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幽霊作家  作者: ふりまじん
シナリオ

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推理ショー2


[永井、頭文字がN!もしや彼が]

と、叫んでくれる人がこの劇には出てこない。そこだけは少し残念だけれどこれで芝居を続けるしかない。


「香川県は確かに広いし、永田という苗字も沢山いるだろう。が、絞り込みを容易にしたのは、彼は大学を卒業していて、外国人の知り合い、もしくは仕事関係者がいる人物だと推察できたからだ。」

明智の言葉に岩井が反応する。

「本当に素晴らしい。しかし、この短い文章でなぜ、海外の人物が関係してると予想できたのでしょうか?」

岩井が不思議そうに聞いた。明智は少しもったいぶった感じで歩いてから、さも、簡単な事だと言わんばかりに話し始める。

「それは簡単だったよ。この手紙の人物は日本語は書けても、日本的な描写は出来ないと感じたのでね。」

と、明智が笑うとノアが叫ぶ。

「一体、この文章のどこに違和感があるのでしょうか?」

ノアの叫びに明智はふふっとニヒルに笑む。

「そうだね、選んだ日にちが悪かったのだよ。そして、家事にあまり協力的ではない男性だった事も原因だと思う。実際、はじめに『悪霊』の連載を呼んで違和感を私に教えてくれたのは行きつけの喫茶店の女給の佐藤さんだったのだからね。

ミステリというとどうしても男性を中心にした読み物として書かれるから、気にする人も少なかったのだろう。」

「だから、どこがおかしいというのですか?」

ノアが少し苛立つように叫ぶ。その様子を静かに観察してから明智はゆっくりと話し始めた。

「姉崎曽根子が殺害された日付だよ。9月23日。」

「それが、どうだというのです?秋のある1日でしかないじゃありませんか。」

ノアの言葉に明智は肩をすくめる。

「ああ、でも、この日は世界的に特別な日ではないかね?」

明智の言葉に、岩井が思案気味に言った。

「もしかして、お彼岸でしょうか…」

「オヒガン…?」

ノアが少し不思議そうな顔をする。

「仏教徒でないとわからないか、それでは言い直そう。この日は秋分の日ではないかね?」

明智の言葉にノアはハッとする。そして、その様子を見た岩井が説明を始める。

「日本の仏教では春分と秋分の前後3日間に亡くなったご先祖様の魂が家に戻ってくると言われているんだ。

それで、真ん中に当たる春分と秋分を『お中日』と呼ぶんだよ。つまり、一週間くらいの長さで亡くなった人の霊を迎えるんだ。」

岩井の言葉を理解していないようにノアは明智をみる。明智は岩井のあとを継ぐように説明を始める。

「そうなんだ。だから、このあたりの一週間、姉崎曽根子の場合、1年前に夫を亡くしたと書かれているから、一周忌を終えた初めの彼岸と考えられる。だから、普通より弔問客や僧侶の訪問など、ほぼ9月は来客を想定しているはずなんだ。」

明智の説明を聞きながらノアは不信感がある顔で岩井に答えを求めるように見た。

「ああ、日本では人が亡くなったら何度か決まった年に法事という集まりをするんだよ。特に、一周忌、三回忌は大勢の人が亡くなった人を悔やみにもくるし、財産の相続の話をしたりもするんだ。」

岩井の言葉にノアは諦め顔になりながら反論した。

「でも、それだけで、どうして海外の人間が書いたとわかったのですか?日本人でもキリスト教徒はいるでしょ?それに、独身で家庭の行事を知らない若者が書いた小説って事だってあり得るじゃないですか。」

ノアの言葉を明智は非愛の顔で受けた。

「ああ、でも、9月23日を秋分にすると、年代が絞られてくるんだ。」

悲しそうな、それでいて断言する明智の様子に岩井が聞いた。

「どういう事ですか?」

「秋分というのは元旦のように1月1日に必ずくるというわけではないからね。ここ10年なら、秋分は23日と24日のどちらかに当たるんだ。その上、牛込と場所を設定するとこれがもっと絞られてしまうんだ。」

明智は悲しそうな顔になる。そして、続ける。

「1923年は震災で東京は焼け野原になってしまったからね。その上、若い鞠子さんや龍ちゃんを含めたほとんどの人間が亡くなっているとなれば、震災前。そうなると、1920年か1921年のどちらかと思い当たる。

曽根子の夫の姉崎氏は実業界で働いていたようだから、この場合、姉崎氏の1920年の株価暴落の関係ではないかと推測すると、1922年の物語という推測が成り立つのだよ。」

明智の長い説明を岩井とノアは静かに聞いていた。


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