岩井担
文月は話した。作中作者は書斎というにはこじんまりとした6畳くらいの白壁の部屋にいて明智を迎える。
明智小五郎は小気味の良いノック音を2回、そして、部屋へと入ってくる。
そして、依頼内容をゆっくりと客に向けて話す。
連載休載の物語の話。
そして、もう一度、赤い綴りを渡した N某を探して欲しいと明智に依頼したことを。
作者は窓辺の学習机の椅子に座って明智を迎える。そして、恐縮するが明智小五郎は気にすることもなくドアの前に立ち、そして、今までの調査報告をする。
そして、1人に人物に遭遇したと説明する。彼はドアの向こうに待機している。
「貴方の物語の登場人物、ここは岩井担の名前でお呼びましょうか。」
明智はそう言って派手にドアを開ける。
小説を読んできた客は、ここで疑問に思うかもしれない。
そう、岩井担は作者がつけた仮名なのだから。
そして、少しミステリをかじった人間ならこう期待したかもしれない。
(岩井担こそ、N某ではないか)と。
客の不安と期待を胸に岩井は登場する。
文月と同じくらいの背丈の穏やかな背広姿の中年男性である。
作者と岩井担の顔合わせがここでの見どころである。
原作を知る人たちは思う。作者はN某を知っているはずだ。
だから、岩井と説明されて、どう反応するのか、全くの別人として話をするのか、それとも、何か含みを持たせるのか。
客の期待と混乱を増殖するように、作者は含みのある返事をする。
「貴方が岩井さんでしたか。」と。
そして、そのタイミングで明智が話し始める。歌劇なので多分、歌うのだと思う。
「岩井先生を探し当てましてね。岩井先生も祖父江氏の行方を探しているとの事で、しかし、残念なことにここで貴方との約束の期限になってしまったのです。岩井氏からの話は先生と伺おうと思いましてね。
岩井氏の提案なのですが、どうでしょう?霊媒を使って事件の結末を確認してみるというのは?」
明智がそういうと、作者は興味深そうに岩井を見る。
「先生も、変態心理を研究されているのですか?」
作者の言葉に岩井は黙って頷いた。
作中では、岩井と祖父江は学友で黒川先生の教え子のように書かれているので、多分、岩井は心理学者、もしくは心理学を勉強したに違いない。
「はい。ご明察の通りです。そして、私も例の件依頼、交霊術と言うものに興味を持ちまして、その関係の知り合いも多いのです。
いい機会ですので、ぜひ、先生にも参加願おうとこうして参った次第であります。」
岩井はそう言って穏やかに微笑む。その様子に作者も頷く。それを合図に岩井、渾身の独唱。
交霊会のメンバーの説明をしながら踊るのだが、文月はその辺りはあまり考えないようにした。
ともかく、メンバーの紹介をして、そして、急に岩井は立ち止まり、そして、
「それでは始めましょう。」
と、そう言って平手で一回、パンと自分のよう手を打つのである。




