萌えてよ、ちいさな花
「さって‥‥やりますか!!」
物置小屋を片付け、広めの机を前に、一つ気合いを入れた。
いよいよ手探りの、醤油作り開始である。
先ずは、仕込み前の大豆の味噌玉と小麦を、それぞれ茹でて混ぜて………
…………ダメだこりゃベチョベチョ過ぎる!!!
あわくってまだ茹でてない味噌玉を、幾つも棒で砕いて混ぜ込んだ。あ~焦った~~
でも慌てて砕いたから大きさがバラバラ‥‥大丈夫か?これ‥‥
………うん、大丈夫じゃないよなぁ‥‥もうちょっと揃えよう……大豆の粒くらいでいいかな?
……でも突く加減を間違えるとすぐ粉々になって、なかなか難しい‥‥
次からは小麦の方で何とかした方が楽だなこりゃ。
大豆の量が増えちゃったので、急いで固めに炊いた小麦を混ぜ込んだ。
目方が予定の5倍くらいになっちゃったよ‥‥‥でもこれでそれぞれ半々ぐらいの量かな?
それをしっかりと
混ぜる
混ぜる
そりゃあもう てっっってー的に混ぜ込んで、均一に………なってるといいな……
後はコレをまとめて山にしといて、時々様子を見に来ましょ………………
………1時間………………
………うん、まだなんも変わってない……………
………3時間………………
………ん~~、まだ動きはなしか~~………………
………8時間………………
………だ~~~めだ全っっ然変化なしだ‥‥麹が全然醗酵してくれん‥‥‥
前世にあった種麹でも使えば違うんだろうけど、勝手についた天然もんだからなぁ‥‥いい加減眠くなってきた………
…………ん?待てよ‥‥雑菌のせいってことはないよな‥‥‥
…………確認出来ないかな、魔法で‥‥‥
体の内の菌とかは探れるんだから、目の前のコレでもいけるんじゃ…………
………お~~やっぱりできたかぁ‥‥
でも初めてだから、この状況が普通なのか異常なのか分からん‥‥
砕き残して転がっている味噌玉に同じ魔法を使って………
……ああ~これが麹かぁ‥‥
う~ん‥‥麹が一番多いし、
取り立ててほかの菌やらが多いようには見えないけど‥‥‥‥
一応ほかのは減らしておきますか。
これも体の中じゃ成功してる魔法だから、多分大丈夫でしょ。
魔力を通せば……うんできた。
後はなんかあるかなぁ…………
‥‥気温が低すぎる……かな?
流石に物置小屋で火を焚くわけにはいかないので、ここも魔法で対応。
ホント魔法は便利でいいや。
ギィーー…
「おーい そろそろ寝ないか‥‥」
そうでした、眠いんでした‥‥‥でも温度が………
あ~~箱かなんかに入れときゃよかった、そうすりゃ布かなんかで包んでおけたのに‥‥
しゃーない。鍋にお湯張って、回りに置いておきましょ。
まぁ、気休め程度だけど…………
…………そんな感じで何日目か………
様子を見に行き、手を近づけると……あらあったかい。
どうやら何とか醗酵が進んだみたい。
魔力を通してどんな感じか見ると、真ん中のほうの麹の元気がない、こりゃ崩した方がいいかな。
あっ、少しダマになってる、これも潰してっと………
崩してすぐは麹の元気がなかったけれど、すぐ盛り返し ドンドン温度が上がっていく。
‥‥‥って言うか上がり過ぎじゃね?
なんかほかの菌が元気になってきた……
‥‥これって納豆食べた後、体内チェックしたらお見かけするやつ‥‥‥納豆菌……か?
こりゃいかん、魔法で風を作って、手でも扇いで、ついでに冷気も作って、何とかいい感じの温度をキープキープ…………
殺菌魔法も使って…………
しばらくすると、また中のほうの元気がなくなってきた。こっちは温度とは関係ない反応なのかな?
ちょっとほじってみると、あら またダマが。ひょっとしてこれ? 空気を含ませたほうがいいのかな? また潰しとこっと…………
…………うん、またすぐ盛り返してあったかくなってくる。
‥‥‥と言うか、すぐ熱くなり過ぎる‥‥
こ~りゃあ付きっきりで冷やさないとダメかなぁ?冷ましやすいように広げて‥‥今日は寝ずの番かなぁ‥‥‥
…………案の定そうなってしまうと じいちゃんに、そりゃあもう大層心配された。
ホントごめんね‥‥
そして手伝ってくれた。ありがと じいちゃん‥
………………翌日中程、麹が、びっしりと咲いていた。
よかった~~ちゃんと萌えてくれたぁ‥‥
それでは今度は塩水と合わせる。
なんぶん初めてだから、塩分濃度を高・中・低、それぞれの水分量の多め・少なめの、6パターンを仕込んでみよう。
さてこれからは、長い長い 醗酵と熟成の期間ですな。
ヘンな菌がわいてきたら魔法で退治して、
なんかが浮いて固まってきたら砕いて沈めて、
醗酵の泡が出てきたらたまにかき混ぜ、
落ち着いてきたら、塩漬けしといた木の葉っぱを、表面にピッタリ貼り付け空気をカット、
殺菌魔法がモノをいったのか、6パターンともうまくいった。魔法バンザイ
いい感じに色も濃くなって………あぁ‥‥‥遂に待ちに待ったそのときがきた…………
いよいよ完成の時………袋に入れて搾れば‥‥‥‥
………赤みがかった黒い滴‥‥鼻をくすぐるあの香ばしい香り‥‥
あまりの懐かしさに涙が出そうになる、醤油の姿がそこにはあった…………
せっかくだからとじいちゃんと一緒に、火入れ前にかけて食べた冷や奴と、バター醤油ステーキの味は、三生先まで忘れないだろうなぁ……




