第10話 食後のひととき
食べ終わった食器を片付け、改めてKAIが聞いてくる。
「で……トマ、説明しろよ。なんで婚約者がこの子なんだ?」
リーダーであるKAIの目が、鋭くTOMAを射抜く。
「あぁ、そのことだが……」
TOMAは背もたれに体を預けた。
「……親父が、政略結婚の相手を決めてきた。来月には顔合わせだってさ。断れば、XENOのスポンサーを全部引き揚げて、グループごと潰すって脅されてる」
「はぁ!? なんだよそれ、勝手すぎるだろ!」
RYUが身を乗り出して怒鳴る。
「だから、その前に『愛する婚約者』を用意した、ってことか?」
「ま、そういうこと」
「ふーん。でもなんでこの子なの? トマならもっと可愛い子とか選び放題じゃん」
何気に失礼よ、SHOくん。
でもたしかにそれはそう。
たまたま、あの時私がいただけで。
他の人でも良かったんじゃないかと。
「芸能界は二次スキャンダルの恐れがあるし面倒だ」
「まぁ、トマはモテモテキングだもんねぇ?」
「からかうなよ」
「冗談じゃん」
「それなりに度胸があって、如月の名にビビらない奴が必要だったんだ」
その言葉に、リビングが静まり返った。
苺依は、胸の奥がキュッとなるのを感じた。
正直……ビビってないわけじゃない。
でも、あの時のTOMAがあまりに寂しそうだったから……。
「……チッ。トマくんらしいっていうか、なんというか」
SHOが毒づきながらも、苺依が淹れたコーヒーを口に運ぶ。
「ま、いいよ。あのクソジジ……あ、失礼。お父様に嫌がらせされるトマくん見るの、僕らも胸糞悪いし……協力してあげるよ、いちご大福」
「苺依ですってば! でも……ありがとうございます」
「でも、このことがお前の母親の耳に入ったら、また面倒だぞ」
RYUが言った。
母親という単語にあのシーンが蘇る。
苺依はチラリとTOMAを見た。
「あー、それな。この前あいつと会ってた時に見られたんだ、こいつに」
「え、苺依ちゃんに?」
TOMAがチラリと苺依を見る。
「親父にもあいつにも対抗できて俺に媚びない……そういう人材が必要だった」
「そうか……わかった。XENOも絡んでるなら俺たちも協力する」
「そうだな。スポンサーがいなかったら次のアルバムだって出せねぇしな」
「むぅぅぅ……絶対バレないでよ、大福」
大福!?
もうなんでもいいや。
「が、頑張ります」
TOMAが立ち上がって苺依の方へ近寄った。
横に立つと苺依の肩を抱き寄せ、こう言った。
「っつーわけで一応……俺の婚約者、ということだ」
至近距離から香るTOMAの香水が鼻をかすめる。
「ちょ……近いです!」
「……仕事だと思え。これくらいで照れてたらすぐバレるだろ」
「で、でも……」
「もしかして大福……こういうの慣れてないじゃない?」
「こういうのって慣れとか関係あります?」
「あるある」
SHOがニヤリと笑った。
――To be continued




