどき)‥‥




 続いては、梅干しの 塩の代わりに味噌を積層させた‥‥


‥‥コレ、名前 何て言えばいいんだろ?

 とりあえず梅の味噌漬け(もどき)ってとこでいいかな?‥‥




 もひとつオマケに、梅の醤油漬け(もどき)。

 せっかくだから、ニューフェイスの醤油、仕込みの塩水の代わりに醤油を使った、再仕込み醤油を使ってみましょ



 後は時間にお任せってことで………



………………




 さぁ~てあれから一週間、そろそろ味噌漬け混ぜないとなぁ。


 おっ、梅干し(もどき)はいい感じに梅酢が上がってきた。

 やっぱ、すももの類でも代用が利いたか~


 醤油漬けはまだ早いな。 ちょっと揺すっとこ……


 シロップは‥‥お~ いい感じに色が出て来た。

 ではではちょいと味見を‥‥ うん、砂糖じゃないからちょっと心配だったけど、ちゃんと仕上がった~。炭酸で割ったら美味いだろうなぁ~~

 どっかに炭酸泉湧いてないかなぁ‥‥‥



‥‥イヤ、作れるね多分‥‥‥



 二酸化炭素を水に溶かすだけだもん。それくらい魔法で何とかなるべ……


 とりあえず魔法で球形の器を形作り、その中に水。そして二酸化炭素を‥‥お~、そんなに魔力喰われないなぁ。結構気軽に作れそうだなコリャ。



 それでは器を‥‥


  ギュ~~~~~~っと縮めて圧縮~~!ついでにシェイク!シェイク!シェイク!……



 おっし!完成 炭酸水!!


 早速コイツでシロップを割りまして‥‥


「ただいまー。」


 あっ、じいちゃん帰って来たっ。ちょうどいいや、じいちゃんの分も作ろっと‥‥



「お疲れ様~~ これ、ちょっと飲んでみる~?」


 少しだけ訝しげな表情を浮かべてたけど、すぐに手を伸ばしてコップを受け取り、そのまま口に運んでくれた…


「………何だ‥‥これ……」



 アレ?‥‥口に合わなかった‥かな‥?



「‥‥何だか凄くスッキリするな‥‥疲れた体に染み渡るようだよ」



 あっ、良かったぁ‥‥‥




………そういえば、そろそろ実が熟れ始める頃じゃないかな? そっちも採って来て仕込んどこっと………



 ………………




 そんなこんなで、始めの仕込みから ひと月位。青梅(もどき)の味噌漬け 醤油漬けの方は、そろそろいい感じじゃないかな‥‥


 早速味見を。先ずは醤油を一匙‥‥ 醤油のコクに、爽やかな酸味と風味‥‥コレ後で冷や奴に掛けよ。美味ぇ‥‥

 実の方はコリコリの歯ごたえと涼やかな風味。ネギトロがあったら刻んで混ぜたいなぁ~~!

 納豆に入れても美味いかもねぇ~~


 お味噌の方は‥‥ クゥ~~~~!! コレで鯖味噌作ったら美味しそぅ~~~!

 実はしっとりうま味を含んで……漬けた味噌も使って、鯵のなめろう作ったら白米に合いそうだなぁ~~


‥‥まぁ、こっちの世界で、鯵にも白米にもお目に掛かったこと無いんだけどね‥‥‥



 じゃ、梅干し(もどき)の土用干しと参りますか!


 青梅(もどき)のも 熟れてた方のも、そろそろ良い塩梅だろうし。

‥‥しっかし 皮の色がこんなしっかり出るとはなぁ‥‥ 赤っぽいのは紫蘇と漬けたみたいでいい感じだけど、プルーンっぽいのは紫で‥‥ジャムみたいな色になっちゃったよオイ………


 さてさて、ザルに広げて三日三晩。

雨に当てないように気を付けて、上側が程良く乾いたらひっくり返してっと………



……………



 四日目の朝、清々しい空気をかき分けながら、ザルに乗った梅干し(もどき)の元へ向かうと、そこには具合良く仕上がった姿が広がっていた。


 青梅(もどき)の方を、一粒口に放り込むと‥‥‥


‥‥‥おぉぅ‥カーンと酸っぱい‥‥


 塩気も酸味も まだまだトゲトゲしいけど、紛うことなき梅干しの味だ‥‥


 熟れた実の方は‥‥うん、酸味が穏やか。風味がやっぱりすももとかプルーンとか寄りだけど、コレはコレでまあ。

 熟れた実のシロップがおんなじ感じだったから、予想通りの仕上がりだなぁ。

 熟れ具合がもうちょっと若かったら、もっと梅干しに近づけられるかな?



「お? これ確か、この間の爽やかなシュワシュワのヤツの材料だよな」


「ん?そうだよ、その実だよ」


「一個貰っていいか?」


「うんいいよ~」



……ん? 貰ってその実をどうするつもり‥‥



「イヤ!ちょっと待ってじいちゃ‥」



‥‥手遅れだった‥‥既に青い実で作った梅干しが、じいちゃんの口の中に転がり込んでいた‥‥


「‥ヴ!!」


 そしてじいちゃんの顔がキューーー!!!っと寄った………




‥‥‥そりゃそうだよねぇ‥‥ 事前知識なしに あんな酸っぱいもんを一粒丸ごとパクっといったら………


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