ツミ クサ アソビ
あれはいつだったか………
孫が誰に聞いた訳でもなく、麦から蜜を生み出した‥‥
確かにそういった物は存在していた。
‥‥‥しかしそれは、どこかの家系の秘伝だったはずだ…………
その手伝いの最中、たしかそちらは大麦だけとの噂だったと 雑談で言うと「あっ、そりゃそっか」などと言い、
翌日あっさりと大麦のみで蜜を成功させ、
更には他の穀物からも次々と生み出していった…………
そうやって生み出した蜜を、何故かそれぞれ分けて出荷し続けている。
どうして混ぜてしまわないのか聞いたことがあったが、「いや、選べた方が嬉しいだろうし」と言った‥‥
(出荷先で混ぜられてしまうのではと思ったが‥‥黙っておいた‥‥)
うちの孫は食べ物に異様に拘る。
時々、本当に自分の孫なのか疑問が浮かぶ程に‥‥
自分は銀髪なのに、孫は夜空の様な黒髪なことも相まって‥‥‥
あの子は将来、どんな道を歩むのだろう
‥‥まぁどの道を選んでも、あの調子で 予想外の事をやり続けてゆく気はするが。
しかし周囲はどう思うか。きっと快く思わない者もいるだろう。
しかもその数は少なくない気がする。
正直、衆目に晒される場からは遠ざかっていてほしい。
だが、いつまでも 狭い世界に閉じ込めて措くのもどうかと思う。
小さな体を言い訳に、今までは止めていたが、
一歩遠く、外の世界に踏み出すことを許した。
………………未だに体は小さなままで、心配だが‥‥‥
うちの孫は、いささか成長が遅い気がする………………
◆◆◆◆◆◆◆◆
………………
遂にきた
やっときた
とうとうきた!!
ようやく一人で山歩きしていいって言ってくれた~~~!!!!
今までも じいちゃんと一緒に山に入ったことはあったけど、
間伐、柴刈り、焚き付け拾い、落ち葉掻き、
正直忙しくて、時間も、何かを持ち帰る荷物の余裕もなかった‥‥
が!!やっと自由に歩き回れる!!
そんな抑えきれないワクワクで、背筋をゾワゾワさせながら……………
今まさに、薪の火で味噌をあぶっていた。
短冊くらいにした板っ切れに塗り付けて。
季節は春、新緑ようやく萌え出づる頃…………
山菜の季節じゃ~~~~~!!!!!!!!
いやぁ~~じいちゃん食に無頓着だから、任せてると、麦粥と 干し肉か薫製肉とカブの類の汁物が延々続くんだもん。
特に野菜類が、カブ ルタバガ ビーツだけなのはキッツイ。流石に飽きる。
なにせ前世はニッポン人。
食の多様性じゃ、他国も驚くお国柄。
も~~~~ホントどれだけ焦らされたことか!!!
余りに期待が高ぶり過ぎて、
食べた成分が体内でどう振る舞うか調べられる[毒物鑑定]と名付けた魔法を、夜も寝ないで編み出した。
山菜狩りのついでに、摘み草遊びも楽しみましょってことで、ただ今 焼き味噌を作ってた。
遠火に当てて………仕上げに近づけて焦げ目を付けて………ホイ出来た。
もう一枚、おんなじ形の板切れで挟んで縛って…………
皮の水筒に豆のお茶を詰めて、
ナタとナイフと布袋……………
皮手袋をポッケに入れて………
…………さあ!お出かけだ!!!
なんかもう待ちきれない!
とりあえず、手近にあったクローバーの新芽を、焼き味噌になすって一口…………
うん!クッと青臭い!
もうちょっと味噌付けたほうが良かったかな!
コイツを肴に、お茶を一献………
…………ふぅ‥‥‥次行きますか!
ちょっと道を歩くと………おっスミレ!
さて、若葉を摘んで…………
うん、完全に味噌に負けてる。
そのまま食べると…………う~んクセはないけど味もほぼない。スッと爽やかな香りはあるけど…………パンチがないなぁ‥‥まぁ お浸しか、サラダでいけるかな?
お茶をキュッと呷って………よし!次々!!
膝を伸ばして数歩歩けば…………おっ、カタバミ!
プチリと千切ってお味噌でパクリ…………
…………おぉ~~~酸っぱい酸っぱい。コイツはまたオツな味ですな。
おっとナズナもありますな。新芽をつまんでそのまんま…………
おっ、チリッと辛くて少~しの青みとほろ苦さ‥‥うーん春の醍醐味ですなぁ‥‥
さて、お茶をクイリと‥‥あっ、もう半分もない…………参ったなぁ‥‥家に戻って詰め直してこよ…………
てか、こんなペースじゃ山菜狩りまで辿り着けないなぁ‥‥摘み草遊びが過ぎた………もうちょっとペースアップしないと…………………
再出発後……………流石に道端は無視して、ナタを片手に藪を漕いで行く。
ひらけたとこに出ると……………まぁ どこにでもあるわな、シダの類は。
ワラビ、ぜんまい、おっこれコゴミかな?
ポキリポキリと袋に詰めて、ついでにコゴミをシャクシャクと…………
うん、気持ちいい歯ごたえから段々と、ヌメッとしてきてほの甘く、穏やかで侘びた風味‥‥
取りすぎない程度で、さて次はっと…………
……………う~ん‥‥細い木の先に、ポワッと芽吹く木の芽‥‥
‥‥木の肌はウコギの類っぽいけど‥‥[毒物鑑定]は大丈夫っぽい‥‥
一応取ってくか。タランボとかに似てればいいなぁ~~。さぁ次々…………
…………ぅわ~お‥‥イラクサが ボンガボンガ生えとる。
コイツは流石に素手じゃあキツい、皮手袋をはめて採取を……………
…………イッテ!!ほっぺたにこすっちゃったよ‥‥
…………あぁ~~段々ヒリヒリしてきた…………ツイてねぇ~~‥‥
さて近くになんか‥‥あっ、アザミ発見。
コイツは根っこも頂いてこ…………
ん?あれ??
乾いたとこに な~んか見覚えのある細~い葉っぱが…………あれアサツキじゃね?
念のため[毒物鑑定]を‥‥
…………うん、食べても大丈夫っぽい。
ちょうどいいや、ひと休みついでに、摘み草と洒落込みましょ
と言っても、根っこをほじくるんだけど‥‥
泥を落として 根っこをひと皮剥いて、焼き味噌絡めてコリコリシャリシャリ…………
…………う~ん新玉ねぎと言うか エシャロットと言うか‥‥
葉っぱの方はしっかり葱‥‥
こりゃ料理の幅が広がるな~~
持って帰って植えよ。
お茶で一献。しっかり楽しんだら………
さって、沢に降りますか。
しっとりとした土がフカフカの斜面を下っていくと…………艶やかで幅広の 丸い葉っぱが‥‥‥
慌てて[毒物鑑定]を駆使すると、
うん、なんか刺激的
千切って食べてみれば多少のエグみの後に……………おぉ~~~ツーンときたツーンときた!!!!
間違いない!!こりゃ山ワサビ!!!
この発見はデッカイわ~~!!!!
さて、水場まで降りてみれば…………
丸くて、大きくて、蝋を塗ったようにツヤッツヤで、やけに緑色の濃い葉っぱ‥‥
フキ‥‥っぽいけど違うよなぁ‥‥ヤチブキ…………か?
…………まぁ持ってくか‥‥[毒物鑑定]じゃ大丈夫みたいだったし‥‥
他には…………あっ!タネツケバナ?
ちょいと若葉を失敬して一口…………
…………うん!カラシ菜も真っ青、ピリピリ辛い!!
生でもいいし、サッとお湯にくぐらせてもいいね~~
あら、ユキノシタっぽいのもあるや。
帰ったら揚げ物ですな。
……………さって、そろそろ復路にしますか、
日当たりの良いとこ通って来たから、戻りはちょっと暗いとこいこっと。




