第9話 TOMAの正体
高級食材で作った家庭の味は、驚くほど速くメンバーの胃袋に吸い込まれていった。
「ふぅ……。正直、そこらの店で食うより全然いいわ」
RYUが満足げに腹を叩き、KAIもコーヒーを飲みながら苺依に小さく会釈した。
「婚約者ってことはお前の家のことは説明したのか?」
「それはまだだ」
「おいおい、そういうのはちゃんと言っとけよ」
リーダーのKAIは一番年上。
だからなのか、4兄弟の長男みたいな感じ。
にしても、TOMAの家ってどうゆうことだろ。
TOMAもそうだが、メンバーの素性はあまり明らかにされてない。
本名さえ公表されていないのだから。
「わかってる。ちゃんと話すって」
「まったく。最初に説明しないといけない部分だろ。お前が如月グループの御曹司だってこと」
「………………え!!!!?」
衝撃のカミングアウト。
如月グループ?
あの、如月グループ?
ありとあらゆる業界に必ず如月グループの傘下や子会社が存在する。
苺依が働いているホテルも如月グループの所有物だ。
「お、お、お、お、御曹司?」
そんなの聞いてなーーーーい!!!
「見えないだろ? これでお坊ちゃんなんだぜ」
「うるさい」
「じゃ…じゃあ、お父様っていうのは……」
「如月グループの会長、如月征十郎だ」
「ひっっっっ!!!!」
無理無理無理無理無理無理ーーー!!!
絶対バレる!!!
苺依の全身から血の気が引いていく。
まさか、そんな家柄とは……。
縁談って絶対お見合いとか政略結婚とかだよね。
でも、この前の母親は?
一緒に住んでない、のかな……。
「怖気付いたか?」
「そういうわけじゃ……」
たしかに驚いたし、会うのは少し怖い。
でもやっぱり……。
あの日のあの光景と台詞が、いつまでの苺依の脳裏に焼きついて離れない。
婚約者が必要なくらい、状況が逼迫していたのかな。
苺依はそんな環境にいる推しを、見過ごすことはできなかった。
――To be continued




