郷愁の砂
昨日、孫の好奇心をくすぐる為にちょっと魔法を披露した。そして狙い通り興味を引けた。
その数分後‥‥孫がまさか空を飛ぶとは思わなかった‥‥
飛行魔法‥‥
研究者に限らず、数多の者が挑み続け、
決して少なくない命が地に落ちて散り、
それでも尚 実用までの道には至らず、
…………今では挑む者が、命知らずの変人扱いを受けたりもする‥‥
そんな飛行魔法の完成に、ものの数分で至ってしまったのだ‥‥
うちの孫は、他の人間とは そもそもの発想が違っている。
その孫が今 目の前で、灰色の何かを音を立てて食べていた……………
「……………何食べてるんだ‥‥?」
「ざる蕎麦」
‥‥‥うちの孫は、時々妙なことをする……………
…………まぁ、変な臭いがしないだけ、マシな方か‥‥‥
◆◆◆◆◆◆◆◆
外で、作りたておかずクレープをじいちゃんと食べた翌日のこと‥‥
昨日残った生地をまとめて焼いておいたので、朝ごはんは それこそ昨日の続きの様なメニューでこなし、
食後、自分はとある食材とにらめっこしていた………
昔風クレープを作った残り………多めに挽いた蕎麦粉‥‥‥
‥‥うん、麺切り包丁が無いから作れないと思ってたけど、うまくすりゃ…………何とかなるかな?
…………よっし作ろう!!!今日のお昼は冷たいお蕎麦だ!!せいろ三枚くらいいってみよう!!!!
先ずはやっつけでめんつゆ仕込んでっと………鰹節はないから燻製肉で代用して…………
ではではボウルに蕎麦粉と、つなぎの小麦粉を………二割くらい?
そこに ある程度水を加えて、指先立ててワーーっと混ぜて………
いい感じにポロポロってしてきたら、もうちょっと水足して混ぜて………
よし!こっから気合入れてこねて行きましょ~~!グッグッと体重を程よく掛けて………纏まったら空気を抜く感じでギュッギュッと………おっ、ツヤ出てきた。じゃあ尖らせましてっと……そこを上からギュ~~っと潰して‥‥うん、いい感じ。
さて、お次は伸ばしっと‥‥押し麦作るローラーで慎重に…………
うん!後は畳んで、ガイド代わりに板切れ当てて、ナイフで丁寧に引き切って…………
よ~し出来たぁ~~!!
早速茹で‥る前に、山菜の天プラも作りましょっか!!…………でも卵がないんだよなぁ~…………チーズでいっか。
…………蕎麦を茹でる久しぶりの香りに、お腹と喉を鳴らし‥‥
仕上がっためんつゆに 天プラ、お皿に盛った蕎麦を食卓にセッティング‥‥
あぁ~~前世以来のお蕎麦だぁ~~………
早速数本 箸で手繰り、先ずは何も付けずにゾルバッと…………
…………はぁ~~‥‥鼻から抜けるこの香り…………
あっヤバイ、ちょっと泣きそう‥‥‥
前世の記憶と郷愁にどっぷり浸り、さぁもう一箸と思ったその時、不意に…………
「……………何食べてるんだ‥‥?」
じいちゃんの声が届いた。
「ざる蕎麦」
‥‥あ!ヤバイ!!ボーっとしてた!!!ざる蕎麦なんてこっちの本じゃ見たこと無い!!!
まずい、何とか取り繕わないと………ぇえっ~~と………ザルがなくって皿に盛ってるから‥
「あっ、えっと‥もり蕎麦?」
あっ!いやそういうことじゃない!!え~~っとえっとぉ‥‥‥
そうだ!!天プラも添えてるから‥
「いやっ!‥あ~っと………天せいろ?」
イヤ余計怪しまれるよコレ!!材料の名前無くなっちゃってるし!!!!
まいった~~~自分でもビックリするくらいパニックになってる…………
「………一口貰っていいか?‥‥」
「…………へ?」
…………まさか興味を持たれるとは思わなかった‥‥
こちらの戸惑いを余所に、じいちゃんはフォークで蕎麦を一本手繰って口に運び…………
「…………気持ち良いな………………」
…………え?




