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欲望という名の横車


………ズズズ‥‥



 朗らかな太陽が優しい春の日‥‥植木鉢やプランターを並べた部屋で椅子に腰掛け


 干したアザミを煮出した汁を、お茶の代わりに啜っていた‥‥

 三煎目のお茶といった感じの味で、悪く言えば薄い、良く言えば優しいお味。個人的にはけっこう好み。



 お茶受けは、つくしの甘露煮。


 袴を取って、湯通しでサッとアク抜きしたつくしんぼを、煮詰めた水飴に一晩漬けてから、そのまま更に煮詰めた一品。

 欲を言えば粉砂糖をまぶしたかったんだけど、まぁこれはこれで。

 ホロっと苦い風流なお味。



 フゥ‥と ひと息吐いた後、再び周囲にある、野菜やなんかの植わった 鉢やプランターに意識を移した。



‥‥魔法による植物の成長促進。


 成長の早いカブ等は三ヶ月を五日まで短縮することが可能だった。


 同時進行で成長が遅いであろうクルミもやってみたら、一気に芽吹いてもうすぐ苗ってところまで行ったので、カブよりも成長期間を短縮できている。

………ただ、普通のクルミの木の成長スピードなんて知らないもんで、厳密にどこまで早くなってるかはわからないけど‥‥


 ちなみに余りに成長を急ぎ過ぎると、どれも葉だけとか茎だけとか 成長が極端に偏ったりして、種を取れずに終わったり、枯れてしまったりする結果となってしまった‥‥



 頭のなかでおさらいしつつ、ため息をつきながら天井を仰ぎ思った…………



‥‥ど~~考えても時間が足りん………

 このペースじゃ夏までに畑で新しい野菜なんて 夢のまた夢だ‥‥


‥‥そしてかなり疲れる‥‥

 魔力も体力もゴリゴリ食われ、おまけに魔力を込め過ぎると今までの努力が一気にオシャカ、神経も使う………


 なんか微動だにせずに空気イスをやってる気分……………



‥‥いっそ遺伝子組み換えやってみるか‥‥魔法で放射線を生み出して‥‥多分できるんじゃないかな?……………


………………いや、止めとこ‥‥‥個人じゃ周囲への影響が図りきれん気がする‥‥だいたい原種に戻そうってのに、それは方向が違う気も‥‥



…………しょーがない、長期戦かぁ‥‥‥二~三年後には何とかなるといいなぁ…………


 両手の指を絡めて後頭部に当て、眉間の皺が取れぬままグイッと一つ伸びをしたところ、



「大丈夫か?凄い顔してるぞ」


 じいちゃんが上から顔を覗き込んできた。


「あ、じいちゃん。お茶飲む?」


「お?おぉ………、それ‥その辺に生えてるやつだよな……… 食うのか?」


 つくしを目にしたじいちゃんがそう聞いてきた。

 アハハ………やっぱり食べ物認定されてなかったかぁ つくしって‥‥



「うん、食べる?」


 が、ここで引くような自分ではない。

 箸でつまんで差し出す素振りを見せてみた。


「お………おぉ………」


 戸惑いつつも頷いてくれたので、そのままじいちゃんにアーンをする………


「………子供なのに何でそんなに苦いのが好きなんだ?…………」


「アハハ‥何でだろうねぇ‥‥」


 前世が云々(うんぬん)とは口が裂けても言えないので、笑ってごまかした。

 そんなこと口走ったら変人か病人扱いだろうし‥‥



「で、そもそも何やってるんだ?この鉢とかで」


「いやぁ、新しい野菜生み出せないかなって思って‥‥」


「‥‥どっからその発想が出てくるんだ…………… そう言えば入植した時に買った種、まだ残ってなかったかな‥‥ 芽が出るかどうかは分からんけど、ちょっと見てみるか?」


 へ!?そんなのあるの?


「見る見る見る見る!」


 少しフワッと笑顔を浮かべたじいちゃんの後に付いて、二人で物置小屋へと足を向けた………



………雑然とした荷物の山を、じいちゃんとひっくり返し………


「お、あったあった。コレだコレだ」


 随分と奥の方にあった木箱を見つけたじいちゃんがそう言った。


 開けて見せてくれると、そこには幾つもの袋があり、一つ紐解き中を覗くと‥‥おー間違いなく何かの種だ~

 黒く、皺の寄った小さな粒‥‥これ、ネギ系じゃね?


 他の袋も紐解けば、コロンとまん丸の多分アブラナ科の種が何種か、


 大きめの豆と、輪を掛けて大きな豆の二種類、


 後は米粒を二回りほど小さくして、縦に筋状の溝が入った種……… 何だろ?これはちょっとよく分かんないな。



「ねぇじいちゃん、コレちょっとずつ使わしてもらってもいいかな?」


「ちょっとと言わず全部いいぞ」


「え~ありがと~。でも何で今まで植えてなかったの?」


「‥‥いやなぁ‥‥ 昔な、交通の要衝になる大きな街を作る計画が近くにあってな、そこを当て込んでココに畑を作ったんだよ‥‥」


「ふ~ん、じゃあその計画って頓挫したの?」


「あぁ‥七割方進んで、人もだいぶ移り住んだところでな……… ペスト禍が起こったんだよ‥‥」


 ぺ‥ペスト禍……うわぁ‥‥


「更にな‥‥」


‥まだあるの?‥‥ 


「ある程度落ち着いた頃に、資材が来なくて作業ができなくなってた建築屋やら、商品が傷むから早く持ち出したい商人やらが横車を押してな………無理やり終息宣言を出させて、市街封鎖を解いてしまったんだよ‥‥」


‥うっわぁ‥‥‥そんなことしたら‥‥


「まぁおかげで周辺にまで感染が広がってな‥‥

 街の方も医師団が引き上げてから すぐぶり返して、また市街封鎖で大パニックだよ‥‥」


 だろうねぇ‥‥

 アルベール・カミュもビックリだなこりゃ‥‥


「それでとうとう住民の一部が暴徒化してな、建物に火を付けられて、一気に街は火の海になってな‥‥」


‥‥‥うへぇ‥‥


「それで廃墟になった街の再建計画もあったんだがなぁ‥‥まぁ人が集まらなくて、そのまま打ち捨てられたんだよ‥‥」


‥‥‥なるほど‥それで‥‥




 想像を易々と超える、重た~い過去の出来事を聞いた後、重たいついでにもう一つ、気になっていた事を聞いてみることにした。



「ところで前から気になってたんだけど‥‥ じいちゃん 何で研究者辞めたの?」

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