懐かしき酸っぱさを求めて
うちの孫は、時々妙なことをする
今日は殆ど色づいていない緑の実を、大量に持って帰って来た‥‥‥
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冬の名残などすっかり消え失せた 暖かめのある日、ふと思い立ち、再び桜のような木々の下へやってきた。
もしも想いの通りなら懐かしきものが手に入ると、少し心を浮き立たせて‥‥
木漏れ日を零す枝々には望んだ光景が‥‥‥
と思ったけど、ちょっと違った
見上げる景色は それぞれの木毎に、まだ実りの浅い 二センチくらいから四センチ程の、丸い実が実っていた‥‥‥ちょっと長めの柄の先に。
‥‥その柄が無ければ、望んだ光景と大体一緒だったんだけどなぁ‥‥
多分、すももかプラムかプルーンかハタンキョウか、その辺の類かな‥‥じいちゃんが植え付けたんかな?
‥‥‥植えたけど忙しくてほっぽってたってとこかな‥‥?
はぁ~‥‥残念だけどこれじゃあ………
………いや‥別にこれでも作れるんじゃ……ない‥かな?
まっいいや、ダメで元々。とりあえずやってみますか、
梅の代わりに
………………
さて、帰って早速 柄を適当にちょん切ってから実を洗って、水気をしっかり切っておいて、
殺菌した瓶やら瓶やらをデデンと並べた。
先ずは、幾つかの容器の底に塩を敷いて、おんなじ木から採った実を、塩の上に並べていって、
更に上に塩を敷いて、
実を敷いて、
塩敷いて、
実を敷いて………
………最後は塩で蓋をして、重石をしたら いっちょ上がり
梅干しもどき、完成!
………してくれればいいなぁ……
塩加減は 前世の昔ながらの梅干しは、20%くらいだったけど、
ここにある実は、針を刺して確認して見たら 実の厚さがマチマチだったから、完全に山勘。
一応、厚さ毎に調整はしたつもりだけど、はてさて どうなりますやら‥‥
さてせっかくだから、他にも何かしよ。
う~~ん‥とりあえず実を魔法で凍らせてから、水飴に漬けて‥‥
‥‥これで出来るかな? 梅シロップ(もどき)‥‥
続いては、梅干しの 塩の代わりに味噌を積層させた‥‥
‥‥コレ、名前 何て言えばいいんだろ?
とりあえず梅の味噌漬け(もどき)ってとこでいいかな?‥‥
もひとつオマケに、梅の醤油漬け(もどき)。
せっかくだから、ニューフェイスの醤油、仕込みの塩水の代わりに醤油を使った、再仕込み醤油を使ってみましょ
後は時間にお任せってことで………
………………
さぁ~てあれから一週間、そろそろ味噌漬け混ぜないとなぁ。
おっ、梅干し(もどき)はいい感じに梅酢が上がってきた。
やっぱ、すももの類でも代用が利いたか~
醤油漬けはまだ早いな。 ちょっと揺すっとこ……
シロップは‥‥お~ いい感じに色が出て来た。
ではではちょいと味見を‥‥ うん、砂糖じゃないからちょっと心配だったけど、ちゃんと仕上がった~。炭酸で割ったら美味いだろうなぁ~~
どっかに炭酸泉湧いてないかなぁ‥‥‥
‥‥イヤ、作れるね多分‥‥‥
二酸化炭素を水に溶かすだけだもん。それくらい魔法で何とかなるべ……
とりあえず魔法で球形の器を形作り、その中に水。そして二酸化炭素を‥‥お~、そんなに魔力喰われないなぁ。結構気軽に作れそうだなコリャ。
それでは器を‥‥
ギュ~~~~~~っと縮めて圧縮~~!ついでにシェイク!シェイク!シェイク!……
おっし!完成 炭酸水!!
早速コイツでシロップを割りまして‥‥
「ただいまー。」
あっ、じいちゃん帰って来たっ。ちょうどいいや、じいちゃんの分も作ろっと‥‥
「お疲れ様~~ これ、ちょっと飲んでみる~?」
少しだけ訝しげな表情を浮かべてたけど、すぐに手を伸ばしてコップを受け取り、そのまま口に運んでくれた…
「………何だ‥‥これ……」
アレ?‥‥口に合わなかった‥かな‥?
「‥‥何だか凄くスッキリするな‥‥疲れた体に染み渡るようだよ」
あっ、良かったぁ‥‥‥
………そういえば、そろそろ実が熟れ始める頃じゃないかな? そっちも採って来て仕込んどこっと………
………………
そんなこんなで、始めの仕込みから ひと月位。青梅(もどき)の味噌漬け 醤油漬けの方は、そろそろいい感じじゃないかな‥‥
早速味見を。先ずは醤油を一匙‥‥ 醤油のコクに、爽やかな酸味と風味‥‥コレ後で冷や奴に掛けよ。美味ぇ‥‥
実の方はコリコリの歯ごたえと涼やかな風味。ネギトロがあったら刻んで混ぜたいなぁ~~!
納豆に入れても美味いかもねぇ~~
お味噌の方は‥‥ クゥ~~~~!! コレで鯖味噌作ったら美味しそぅ~~~!
実はしっとりうま味を含んで……漬けた味噌も使って、鯵のなめろう作ったら白米に合いそうだなぁ~~
‥‥まぁ、こっちの世界で、鯵にも白米にもお目に掛かったこと無いんだけどね‥‥‥
じゃ、梅干し(もどき)の土用干しと参りますか!
青梅(もどき)のも 熟れてた方のも、そろそろ良い塩梅だろうし。
‥‥しっかし 皮の色がこんなしっかり出るとはなぁ‥‥ 赤っぽいのは紫蘇と漬けたみたいでいい感じだけど、プルーンっぽいのは紫で‥‥ジャムみたいな色になっちゃったよオイ………
さてさて、ザルに広げて三日三晩。
雨に当てないように気を付けて、上側が程良く乾いたらひっくり返してっと………
……………
四日目の朝、清々しい空気をかき分けながら、ザルに乗った梅干し(もどき)の元へ向かうと、そこには具合良く仕上がった姿が広がっていた。
青梅(もどき)の方を、一粒口に放り込むと‥‥‥
‥‥‥おぉぅ‥カーンと酸っぱい‥‥
塩気も酸味も まだまだトゲトゲしいけど、紛うことなき梅干しの味だ‥‥
熟れた実の方は‥‥うん、酸味が穏やか。風味がやっぱりすももとかプルーンとか寄りだけど、コレはコレでまあ。
熟れた実のシロップがおんなじ感じだったから、予想通りの仕上がりだなぁ。
熟れ具合がもうちょっと若かったら、もっと梅干しに近づけられるかな?
「お? これ確か、この間の爽やかなシュワシュワのヤツの材料だよな」
「ん?そうだよ、その実だよ」
「一個貰っていいか?」
「うんいいよ~」
……ん? 貰ってその実をどうするつもり‥‥
「イヤ!ちょっと待ってじいちゃ‥」
‥‥手遅れだった‥‥既に青い実で作った梅干しが、じいちゃんの口の中に転がり込んでいた‥‥
「‥ヴ!!」
そしてじいちゃんの顔がキューーー!!!っと寄った………
‥‥‥そりゃそうだよねぇ‥‥ 事前知識なしに あんな酸っぱいもんを一粒丸ごとパクっといったら………




