交霊会2
暗い舞台の中央にスポットライトが当たる。そして、そこには黒い西洋の礼服姿の姉崎曽根子が薄い影のように佇む。
舞台中央で薄ぼんやりと輝く白い光の女性が踊る姿は観客には異様に見えるに違いない。
そして、大概の人間はそれが『人ならざるモノ』つまり、幽霊だと思うに違いない。
[ペッパーズ・ゴースト。19世紀の英国の舞台で発明された技法でね、一枚のガラス板を使って影を舞台に登場させる技法なんだ。
『汚いは綺麗 綺麗は汚い』の法則だよ。一般社会でこの方法で幽霊を登場させたらインチキだが、
歌劇の舞台で登場すれば、それは本物の幽霊として人は認識するんだ。
僕はシナリオ作成には明るくないがね、この手のオカルトのインチキを見破って来たから、さまざまな表現方法を知っているのさ。ここはそれを惜しみなく使って、大いに怪しの世界を楽しんでもらおうと思うのだ。]
向井のメモ書きを思い出す。歌劇や芝居をそれほど見に行かない文月にはイマイチ、ピンと来なかったが、お嬢様は『ペッパーズ・ゴースト』の一言で理解したらしく楽しそうに笑った。
そんな曽根子の幽霊は悲しそうに自分の愛を憂う。無惨に殺された悲しみと、解放された喜びを。
そして、この世に残す憂いを。
一通り歌い終わると曽根子の霊は岩井と作者の方を見て、
「後はよろしくお願いします。」と、そう頭を下げる。
作者はそれに驚きながら岩井を見つめる。自分が曽根子に頼まれる筋合いがないからだ。
が、岩井は作者を見つめ返す。そして、穏やかに話しかける。
「何か、思い出しませんか?」
その言葉に、作者は驚く。
「どう言う事でしょうか?私は何もわかりませんが?」
作者は不安になりながら岩井を責める。その様子に岩井は少し考えて、気持ちを切り替えるように言う。
「失礼しました。『赤い綴り』の話です。あなたはあの、『赤い綴り』をお読みになったのでしょう?」
と、言われて作者は少しきまりが悪く苦笑いを浮かべる。
「はい。確かに。」
作者のその言葉に岩井が頷いて静かに言った。
「それでは、お分かりですね?」




