ウィンドフラワーは夢を見せる
孫が白い花を摘んで来た。
そして当然のように鍋で茹でた‥‥
うちの孫は、今日も斜め横で平常進行だ……
◆◆◆◆◆◆◆◆
遠くの山の峰に見える雪もだいぶ少なくなり、冷え込む日数も数えるほどになって、ニリンソウの白く可憐な花が、ポツリポツリと咲き始めた。
三つ葉のノリでジャンジャカ美味しく使っていたら、アッと言う間に干したストックが心許なくなってしまった‥‥
戻して食べてもシャキシャキで‥美味しいんだもん………
お山で手に入る貴重な香草、追加で採取に来た次第で‥‥今度は大事に使ってこ…………
前より時期が経ってるから、少し繊維が強くなってるかな?でもやっぱ花の方は柔らかいなぁ。
いやぁ~~花が付いてると、いちいち[毒物鑑定]掛けなくてもトリカブトと間違えないから、楽でいいわぁ~。
そんな感じで順調に手折っているさなか……
まだ綻ぶ前のつぼみに触れたときに ふと、ある可能性が脳裏に浮かんだ。
それを確かめるために、つぼみにある魔法を掛けてみる。すると………
………うん、いけるかも。
……………………
………家の前まで戻ってくると、ヴオリネンさんのところに小麦やら燕麦やらを持って行ったじいちゃんが、ちょうど荷馬車を引いて帰って来た。
「おかえり~」
「ただいまー。ちょうど羊潰したとこだったらしいから、ロース貰ってきたぞー」
おぉロース!?やっほ~~ぃ!! さぁ~てどうやって食べてやろうか!?
せっかく新鮮な肉だしなぁ……… そうだ!
先ずお肉を薄~くスライスしてお皿に並べて、さっき採ってきたニリンソウをお湯にくぐらせてアク抜きしたのを、皿の真ん中に盛り付けて‥‥‥あら、花が絵になりますなぁ。
後、ちょうどお昼に食べようと思ってた木綿豆腐と……そろそろ時期終わりのアイノネギも添えますか!
ではでは外に組んだカマドで、削り節代わりに薫製肉で出汁を取って、
昆布代わり‥‥になるかな?わかんないけど、干したカタクリを鍋に入れて…………
薬味に、擦り下ろし山ワサビの醤油漬けも持ってこよっ。
よし!思いつきでこれなら上等な方でしょ!羊のシャブシャブ、準備完了!!
タレはとりあえず、醤油と水飴を水で伸ばして、薫製肉を入れて弱火で煮詰めてから、柑橘代わりにお酢を混ぜた なんちゃってポン酢。小ネギ代わりに、アサツキ刻んでパラリとふって。
火口を横に、じいちゃんと差し向かい。
ホントは七輪があれば、家の中で楽しめるんだけどねぇ‥‥
さてまずは……… 生でいってみますか!!念のため【毒物鑑定】を‥‥ん、オッケー大丈夫!!
スライスしたお肉に山ワサビをチョイと乗っけて、タレの方もチョイと付けてパクリ‥‥
「あっ!ちょっ!!」
「!!……何??」
「…………それ、火 通って無いよな…………」
あっ!生肉食べる文化ないのか!!
「え~と……【毒物鑑定】大丈夫だったよ?………」
「いや、そういう問題じゃなくて………」
「‥‥美味しいよ……?」
「‥‥そうか………」
うん、美味しいよ? さてさてしっかり味わいましょ…………
やっぱり生だと特有の匂いあんまり感じないねぇ。まず体温で溶けた脂の甘みが舌の上に広がって、それからお肉の旨みがジワッと出て来て、山ワサビの辛みがキリッと引き締めて…………
さて、次はちゃんと火を通しましょ。
ニリンソウも一緒に湯にくぐらせてみよっかな?お肉で巻いてっと…………
…………うん、ちょっと匂いが出たところに、ニリンソウの風味が合わさって‥‥やっぱこの組み合わせは鉄板だなぁ。そこにサッパリしたタレの酸味、いいですねぇ~
ちょっとニリンソウがシナッとして、それはそれでいいけど、今度はお肉だけシャブシャブして、それで巻いて食べようかな? 固さもそんなに気にならなかったし。
っとその前に、アイノネギもシャブシャブして…………
…………あぁ~~ネギとかニンニクっぽい香りだけど 刺激は控えめで、根本の方はすこぶる甘い‥‥ やっぱり山菜の女王様だなぁ‥‥
さ~て、味がいい感じにお湯に出て来た。
それでは、味噌、水飴、油を火に掛けながら練ったペーストを そのお湯で薄めて、味噌ダレ作成!!欲を言えば ゴマダレ用意したかったんだけど‥‥胡麻がないから………
今回はお肉だけで、山ワサビを付けて………… うん!コクがあるのを挟むと、満足感がまたひとしお!そして辛みで舌がスッキリ!
この辺でお豆腐もいれよっかな?
ある程度まとめて投入してお湯の温度を下げて、クラクラっと再沸騰してきたところで引き上げて‥‥
ハフハフっ!湯豆腐ですなこりゃ。ん~~美味い!
「ところでヴオリネンさんのとこ、立て続けに羊潰してるけど なんかあったんかな?」
「いや。ただ年いったのを減らしてるだけみたいだぞ」
「?、年いってたって毛は採れるんじゃないの?」
「いや‥あそこはミルクがメインだぞ」
……………………マ~~~ジ~~~か~~~~!!!!!
じゃああのジンギスカン牛乳味わうチャンス!、なんぼでもあったんか~~!!! くっっっそ~~~ぅ!!もっと早く知ってれば!!!!!
‥‥‥って、嘆いていても仕方がない。うん、気付いたことを幸運に思いましょ‥‥
さて〆に 固めに炊いた押し麦を入れて、塩、バター、生クリームを入れてリゾット風に、隠し味にちょっと味噌を……………
……………ふう~~ごちそうさまっと。さて、後片付け‥‥っとその前に、
「じいちゃん植木鉢使っていい?」
「?、おぉいいぞ」
あぶないあぶない 危うく忘れるところだった。
ニリンソウのつぼみに使った魔法。
それは麹にも使った、代謝スピードアップ。
狙いは成長促進。
つぼみに触れた瞬間、ひょっとしたら植物にも効くんじゃないかと ふと思い、
もしそれができたら、物凄いスピードで品種改良ができるんじゃないかと思い立ち‥‥‥
特にカブやルタバガなんかのアブラナ科の野菜。
それらを一旦 原種の方に逆品種改良をして、そこから別方向に進化させれば、
大根、キャベツ、ブロッコリーなんかの、前世で見知った野菜にご対面できるのではと思い、期待に胸が踊りに踊った。
………まぁそこまでは、夢見すぎかもしれないけど‥‥‥
ドキドキする心を何とか落ち着け、そっと魔法を掛けてみたら…………
見事につぼみが綻んだ。
アハハ‥‥ジンギスカン牛乳再び………




