白くてトロリと染みわたる
うちの孫は時々妙な事をする
最近は 麦の糠と一緒にカブを茹でて、雪降る野外に、串刺しにして干している…………
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小雪舞う中、切り干し大根もどきと、寒干し大根もどき(それぞれ、カブ、ルタバガ、ビーツ)を仕込んで帰ってくると、
じいちゃんが軽く悩んでいる姿が、目に飛び込んだ。
そりゃそうだ。
去年起きた麦類の大暴落が まさかの今年も継続中。
しかも今年も麦類は例年通りの収量だったことに加え、
自分が挑んだ間作の小麦が なかなかの豊作。
おかげでだぶついて、納屋からあぶれた麦らが、物置場はおろか家の中にも、山となって積まれている。
不良在庫である。
そんなもんだから じいちゃんは、どこからか持ってきた臼を使って粉にして、
小麦粉を水で溶いて焼いたものを頻繁に食卓に乗せている。
今まで、小麦は確かな収益だから 食卓には乗らなかったのに、エライ変わりようである、馬の飼料にすらなっている‥‥
が、何しろ売るほど作ってるんだから、ウチらの胃袋でどうにかできる量じゃない‥‥
ホント来年はどうしたもんか‥‥
……………今日はお台所を貸してもらった。
卓上に並べたメニューは、
薫製肉と一緒に、寒干しのときに出たカブ類の皮や葉を干したのを煮込んだ ブイヨンっぽい出汁を、
炊いた大麦にビーツの味噌漬けを乗せた上からシャバシャバかけて、塩で味を整えた、麦のお茶漬け風。
薫製香のおかげで何処となく鰹出汁っぽい。
先の出汁で溶いた小麦粉に 下ろしたルタバガとおからを加え、千切りのカブや葉をザックリ混ぜ込み、
戻した干し肉のスライスをフライパンで焼き、その上から掛けて焼いた、
まあ何ていうか お好み焼きっぽいもの。
干し肉で作った肉味噌をソース代わりに
先の出汁に 醤油とカブで作った汁物に、水で固めに溶いた小麦粉とライ麦粉のミックスを、スプーンでサーッと横に動かしながら流し込んだ スイトン。
麦類大活躍の面々である。
ついでにおから納豆 (出汁醤油ならぬ)ブイヨン醤油も用意したけど、じいちゃんは手を伸ばさなかった。そうだろうとは思ってはいたけど‥‥
このところ じいちゃんが作ってくれるご飯は、
麦粥と、クレープっぽい生地で何かを包んだものが続いたので、変化を付けたくなって‥‥
‥‥包丁を持つ度に心配そうな視線を感じるので、やりにくかったけど‥‥
今日が初めてって訳じゃないじゃん…………
「…………ご馳走様」
「あっじいちゃん、甘いのって大丈夫?」
「大丈夫だけど‥何?」
「ちょっと待ってて」
それを確認した後、暖炉裏に掛けてある鍋を持ってきた。
そしてお鍋の中身を木のカップに注ぐ。
トロリとした白い液体‥‥
甘酒である…………
……………それは、今年の醤油の麹を仕込み終わった時、ふと思ったことが始まりだった。
(…………あれ?自分の体の代謝スピードが上げられるんなら‥‥麹でもいけるんじゃね?)
やってみたらアッサリ成功‥‥
‥‥寝ずの番は一体何だったのか……………
ちなみに 塩水加えてからの熟成にも使えるか 試してみたけど………… 色付きと、塩気のカドが取れるのは早くならず、そんなに期間短縮にはならなかった。
そういうとこは融通が利かないんだなぁ魔法って‥‥‥
でも麹の扱うすべが一気に広がったので、色々と遊んでみることに。
その第一段がコレ。
炊いた麦粥に水を入れて冷まして、麦で作った種麹をザバッと入れてマゼマゼ………。
後は鍋を布でくるんで保温。暫くほっときゃホイ完成。
熱々で飲みたいので火に掛けておいて…………
欲を言えばショウガも入れたいとこだけど‥‥
じいちゃんは訝しそうな顔で、恐る恐る一啜りすると、
「…………甘いな‥‥」
こちらの顔を見てそう言った。
そりゃそうだよ そういうもんだもん。
「甘いもんは久しぶりだよ、なんたって高いからなぁ‥‥ところでどうやって作ったんだ?」
じいちゃんに作り方の説明をしている最中、先程の言葉の一部が 脳裏にフッと浮かんできた
…………そっか、甘いもんって高いんだ‥‥‥




