24 修学旅行・4日目その2
北野天満宮でしっかりと合格祈願して、下鴨神社では可愛いお守りを買ったりみんなでみたらし団子に舌鼓を打ったり。最初はどうなることかと冷や冷やしたけれど、いざ動き出してみればしっかりと京都旅行を満喫している。
「発祥のお店と言うだけあって、とても美味しかったね」
「・・・ああ、美味かった」
楽しげに話す陽高くんにつられているのか、それとも甘味を食した所為か、なんとなーく最上くんのテンションがいつもに比べて高いのが分かる、何だかまわりの空気までぽわぽわと明るい。珍しい光景を眺めつつ、さりげなく腕時計を見ると二つの針が寄り添う正午間近。
「んー、今食べたばかりだけどお団子だけじゃお腹は膨れないし、そろそろ昼食にしない?」
ねぇどうしようか、と隣を歩く友人に話しかけると、何故か明後日の方向を見ていた京歌は一拍間を置いて。
「―――え?ええ、丁度お昼時ですし、そうしましょうか」
「そうだね、でも今日は日曜だからどこも満席みたいだ」
ですよねぇ、表通りに面しているお店は人で溢れていて大繁盛。中には行列ができている店もある、美味しいのかもしれないけど私にはああいったところに並ぶ気概が無いわー。スゴイ人は一時間二時間平気で待てると言うけれど、って話が逸れた。
「せっかく京都に来てるんだから、俺は何か和風の物が食べたいな」
「和食・・・、関西風の蕎麦とかうどんとか」
「あ、それいい!」
「・・・それでしたら少し歩きながら入れそうなお店を探す、というのは如何でしょうか」
異議なし!四人の意見はあっさりと纏まって、とりあえず京都駅を目指しながら少し腹ごなしをすることになった。・・・あれれ?気まずさを感じていたのは私だけで、何だかすっごく自然だ。
・・・そ、そうだよね!思い返してみても、陽高くんは落ち込んでいた私を励ましてくれただけだし、最上くんに至っては私が「嫌いになっても~」なんて言ってあの台詞に誘導したようなものだよね!それを自意識過剰に気にしすぎて、一人で舞い上がったり一人でパニックになったり、うわぁ全く私ってバカだなぁ。乙女ゲームのやりすぎだよね。反省。
しかし今日は本当に人が多い、さすがは世界的有名観光地。周りからいろんな国の言葉が聞こえてきて、日本にいるのにちょっと不思議な感覚だ。
「う~ん、パンフレットに載っているような有名店は軒並み満員だねぇ」
歩き続けること数十分、お団子を食べたから空腹で倒れそう!なんてことはないにしても、慣れない土地で動き回って少々疲れてきてしまう。こういう場合目立つ場所に位置する大型店より、ちょっと入り組んだ路地にあるお店を選んだ方がいいものだろうか。意外とそちらの方が味が良かったり、気配りが行き届いていたりするものかな。
「ねぇどう思う、京歌・・・京歌?」
「・・・はいっ?えっと、そう・・・ですね?」
・・・?なんか変だ。
「どうしたの?歩き疲れた?」
「そういう訳ではないんですが・・・はぁ」
大通りを抜けて小さな路地に入るとようやく人の波は途切れて、先ほどまでは雑踏に掻き消されていた彼女の吐息は周囲の人物に届くほど大きく響いた。さっきから妙に歯切れが悪く、ついにはため息として自身の憂鬱さを吐き出したのは紛れも無く京歌で。出発した時はそんなそぶりを見せなかったのに、下鴨神社を出たあたりから気が付くと何処か私とは違う方を見ていたり、話しかけても反応が遅れがちになっていたような気がする。
「・・・あの、すみません英さん、俺たちやっぱりお邪魔だったかな?」
「いえ、そんなつもりは無いんですが・・・はぁ」
あまりの態度の急変に堪りかねて陽高くんが声をかけるけれど、再度投げやりに息を吐く。付き合いはそう長くないけれど、こんな京歌を見るのは初めてだ。
「ね、何か気に障ったのなら隠さないで言って欲しいよ、もしかして具合が悪いの?」
頼りない自覚はあるけれど、友達が困っているのなら黙ってはいられない。じっと見つめると京歌は一度思案する様に瞳を閉じて、それから真摯な目でしっかりとこちらを見つめ返して、そっと持ち上げた右手を向かい合って立つ私の左肩にぽんと乗せた。
「・・・そうですね、いつまでも私一人で抱え込んでいても仕方ありません・・・白羽さん、聞いてくれますか?」
「もちろん!」
間を置かずに問いかけに答えると、京歌はやっとふわりと優しい笑みを浮かべて、私の肩に添えていただけの右手にほんの少し力を込めた。その表情にホッとしたのもつかの間―――。
「おおっと、手がスベッター!」
「はあっ!?」
手が滑ったと言う割には力一杯、左肩に乗せられた手によって私は思い切りドンと突き飛ばされた。
その意味不明理解不能な行動は完全に予想外で、また素早く体勢を立て直したりその場で踏みとどまることが出来る素敵な反射神経など持ち合わせていない私の体は、哀れ背中から地面にダイブ。コンクリートとの全面衝突は避けられない―――!!
「―――ッ!?」
「常葉さん!?」
と、思っていたけれど、私の傍にはその“素敵な反射神経”をお持ちの方が何と二人もいた様で。咄嗟に陽高くんが私の右手首を掴むと同時に前面から腰に手を添えて支え、最上くんが後ろにまわり肩を抱きかかえる、といったカタチでよもやの転倒は免れた、けど。
「何しはるんどすかーー!」
「うふふ、白羽さんもう京都弁がうつってるんですか?」
「いや、笑い事じゃないから!!」
飄々と何事も無かったかのように微笑んでいるけど、もし二人がいてくれなかったらどうなっていた事か!ていうか一体何がしたかったんですか!巻き込まれた私はこけ損ですか!?
とりあえず不慮の事故から救ってくれた二人に感謝と謝罪の言葉を述べて、やや恥ずかしい体勢からの脱却を・・・を?
・・・何でしょうか、アレは。
今さっき私たちが通ったばかりの曲がり角に、数人が屯している。今日は日曜だから人が多いのはごく自然な光景の筈なんだけど・・・何か妙だ。そこに居る人たちはまるで覗きをするように電信柱の陰に身を潜めている、それも1人2人ではなく4~5人がよってたかって電柱に隠れている、というのはやっぱり妙な話だ。
「あ、みなさんやっと気付いて下さいましたか?私早くから勘付いてしまって、伝えるべきか放置するべきかずっと悩んでいたんですよ」
その情報とさっきの突き飛ばしにどんな関連性があるのか全く分からないのですが・・・いや、ていうか、あれ?何だかあそこにいる人たち・・・見覚えが、あるような?
「・・・わあっ!」
その集団はまるでおしくらまんじゅうをするようにぎゅむぎゅむとお互いに押し合って、最後には将棋の駒の様に次々に折り重なってその場に倒れてしまった。うんやっぱり見覚えがある、というより見覚えしかない。ここ数日会っていなかったからと言って、十数年+生前の数年毎日の様に拝んでいたその御尊顔を忘れるような私ではない。うん?何を言ってるんだ私は、頭が混乱してきたよ。
「もしかして・・・和!?それに、水月と十理くんまで!」
電信柱から飛び出してきたのは、紛れも無く2人の弟と幼馴染でした。あれどうなってるの、ここ京都だよね、私修学旅行中だったよね、こんなの絶対おかしいよ。しかしなが突然の再会はこれだけでは終わらず、地面に倒れ伏した3人を嘲るような目をした、残る2人がその場に姿を現した。
「お前たちは何をやっているんだ」
「・・・惟真!?どうしてここに居るんだ?」
軽くため息を吐きながら登場したのは生徒会副会長、蔵王惟真・・・いやホントに何で居るんですか。バツが悪そうにしている弟たちがここにいる訳もちんぷんかんぷんだけど、君がここにいる理由が一番よく分からない。悪ノリとかドッキリになんて全く興味が無さそうなのに。
そして最後の1人は悪ノリやドッキリが大好きと言わんばかりに、にやにやと嫌な笑みを浮かべている・・・よし、謎はすべて解けた!犯人はお前か、穂積ぃ!!
「・・・真尋?」
何ですかこの状況!私と京歌を省くとしてもスノードロップの登場人物が全員集合って、学校にいてもなかなか起きえない事態なのに、どうして京都でこんな事になっているんでしょうか・・・。
「・・・うん?ちょっと待って今真尋って言ったの誰?それって確か穂積君の下のお名前ですよね・・・?ああもう訳が分からないよ!」
「お姉ちゃん、まずはその体勢から何とかしようよ・・・」
そういえばまだ支えられたままだった!でも地べたに倒れこんでいる人に言われたくないです。いや、え?これは一体どういうことなの!?
お久しぶりです、今頃になってこの作品にメガネ君が居ない事に気付きました
・・・ここは誰かを隠しメガネ(普段はコンタクトor裸眼だけど稀に眼鏡をかける人)にしなくては・・・可能性があるのは会長か蔵王あたりかな?
(内容に全く関係ない話で失礼w)
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