~黒風~ 王妃の思惑?
日が傾き始めた時分。秋に近づく乾いた冷気が強くなり始める。
エクセルカ・リヴィーナ二世は二人の従者を連れて、〔エクセンプラール〕の甲板に立ち、横たわる〔アル・ガイア〕を眺めていた。特注のアフタヌーンドレスを着て、顔を隠すレースのかかった帽子をかぶり、手には肘まで伸びた長手袋をしている姿は着飾った人形に通ずる愛玩的な雰囲気があった。
「王妃さま、危険ではありませんか?」
「なぜです?」
従者の一人、年かさのいった鼻の高い女性が怯えた様子で言ったので、エクセルカは条件反射で問い返した。
「このような機械は見たことも、聞いたこともないのです。御身に何かあってはわたくしども、どうしたらよいやら……」
もう一人の従者、小柄でまだ幼さを残す女性がいう。彼女の視線はちらちらと〔アル・ガイア〕の凶悪な顔を見て、怯えたように胸の前で手を組んでいた。
しかし、エクセルカは臆することなく、〔アル・ガイア〕の張り出た肩の装甲に精一杯背伸びをする。ちょんと指先がふれて、その冷たい感触が残った。
従者二人が慌てて、ふらつくエクセルカのそばによる。
「ほら。何もないでしょう?」
エクセルカが茶目っ気を含んで返すと、従者二人は顔を見合わせて小さく肩を上下させる。王妃様の好奇心の強さは見境がない。それに振り回される彼女たちの心労は半端ではない。
「しかし、この機体に触れたから、女の子がアーデル・ヴァッヘの操縦者になったとお思いになりませんか?」
年かさの従者が小さい孫娘を諭すように言った。
「見初められたのよ」
「操縦者が、でございますか?」
小柄な従者が小首を傾げる。
対して、年かさの従者はまさか、と鼻を鳴らした。奉公人としてまだ日の浅い小柄な従者は、リヴィーナ二世王妃の変わった趣味のあしらい方を知らない。精進が足りない、と心のうちで愚痴る。
エクセルカ・リヴィーナ二世の酔狂さというか、詩人めいた珍妙不可思議な言い回しを真に受ける奉公人は数少ない。まだ十代にも満たない王妃様の空想遊びだと思うほうが、自然であった。
哲学者や神学者、芸術家、作家、戯曲家に作曲家を集めて支援している姿を思うと、子供の道楽の極みといえる。その延長で〔アル・ガイア〕をコレクションに加えたい欲が出てきているかもしれない、と邪推してしまうのも無理はない。
「機械かも、しれませんわ」
エクセルカが胸を張って答えた。
それには小柄な従者がクスリと笑い、年かさの従者は厳しい視線を向ける。
「王妃様、あなた様はそうやっていつも私たちを困らせるのです。お言葉を選んでくださらなければ、立派な淑女とは言えません」
「あらあら。では、そうのように」
年かさの従者のいうことを、エクセルカは行儀よくドレスの裾を持って軽く会釈して見せた。
もちろん、エクセルカにとって礼儀作法など上っ面のものでしかない。が、上に立つ者の務め。領土を守り続けた両親も礼儀作法を重んじて、臣下たちにもその心得を示していた。だから、礼儀作法をないがしろにはしてはいけない、と頭の中で反芻させるのだ。
年かさの従者は王妃の作法に小さく頷いて、胸をなでおろす。
「そうしていただけると、マナーのレッスンを増やさずに済みます。これからもリップルトン領の王妃として、常に立ち居振る舞いにはお気をつけて」
口酸っぱくいう従者にエクセルカはころころと笑って返して、〔アル・ガイア〕の輪郭をなぞるように移動する。歩きにくいヒールのついた靴でも彼女の歩みは崩れることはなく、優雅に歩いて見せた。
その所作は自然と注目を集める。
調査を切り上げようとする騎士たちが、小さな王妃の姿を目で追いながら道具をまとめる。好奇心旺盛な子供の戯れと思って、特に咎めるようなことはしない。逆に、彼女がいじりまわして何らかのアクションを機体が示してくれるなら好都合である。
エクセルカは〔ローテァ・ケーファー〕に渡された板の上を行く騎士たちの往来を一瞥して、ふと〔エクセンプラール〕のアイランドのほうへ視線を向ける。
ちょうど、甲板に出るドアが開いて二人の騎士が一人の女性、ミト・ハルルスタンを連行する姿が見えた。右足を引きずり、不服そうに口元をとがらせている。
「…………」
エクセルカはミトを見て、妙な既視感を覚える。彼女との面識がないことはわかっていたが、何か近しい、懐かしい香りを嗅ぎ取った感じがした。
「いかがなさいましたか?」
年かさの従者はエクセルカの視線の追って、ミトの姿を一度確認し、エクセルカへと戻す。
と、エクセルカは何も言わず、優雅にミトのほうへと歩み寄る。
「王妃様。お待ちくださいまし」
小柄の従者が咎めるが、エクセルカはその歩みを止めない。
逆に騎士たちのほうが動きを止めて、悠々と近づいてくる彼女に緊張した。
ミトだけが小首を傾げて、ドレスで着飾った女の子を眺めた。〔エクセンプラール〕に乗り合わせている子供とは一線を逸した、高貴な雰囲気はその身なりからわかった。
残り数歩と距離が迫ったところで、騎士たちははじかれたように我に返りミトの頭を押さえつけて跪く。
「リヴィーナ王妃。何か、御用でございましょうか?」
「王妃?」
ミトは押さえつけられる力に対抗しつつ、そうつぶやく。唇が甲板に触れそうなほど近づく。
と、彼女に視界に丸い小さなつま先がかろうじて見えた。
「ご婦人をそのようにするのは、騎士としていかがなものでしょう?」
「はっ。ごもっともなお言葉でございますが、この者はこの艦の責任者ですゆえ――」
「ゆえに暴虐を行うとは騎士の致すことではありません。その手をどけなさい」
幼い声で毅然とした言葉が放たれて、騎士二人が困惑する。
まだ年端もいかない女の子だ。お飾りの王妃ではなく、そのための修行を積んでいる才女であると認識を改めた。
ミトもまたエクセルカの言葉には驚かされる。
「子供のいうこと?」
率直な気持ちが口からこぼれる。しかし、演習をする〔カヴァレリー・ポーン〕の巡回音の中にその失言は踏みつぶされる。
騎士たちは言われた通り、ミトを押さえつけるのをやめる。
「お顔を見せてくださらない?」
「え、ええ……」
ミトは目を泳がせながら、顔を上げる。不自由な右足をべったりと甲板に着けて体勢が不安定であった。フラフラしながら状態を起こすと、目線の高さにしゃんとして立つエクセルカの顔があった。腕を伸ばせば届きそうなほど近く、両手で彼女の小さな首を締め上げるなど造作もない位置である。
しかし、そのような邪念などミトの心のうちに沸き立つはずもなかった。
「お名前は、なんて?」
エクセルカの無垢な笑みが帽子のレース越しから向けられては、どうしようもない。気品があった。無邪気であった。そのものを手にかけるなど、下衆の極みと言えるだろう。
ミトは目をしばたたかせて、おずおずと口を開く。
「ミト・ハルルスタンです。えっと、どこそこの王妃様……」
最後のほうは声をしぼませたが、聡い従者二人が鋭い視線を射る。
しかし、エクセルカは温和な感じで手を前に組んで、しゃんと背筋を伸ばす。
「あらあら、申し遅れました。わたくし、ここより北にありますリップルトン国領王妃をしております、エクセルカ・リヴィーナ二世と申します。お見知りおきを」
エクセルカはそっと手先を差し伸べると、ミトは迷うことなくその手を取って深々と首を垂れる。それは敬意のあらわれであり、彼女が礼儀作法をある程度心得ている証明でもあった。
「リップルトン国領王妃様。狼藉を働いたわたしでありますを、どうか慈悲の心をもってお許しください。こうして会えたこと、光栄至極」
ミトはエクセルカを王妃として認めて、恭しく言葉を並べた。仰々しく飾った羅列であるが、持てる教養をもって返答したつもりだ。
「あらあら……」
エクセルカはそう口にしながら、空いている手を顎に添える。
北のはずれの町で孤児院をしていた女性にしては、妙に上流階級の作法に詳しいのはおかしなことだ。それをものにして、気品を漂わせていることもエクセルカの好奇心を沸き立たせるのに十分であった。
「あなたは……失礼ですが、以前はどこに住んでいましたか?」
「それは――、申し上げられません」
エクセルカのひっこめる手を目で追って、顔を上げるミト。紳士な瞳がエクセルカの大きな瞳をのぞき込む。
「では、よき家のご令嬢であったとお見受けいたします」
「それもまた偏見にすぎません。わたしはパン焼きの家の末娘として生を受け――、出奔した身です」
エクセルカは彼女のお茶を濁すような言い方に、何か複雑な事情があるとみた。それに不自由な足をしているところを見るとなおさら、ミト・ハルルスタンの過去には辛い体験があったと思いたい。
「王妃様、これ以上の会話は……」
騎士の一人が不安そうにミトとエクセルカを見比べていう。
「よいのです。彼女はこれまでの苦難の道を、機知に富んだ操艦技術で切り抜けたと耳にいたしました。それは多くの人が彼女に付き従ったためであり、こうして生き残ったことで証明されるかと」
「それもまた過大評価です! わたしはただ、愚行を重ねただけです」
ミトは取り繕うように言葉を発した。
「いいえ、そんなことはありませんわ。あなたには人をまとめるセンスを感じます。わたくしはぜひとも、あなたと議論を交わしてみたいのです」
年かさの従者はエクセルカの落ち着き払った声に鼻の穴を大きくして憤慨する。
「罪人の議論などとあってはなりません! それが国をお納めになるお方のいうことですか? いいえ、そのようなことはあってはなりません」
そもそもまだ子供だ。ミトから何を吹き込まれるかわかったものではない。一過性の好奇心で将来危うくなるような知識を飢えられては、たまったものではない。
小柄の従者は押し黙って、しかし、その視線は反対の意思を含めた。学の浅い彼女では、エクセルカの話を理解できるはずもなく、また罪人の主張を素直に受けてはいけないと直感的に思うばかりである。
と、エクセルカは従者たちに振り返り毅然とした態度で言い放つ。
「悪から学ばずして、善行を行えますか? 罪を認める者は、先人の教えと等しく貴いと知りなさい。正義を育てるということは、自らが悪行をなし、立ち向かい、打ち勝つということ。無知なる物はそれを礎とせよ――」
ミトは驚いて、彼女の小さな背中を凝視した。
なんと理知的なことをその桜色の唇から発せられるのだろうか。東洋の山奥にいる賢者や、西洋の海を臨む賢人と相対しても、彼女は議論を交わすのではないだろうか。それくらいに知慮に富んだ神童と感じる。
騎士たちも思わずうなって、幼い王妃の言葉を傾注する。
すると、エクセルカはほほ笑んで茶目っ気たっぷりに肩を上げる。
「と、哲学の先生がおっしゃっていたもの」
その一言で、ミトたち大人は膨らんでいた期待感が抜けて、大きく息を吐き出す。
無垢な好奇心は時に大人の思考を上回る奇抜さがある。彼女のは好奇心旺盛にして、秀才と呼ぶにふさわしいだろう。
「それを確かめたいのです」
エクセルカは続けた。
年かさの従者は見上げてくるエクセルカに対して、どうにも頭が上がらず、今一度大きく息を吸って深く息を吐き出す。
「わかりました。騎士殿」
「は、はい」
年かさの従者の声に、ミトを連行している騎士二人が慌てて返答する。
「申し訳ございませんが、お時間をいただけますでしょうか?」
「ええ。しかし、わが艦のほうに連れてくるようにと命令が下されています。そちらのほうでしたら、お時間をお作りいたします」
騎士たちの物言いは恭しくも、どこか緊張した面持ちであった。
エクセルカはそうした彼らの苦い表情を見て、情動を敏感に察知する。
「バレットには、わたくしから言っておきます」
「わかりました」
騎士たちの返答が軽くなって、ミトの両脇を抱えて立ち上がる。
ミトもそれに合わせて立ち上がる。
「そうです、そうですっ」
すると、エクセルカが何かを思い出したように嬉々とした声を上げて手をたたく。
「ハルルスタンさん。この後に、修道騎士団の演習がありますの。よろしければ、ご一緒しませんか?」
それには従者と騎士が辟易した表情を浮かべる。どこまでも好奇心の赴くまま、良かれと思うことがすぐ口に出てしまう性質は対応に困る。
ミトも一瞬面食らったが、冷静に返答する。
「まことにうれしいお誘いなのですが、なにぶん罪人でありますから、騎士団の意気軒昂とした場に出るのは憚られます」
「そうですか……。では、わたくしの借りていますお部屋でお待ちなって」
「はい。謹んで」
ミトはそういうと縛られている手をおなかに押し当てて、それを支点に体を傾ける。
年かさの従者はその細かい所作に、顎を上げて感心する。主人に傅く奉公人、あるいは貞淑な婦人を連想させる動きであった。
エクセルカもミトの誠意を受けて、小さく頷いた。
「丁重にお願いいたします、騎士殿」
「はっ。リップルトン国領王妃様」
騎士たちは形ばかりに慇懃な礼を取ると、ミトを連れて接舷しているブリッジへと移動する。
エクセルカはその後姿を見送って、従者二人に目を配らせる。
「さぁ。この船をもう少し見学いたしましょうか」
そういってエクセルカが歩き出すと、従者二人はとにもかくにも彼女の後ろについて粛々とついていく。
そして、ミトは一瞬肩越しにその後姿を見た。
「好奇心は猫も殺す、なんてことにならなければいいけど……」
口の中でそうつぶやき、小さな王妃様の身を案じているミトであった。
* * *
〔エクセンプラール〕を闊歩する騎士たちの姿を見ては、カーヴァル・イルスロットはむすっとした表情を浮かべる。
修道騎士団が我が物顔で歩いているのはお門違いに感じられたし、フライハイトの関係者の洗い出しや、夜盗を行ったのではという疑惑を究明するために右往左往しているのも目について気に食わない。
カーヴァルたち、〔エクセンプラール〕の乗員は下層のペイロードスペースに押し込まれており、活動できる空間を制限されていた。開け放たれた後部ハッチの向こうから冷たい風が吹き込んでくる。
「まったく、なんでこうなるんだよ」
「そういうなよ。柾姉ちゃんたちが負けちゃったんだからさ」
「だからさ、上に行って機体を動かせば逆転できるって」
カーヴァルは二人の弟分に向かって扇動する。
艦首側の端に集められた木箱の山の中は騎士たちの巡回や注意もまばらで、少年たちにとってちょっとした隠れ家になっていた。ガラクタばかりを詰め込んだ木箱の山に、養鶏の小屋が放つ汚臭に騎士たちも近づく気が失せるというものだ。
「動かせるのか?」
「やってみなけりゃわかんないだろ?」
カーヴァルは根拠のない自信を示して、ふんぞり返る。
弟分二人もさすがに呆れて、ため息を吐き出す。
「これなら、修道騎士団のいうこと聞いてるほうがマシだよ」
「じゃぁ、ミトさんや柾姉ちゃんがどうなってもいいのか?」
「ぼくたちじゃ、どうにもならないよ。ちょっと考えれば、わかるだろ?」
弟分の一人が諦観気味に言った。
子供の自分たちが動いたところで、騎士たちを翻弄できるはずもない。それくらい勉強をサボっていた少年にでもわかる簡単な方程式だ。痛い目をあえて自分から受けに行くこともないだろう。
「それよりも、修道騎士団に入れるチャンスかもしれない」
「ああ、そうすれば騎士にも慣れて暮らしに困らないものな」
弟分二人は実に少年風な夢を抱いて、笑顔になる。
ここの騎士たちの対応は紳士的であったし、修道騎士団に入ることは憧れでもあった。語り継がれる騎士道物語を子守唄に聞いてきた男の子であれば、勇敢に戦いその武勲を讃えられることを妄想する。中でも『黒騎士と白騎士の物語』は一、二を争う人気であった。
しかし、カーヴァルは冷めた目で弟分たちを見て、耳の穴を小指でほじる。
「騎士って言ってもなぁ。なんか、気に食わない」
ふっと小指についた耳垢を吹いて、背後の木箱に背中を預ける。
町を焼き討ちされたことをまだ許したつもりはない。この第二十七聖騎士隊がそれとは別の部隊だとわかっていても、修道騎士団の印象はそう簡単に変わるわけでもない。
「なんでさ?」
弟分が口をそろえていった。
「そりゃぁ……。正義漢をしてれば、それでいいってわけじゃないだろ。たとえば、そう……、好きな人のために頑張るほうがカッコいいだろ?」
カーヴァルは言いよどんで、見栄っ張りな自分を恥る。しかし、真意でもあった。
騎士団が例えこの世の秩序を掲げて制裁を加えるならば、相手は悪でなければならない。しかし、柾やミトは決して悪とは言い切れない。これまでのいきさつを知る乗員たちからすれば、功労者であり、素晴らしい人たちであるとわかるはずだ。
それが一側面からの判断で、処罰を下されるのはおかしいのではないか。
カーヴァルの未熟な論理では、感情的なものが優って理性に縛られるのを嫌った。
「そういわれてもなぁ……」
「カッコいいのか?」
弟分二人は一度顔を見合わせて、首をかしげる。異性を意識したことのない男の子の発言だ。
カーヴァルは鼻を鳴らして、弟分たちがまだまだ子供であると断じた。
と、彼らの隠れている木箱の合間に誰かが入り込んでくる。天井の光の加減から、シルエットでしか確認できなかった。
「やばっ」
カーヴァルたちが慌てて腰を上げ、散り散りに逃げ出そうとする。
「待てっ。俺たちは騎士団じゃない」
切羽詰まった声にカーヴァルだけが反応して立ち止まる。一方で弟分たちはそそくさと鼠のように逃げていった。
カーヴァルが長身の体を振り向かせて、ゆっくりと近づいてくる人影に目を凝らす。
「あんた、確か……」
「セルネル・シャーオス。話は聞いた」
カーヴァルは赤みのかかった金髪を撫でつける男、セルネルを見据える。
「何の用?」
カーヴァルは盗み聞きされていたのが不愉快で、表情も自然と険しものになっていた。
だが、セルネルは真剣なまなざしで長身の少年に手を差し伸べる。
「どうだろ? 君も協力してくれないか?」
「何に?」
カーヴァルが反抗的に問うと、セルネルは自信たっぷりにいう。
「騎士団を追い出すのをさ」
カーヴァルはセルネルの持ちかけてきた話に一瞬疑った。そのようなことが本当に可能なのだろうか。
「ついでにいえば、連れてかれた女の子たちを助けるつもりでもある。進行具合にもよるがね」
セルネルは顎を少し引いて、少年が興味をひかれそうな話題を振った。
案の定、カーヴァルは半信半疑といった様子で、だが、気持ちは大きく傾いているのが、興奮する相貌からわかった。
「話を聞いてからだ……」
「了解だ」
カーヴァルはセルネルを利用してやろうと子供心に考える。
しかし、セルネルはカーヴァルの少年らしい純真さをつかえると踏んで不敵にほほ笑んだ。




