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土塀の町でわたしは兄の親友に恋をした。凍る国からの帰還兵はメープルホテルで出会う。  作者: レモン


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第37話  ウェディング

美しいレースが幾重にも重なった白いウェディングドレスは、遥佳によく似合っていた。


水色のワンピースを着た美夜が、


「遥佳ちゃん、とても綺麗!」


と、感嘆の声を上げた。


ミッション系の学校の卒業生の遥佳は、かねてから決めていたように、母校のそばにある教会で式を挙げた。


大学を卒業すると同時に、結婚式日程が組まれていた。


そして、披露宴はメープルホテルで行われた。


その日のメープルホテルは、ウェディングのために貸し切りになった。

あのピアノで演奏があり、庭では、披露宴のあと、ガーデンパーティーも開かれている。


水島家も会社を経営しているし、遥佳の家もメープルホテルをしていたり、知人が多いので、結構沢山の人々が集まっている。


ふっと、


《でも、碧伊さんだったら、本当に御伽話の女王様みたいだっただろう》


と言った思いが、まだ時々頭をよぎる。そして、慌てて打ち消す。


これではまるで、さながら、小説に出て来た気弱なヒロインのようだ。


水島さんが聞いたら、呆れられてしまうと思い、遥佳も考えないようにした。


そんなことを、勝手に思ったりもしたが、でも遥佳はとても幸福だった。


父が戦前この洋館を買ったとき、遥佳はここで、自分がウェディングドレスを着て結婚式を挙げるとは思わなかった。


午後遅くに披露宴が終わると、庭が灯りに照らし出され、テーブルの上には、キャンドルが灯り、森の中の祝宴のような、雰囲気になった。


美夜の叔母に連れて行ってもらったS市のカクテルバーに、一緒に行った和史が、遥佳も喜ぶので、この夜のために出張サービスで、店のスタッフに来てもらい、庭にカクテルコーナーを作ってくれた。


自分のドレスの裾が、ふわふわして、灯りの中で幻想的な世界の主人公になった気がする。それも、大好きな水島さんと……。


水島は誠実で、遥佳のことを、いつも思い遣ってくれているのがよくわかる。


結婚式も、全面的に遥佳の希望に沿ってくれる。


今度は向こうで、友人や知人に囲まれて、談笑している彼を見た。


今日は、ここで宿泊し、明日から、二人で旅行することになっている。


「素敵な日だったね」


淡いブルーのワンピースを着た美夜がそばに来て言った。


「美夜はどうするの?」


「私は、先生になるから、早速この春から大変。まだちょっと先かな?」


彼女にも王子様がいる。


そう言いながらも、きっと間近だろう。


遥佳の方へ歩いてきた水島の腕に手をかけて、二人は見つめ合った。


この宵を、遥佳はきっと何度も思い出すだろうと思った。



遥佳と水島の新居は、会社の近くに構えた。


メープルホテルにも近く、遥佳は結婚しても、時々母に頼まれて、メープルホテルを手伝っていた。


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