交霊会
岩井担の手を打つ音で舞台は暗転する。
そして、中央の奈落から温かい光が現れて薄ぼんやりと白装束の少女が現れる。龍ちゃんである。
[原作では醜い盲目の少女の設定だが、ここは体のラインが美しい新人女優に配役する。
初めの設定の説明で飽き始めた客の心を掴むために、そして、客の思考を白紙に戻すために、わざと体のラインの浮くような薄手の着物を用意する。
少しはだけた感じで彼女の足をチラリと見せることでエロチズムを演出しながら、それでいて怪しの音楽と暗い照明で怪奇感を演出する。]
と、向井の説明が書かれていた。龍ちゃんは盲目だと分かりやすいように黒いベルベットの西洋風の目隠しをさせるのだそうだ。(向井的にはこれで色気が上がるらしい)
と、いうことでエロくで怪奇な龍ちゃんが無言で奈落からの赤い光と共に舞台中央に現れ、
「美しい人が…」と、意味ありげなセリフを放ち、人々がそれに集中している時にいきなり
パン と大きな音がして、激しい光で客に目眩しをかけ、そして、舞台は一気に霊能者が集まる応接室に変わる。
明るくなった舞台で半円に並ぶように『悪霊』の登場人物が椅子に座っている。
その様子に混乱する作者に岩井が優しく駆け寄って説明を始める。
「静かに、霊能者の皆さんは集中しているのです。そして、彼らは既に意識をあの世とこの世の境アストラル界に漂わせているのです。
ですから、先生、質問は1人1人に名前を発してからしてください。
中央の丸い台の上に登ると彼らは話すことが出来るようになります。」
岩井の言葉に作者は頷いた。
明智はここにはいない。そして、どこからともなく怪しのバイオリンが響き、それに合わせて龍ちゃんが再登場する。この時の龍ちゃんはワンピースに着替えている。
左に龍ちゃん
右に鞠子
そして、2人は歌い出す。交霊会の歌を。そして、交互に左右の端の登場人物の紹介をする。
紹介された人間は生気なく立ち上がり、そして、客に認識させる。
左の端には熊浦
右の端には黒川博士
左の2番目は槌野 一般研究者
右の2番目は園田 黒川博士の教え子
真ん中に黒川夫人
そして、真ん中に鞠子と龍ちゃんが歌いながらやってくると、大きな音と共に姉崎曽根子の変わり果てた遺体が一秒、舞台に吊られるように止まり、不気味な血だらけの姿を客に晒す。そして、客が驚いた瞬間には勢いよく奈落へと落ちてゆく。
舞台左端に岩井担が作者と立ち、右端では祖父江進一が静かに岩井を見てめている。
そして、ゆっくりと照明が暗くなり、血まみれの曽根子の霊が歌いながら奈落から上がってくる。
一通り怪しの歌を歌うと曽根子は静かに佇む。
「これが霊と言うものなのかね?」
作者は不安と恐怖に岩井に聞く。
「いいえ。今、この空間は生と死の間。この中には確かに亡くなった人物もおりますが、生き霊、そして、我々のように生きている人間も存在しているのです。」




