閑話・孝行な孫(領主ガイ・サトー)
お祖父さまはもう長くないかもしれない。
専属で回復魔法のできる者を付けたが専門職の神官の魔法さえ
効き難くなってきたからなぁ。
若いころから苦労をされて妻や息子、娘を失ってそれでも
領主の義務を果たされてきたのだ。
あとどれくらい一緒に居て下さるかは分からないがお望みはできる限り
叶えて差し上げたい。
戦死された父の代わりができるかどうかは疑問だが……
ところが突然現れた魔法使いの少年!
彼は救いの神だった。
彼の回復魔法はよく効いた。
お祖父さまは彼は同郷の者だと言う。
召喚者なんだろうか?
お祖父さまは召喚者だ。
勇者を召喚したのに只の魔法戦士だったせいで色々不快な目に会わされたらしい。
それでも何度も魔獣を退治して貴族・王族を救助したりした。
おかげで孫の私はココで領主を任せられている。
元の世界ではただの庶民だったそうだが教養は高いしなにより
勇者に負けないくらい勇猛果敢だったと引退した執事が言っていた。
まあ、魔法使いらしいあの少年はそれほど勇気がありそうには
見えないんだが。
だが、魔法の腕は大したものだと思う。
商人の報告は目を疑うものだった。
そこまでの能力の者は戦時中でもいなかっただろう。
魔法を普段の生活にもっと使えるなら皆ももっと楽になる。
あの発動方法はもっと普及させてもいいと思う。
トロールの群れが出て来た時はもうココで終わりかもしれないと
覚悟したが姪は助けたかった。
トドメこそドラゴンだったが彼がほとんど片付けてくれたようなものだ。
本当は彼に収入のほとんどをやるべきだったのだが一頭分すら
受け取ろうとしなかった。
孤児院に寄附したいと言うとは思わなかったね。
寄る辺の無いのは自分も同じ……か。
お祖父さまが気に掛ける訳だ。
昔の自分と同じと思われているのだろう。
宰相閣下にも姪の婿殿にも好印象で王都の滞在を終えられた。
クローバー君様々だな。
専属になってもらうべく頼んでみたが断られた。
「得体のしれない人間を専属で雇ってるなんてサトー家の
ご迷惑になるかもしれませんし。
オレ、もう少し自分の事が分かってからそういうことは
考えたいと思ってるんです」
まあ、それほど気にしなくてもいいと思うんだが……
大体我が家にしても領主だって威張っててもお祖父さまの代で
貴族の端っこに入れてもらった新人みたいなものだ。
代々貴族の方々にしてみれば得体のしれないヨソ者だからな。
だがこちらへの気遣いも入っているのはちょっと嬉しい。
なので専属はいずれということでお得意さまにしてもらう。
今もかなりの魔法使いだが他にもスキルを持っているようだ。
専属だろうがお得意さまだろうが確保は決定! だな(笑。)
まあ、そういうことを置いておいてもお祖父さまは彼のおかげで
なんだか少し元気になられたようだ。
姪の結婚式の映像を喜ばれた。
お祖母さまの話など以前お伺いしたのは何時だっただろうか?
少しでもお元気になられたのがとても嬉しい。
もうほとんどをベッドで過ごされてはいるが気持ちも記憶も
しっかりされていると分かったし。
クローバーは幸運を呼んでくれると言っていた。
少なくともお祖父さまには彼は幸運だったろう。
まあ、我々にも幸運が来たのは否定できないがね。




