表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/80

妖精に口づけを



…………孫が花を摘んできた‥‥‥



 そうか‥‥普段はあんなでも、やっぱり女の子なんだな‥‥‥


 男親が 娘の成長に気付く時の気持ちは、こういうものなのだろうか‥‥


 嬉しいような、遠くへ行ってしまうようで寂しいような………




…………などと、思っていたのが甘かった‥‥‥



 ◆◆◆◆◆◆◆◆




………朗らかな春の日陰の斜面‥‥‥



 差し込む木漏れ日にに所々照らされた地面は、まさに絨毯のように、可憐な花々が生い茂っていた。



 青紫や空色のエンゴサクに、薄紫のカタクリ。



 エンゴサクの花を一輪摘み、花の後ろに唇を沿わせる‥‥


 蜜の袋をチュッと優しく吸えば、プツリと弾け 甘い汁が唇を濡らす。


 唇を外し、再び花の絨毯を見やる。そして、浮かんでいた気持ちを、心の中でつぶやいた‥‥




………よし! 今日のオカズは花のお浸しにしよっ!!



 カタクリ、エンゴサク共に採りすぎない程度に手折りつつ、

 味付けどうしようかなぁ~と 楽しい悩みを脳裏で転がしていた………




 両の掌にふた山ほど量をキッチンに運び込んだら、早速調味料を物色………



‥醤油をサッとかけるのは当然やるとして……酢味噌も欲しいなぁ~


 味噌は、粟で作ったのが前世の米味噌っぽくなったから、これを使って‥‥


 ちょっと味 柔らかくしよっか‥‥よし麦味噌も少~し混ぜとこ。


 そこに水飴を少し入れて、お酢を‥‥


‥‥このお酢、色が濃いのはまぁいいとして‥‥ ちょっとクセが強いだよなぁ‥‥

 前世のモルトビネガーの感じを三割増しにしたような、素朴っていうか、ワイルドっていうか‥‥‥


 味噌でごまかしきれるかなぁと頭を捻っていたとき…… あるものが目に止まった。




 天プラのときにも使った、材料が何なのか解らないけど とりあえず植物性らしい油‥‥



‥‥中身がよくわからない割に、いい値段してたよなぁ………


 そういえばトイヴォネンさんに注文したとき油としか言わなかったから、ラードみたいのが来たらどうしようって、後でかなり焦ったっけ………



………これも入れて、ドレッシングみたいにしたら何とかなるんじゃね?



‥‥よし、それでいこっ。

 ついでに味噌を醤油に取り替えたのも作ってみましょっか………




……………




「…………なぁ流石にそれはどうかと思うんだが‥‥」


「?……え~と………何‥‥?」


 じいちゃんが珍しく苦言を呈してきた。えっちょっと待って!自分 なんか変なことした!??


「………花‥‥食うのか?」


‥‥あぁ~~~そういうことかぁ~~!!

 こっちじゃあ お花食べる文化が無いのかぁ~~!!

 まぁ前世でもそう無かったけど!!!



「………ぇえっと‥‥‥かわった色の葉っぱだよ‥‥‥?」


 だよ!?どっちも食物繊維がいっぱいだよ!!?お野菜認定でも不思議じゃないよ!??



「…………そういう発想か……… あの……お腹壊さないか?…………」


 あっ!体の心配してくれてたんだ!!ごめんねじいちゃん!!


「あっ大丈夫![毒物鑑定]シロだったから」


「…………[毒物鑑定]??」


 おっ???………………あっ!!!!あぁ~~~そういえば、見せたこと無い魔法の説明って、一個もしてないや!!!そりゃ心配もされるか!!

 多分それでこの光景じゃあ奇行もいいとこだもん!!!


「後でゆっくり説明するから、とりあえずごはんにしよ!」


 そう、胃袋の塩梅は心のゆとり。

 余裕がある時ゆっくり話しましょ!



 さてさて、カタクリとエンゴサクの花を、まとめて茹でた‥‥というかシャブシャブしたお浸しを、冷めないうちにお醤油で、


 先ずは個別でエンゴサクから………うん、口に含むと蜜袋から甘みがサーっと広がって、でも後を引かず上品で、残った花や軸の味は……

 あぁ~~儚いなぁ‥‥

 葉っぱもそうだけど、花の方は輪をかけて儚い‥‥



 続きましてはカタクリを………こちらは花の根本を噛みしめるとキュッと甘みが滲んできて、花弁はなびらや軸はやっぱり‥‥輪をかけてハンナリ‥‥葉っぱと比べて………

 何とも切ない味ですよ‥‥‥



‥‥どうだろ‥‥こりゃ味噌ドレッシングじゃ強すぎるんじゃないかな………

 まぁとりあえず、追加をシャブシャブして持って来て………


………やっぱりちょっと負けてるなぁ~~、あと 少~し甘さを付けすぎたかなぁ‥‥お花のいいところが沈んじゃってる‥‥


 もっと主張のある野菜なら合うだろうけどね?


 ということは醤油ドレッシングの方も…………やっぱり右に同じかぁ‥‥



…………あれ?……………ドレッシング??…………茹でなくてもよくね?



 そうだよサラダにしちゃえばいいや!!そっちの方が個性しっかりするだろうし!!



 色鮮やかなまま、その身を横たえる花々にサッとかけて、早速……………美味い!!


 シャブシャブしたのだとオイル分で個性が隠れてたけど、これならしっかり!!




 味付けをとっかえひっかえ楽しんでいると、不意にじいちゃんが‥‥



「なぁ、この茹でたのだけど‥‥、メンツユ‥‥だったか?それに付けたらどう‥‥だろうか?」



‥‥あっ‥そっか、めんつゆ‥‥


‥‥恐る々々、お浸しをつまみ、つゆにくぐらせて口に含むと………そうだよ前世でもお浸しにめんつゆってあったじゃん!そりゃ美味いよ!!



‥‥食に興味の無かったじいちゃんが気付いて、なんで自分は思い付かなかったんだろ…………なんか‥‥悔しぃなぁ…………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ