83/136
紅衣ノ狐3
*
金色の野。
ススキが風に靡き、ソノ女性は背を向けて立っていた。
頭上、片方のみで長い髪を結わえ、すらりとした長身で高く柔らかい歌声で歌を歌っている。
ソレはまるで誰かをコチラへ誘うかのように。
紅い長い髪。
すらりとした長身。
高く柔らかい声。
ソノどれもに、見覚えが在った。
…否、見覚えが在って当然だった……。
「…そんな……、天蘭…、姉さん…?」
そうだ。
アノ姿は間違いない!
何度も見た、アノ後ろ姿。
優しくて、
想いやり深くて、
暖かい笑みを浮かべる姉──李来 天蘭だった。
『──風蘭』
風蘭の脳裏に、優しく微笑みを浮かべる姉の優しい声が響く。
懐かしい、想い出が…、今は亡き、姉の姿が……。
「…っ!
お姉ちゃんっ!!」
風蘭が金色のススキのノをかき分けて、姉の許へと進む。
真っ赤な朱茜日が、朱赤と彼女を照らす。
風蘭の後ろ…、夕告げの光の先には…、宵闇ノ漆黒が広がっていた──。




