薬の正体
「・・・・・」
「何やってんだお前?」
たまたま立ち寄った食堂でカイトは机に伏せて眠っているレアルを見つけた。声を掛けてみたが眠っているため反応は返ってこない。
「おーい、起きろよ」
「・・・・んっ、何だ・・・カイトか」
今度は体を揺さぶって声を掛けた。すると、レアルは目を開けた。だが、カイトの姿を確認するとまた目を閉じて寝ようとする。
「だから寝るなって!」
「・・・・たくっ、うっせぇな。人がせっかく寝てるっていうのに」
レアルはカイトに起こされて不満を漏らしながら体を起こす。だが、大きな欠伸をしているところを見るとまだ十分眠そうだ。
睡眠を妨げられたレアルはカイトのことを少し睨む。カイトはその視線も気にした様子はなく椅子に腰かけた。
「そう睨むなよ。今日の授業はそんなに疲れることでもあったのか?」
カイトがそう聞いてくるがレアルは寝起きの所為もあるのか答えるのがとても面倒臭そうだ。
「何か、いつもより五割増しくらいやる気がないな」
「うっせ、疲れてんだよ」
疲れていても貶し言葉にはちゃんと反応するレアル。
「もしかして昨日何かあったのか?」
「・・・まぁ、あったな」
「お、やっぱあったのか。それってお嬢様が関係してたりする?」
カイトはなぜか嬉しそうな顔をして聞いてくる。けれど、レアルはそこでなぜアイシャの名前が出てくるのか分からなかった。
「何で、昨日何かあった、からアイシャに結びつくんだよ」
「え、だってお前ら昨日の朝一緒に出掛けたんだろ?」
「昨日の朝?ああ、あれか・・・」
確かに昨日はアイシャの馬車に乗せてもらったな、とレアルは昨日の朝のことを思い出す。けれど、乗せてもらっただけで昨日はそれっきりアイシャと会ってない。
「てか、何でそのこと知ってんだよ」
昨日の朝出掛けた時間は結構早い時間だったはず、そんな朝早くからカイトが起きているとは思えないし、ましてや偶然現場を見たというのもあり得ないだろう。
「え、結構噂になってるぞ。生徒が門のところにいる兵士にお前がお嬢様と一緒に出掛けてるとこ見た、って聞いたらしい」
「また、噂かよ・・・」
レアルは呆れた表情で呟く。けれど、今までのことから考えてこの学院の生徒がそんなことを聞いたら噂になるのは当然だ。噂好きもいい加減にしてほしいものだと思った。
「てか、自分のことだろ?何で学院に居て知らないんだよ?」
「いや、それがさぁ・・・・」
「人の話であまり盛り上がらないでくれるかしら」
レアルが噂を知らない理由について説明しようとすると別の声が会話に入ってきた。カイトの後ろを見てみるとその声の人物であるアイシャが立っていた。いつも通りユーナと一緒に。
「別に盛り上がってねぇよ」
「そう、というか今日来てたのね。とうとうサボりだし始めたのかと思ったわ」
「え、お前今日授業サボったのか?」
「ああ、サボった」
レアルはすぐに肯定した。学院にある個室の中で軟禁されていたとはいえ授業に出てないのでそういうしかない。
「呆れた。少しも悪びれる様子がないなんて」
「別に俺だって理由もなくサボったわけじゃないって。これにはそれはそれは深い事情があるんだよ」
「へぇ、じゃあ聞かせてもらいましょうか。その深い事情というのを」
アイシャはどこか刺々しい口調でそう言ってきた。不思議に思い、レアルはカイトに小声で問いかけた。
「なぁ、何かアイシャのやつ怒ってないか?」
「え、そうか?でも、言われてみれば、そんな気も・・・・」
「お前気に障ることでもやったのか?」
「するわけねぇだろ、そんなこと。あれじゃね、今日が女の子の日とか?」
「さっきから聞こえてるわよっ!失礼なこと言わないでっ!」
珍しく声を張り上げて反応するアイシャ。頬も若干赤い。
けれど、そんな状態でも自分を辱めた二人への報復は忘れない。レアルとカイトの頭の上から拳大のガラス玉が急降下する。それの直撃を受けた二人は頭をお押さえて悶絶する。
「ぬぉ、あ、頭がぁ・・・・」
「こ、殺す気か・・・・」
「自業自得よ」
「二人とも少し女性への配慮が足らないと思います」
これにはユーナもアイシャに同意したようだ。本人を目の前に恥ずかしい話をしたのだから怒るのも無理はないだろう。
ちなみにアイシャの態度がいつもより刺々しかったのはフレイリアが原因だ。昨日シリウスとシャルロットが去った後、フレイリアに質問攻めにされ、それから解放されるのにかなり時間がかかった。それによって溜まった鬱憤を話の素であったレアルへの不満に変えていたのだった。
だが、レアルは機嫌が悪かった理由がそんな理不尽なことだったとは知る由もなかった。
「それで、授業をサボったのに食堂で呑気に過ごしていた理由はなんなのかしら?」
「それ説明しないとダメか?眠いし、頭痛いし、面倒だから部屋に帰りたいんだけど」
「だったら手短に話しなさい」
それを聞いてレアルはげんなりとため息をつく。レアルを部屋に返す気はないらしい。
「いいから、とっとと吐いて楽になっちまえよ」
「変な聞き方すんなよ。何で授業に出なかったかっていうと、俺朝方まで軍の牢屋で捕まってたんだよね」
「え!?」
「お前とうとうやらかしちゃったのか」
「常識が欠けているとは思っていたけど、ここまでとはね」
「お前ら驚くより先に呆れるって普段俺のことどう見てんだよ・・・・」
いつかはこんな事を起こすとでも思われていたのか、二人には全く驚かれなかった。普通だったらユーナの反応が正しいと思う。
「で、何やらかしたんだ?」
「何もやってねぇよ。俺が悪事を働いた前提で話すな」
「朝方まで軍に捕らえられていたんでしょう?だったらそれ以外に考えられないじゃない」
「もう会って一か月は経つのに、全然信用されてないんだな、俺」
どこか虚しく呟くレアル。軍に捕まったというのに同情すらされない。第三者が見ればかなり可哀相な男だろう。
「ま、いいんだけどさ。何でそんなことになったかっていうと、向こうの勘違いで捕まってたんだよ」
「何を勘違いしたというの?」
「ゴーストって知ってるか?」
「お化けですか・・・・?」
「もしかして、最近王都で噂になってる通り魔のことか?」
学院の生徒はほとんどが寮で暮らしている。学院も王都から離れているため、学院の生徒は外の情報に少し疎いところがある。
「何でゴーストなんですか?」
「確か、そこに何かいる気配は分かるのに姿が見えないからっていうのが理由だと思うぜ。それで目撃情報が少ないから未だ犯人は分からず、被害者も増えてきてるとか」
カイトが噂好きであることは知っていたが、学外の情報についても詳しく知っていたのは驚きだった。
「実は昨日の夜、学院に帰ろうとしたらそいつに襲われてな。一応返り討ちにしたんだけど逃げられた。それでその後が面倒で、周りで見てたやつらが呼んだ軍の兵士が俺のこと暴漢と勘違いしてそのまま連行されたんだよ」
「周りの方はレアルさんが襲われたところを見ていたんじゃないんですか?」
「ゴーストの奴は姿が見えないから周りの奴らは俺が路上でいきなり暴れてるように見えたんだと」
「それは災難だったわね」
そういうがアイシャは少しだけ笑っている。笑われたことには不満を持ったがレアルはそれを無視して話を進めた。
「でも、誤解だったんだろ。それなのに朝まで尋問されるっておかしくないか?」
「尋問してくる兵士が意外と頑固でな。納得させるのに時間がかかった。それに昼間にもちょっとあって」
「昼間?もしかして民家が爆発した事件かしら?」
昼間レアルが巻き込まれていた事件の方は、その時王都に居たためアイシャ達も耳にしていた。街中で魔法を乱発する馬鹿な魔導師もいるのだな、くらいに捉えていたのだが、級友が関わっていることを知りさらに呆れた。
「あなたは行く先々で騒動を起こさないと気が済まないの?」
「好きでやってるわけじゃねぇよ。それで牢屋から出された後、セルフィさんが迎えに来てくれて今朝学院に帰ってきたんだ」
「それでしたら、授業に出られたのでは?」
確かに今朝返ってきた時間なら遅刻することなく授業に参加することができただろう。参加していたとしても起きてはいなかったと思うが。
「それってやっぱりサボりじゃない」
「俺も単に授業サボれたらどれだけよかったか。学院に着いた時点で先生に捕まったんだぞ。そんで朝から今さっきまでずっと説教食らってたんだ」
「朝からさっきまでって大体何時間だ?」
「七、八時間くらいだな」
「おぉ・・・先生もよくそんだけ説教できたな」
これにはカイトが同情するような目で見てくる。レアルも自分自身眠いながらもよく耐えたなと思った。
「それだけ説教を受けた割には反省の色が全くないわね」
「いや、今回俺別に悪くないと思うんだど。巻き込まれただけだし」
「問題を起こすことが悪いと言っているのよ。少しは気をつけたらどうなの」
「じゃあ、問題が起きてもばれないようにするさ」
そんなことを言うレアルを見てアイシャはまた呆れる。
「なぁ、お前襲われた時間って何時くらいだ?」
「・・・学院の門限の一時間くらい前だな」
「そんなことを聞いてどうかしたの?」
「いや、レアルを襲ったのが本当にゴーストなのかなって」
レアルはカイトの言いたいことが分かっていた。ゴーストのことを詳しく知っている人間なら疑問に思うのは当然だからだ。
「ゴーストが犯行を行うのは毎回真夜中だ。けど、昨日に限ってそんな人目に付く時間にレアルを襲うなんておかしいだろ」
「まぁ、前日に一人殺してるしな。そう考えるとおかしな点はいくつもあるけど、多分あれは本物だったと思うよ」
「何でだ?」
「ゴーストには俺を王都から出したくない、殺しておきたい理由があったからさ」
レアルは出鱈目でも、憶測でもなく、確信を持ってそういった。それを聞いた三人はハッと驚いた表情になる。
「それはゴーストがあなたに恨みがあるということなのかしら?」
「いや、そんなに深い関わりはないな」
「なら、何で向こうに殺す理由があるなんて分かるの?」
「存在を偽っている犯罪者が一番知られたくないことって分かるか?」
「え・・・」
アイシャは質問を質問で返されて一瞬だけ戸惑う。そして、すぐにレアルの言ったことの意味を考える。頭のいい人間ならすぐに答えが出るはずだ。予想通りアイシャはすぐに答えが見つかった。
「まさか、あなたはゴーストの正体を知っているの・・・?」
「確定じゃないが、少なくとも向こうは俺が知ってるって思ってるはずだ」
その言葉はほとんど肯定しているものだった。レアルは昨日襲われただけでゴーストの正体をほとんど見抜いていた。
何故、それだけでゴーストの正体を見抜けたのかというと、レアルは運が良かったのだ。昨日レアルはゴーストに関する情報を多く持っていた。昨日得た情報は少なかったがこれまでに調べていた情報と合わせればかなりの量だったと思う。
運が良かった、というのはゴーストと接触できたというのもある。ゴーストの取ったおかしな行動のおかげでレアルは様々な見方で事件を考えることができた。それによってゴーストの正体に気付くことがきたのだ。
「軍の方々には言わなかったんですか?」
「言っただろ、確定じゃないって。そんなんで言っても信じてくれねぇよ」
「じゃあ、あなたはどうするつもりなの?」
「まぁ、俺も男だからな。やられっぱなしは好きじゃないんだよ」
面倒事を嫌うレアルの性格からはあまり考えられない台詞が飛び出てきた。だが、これはケインを動かすためにゴーストを排除しなければならない、という本当の理由を隠すための建前だ。
けれど、そう答えたレアルの顔は少しだけ笑っていた。
◇◆◇◆◇◆
翌日、今日はちゃんと授業参加して放課後を迎えたレアル。
先ほどセルフィから薬の成分の分析が終わったと報告を受けた。レアルは仕事が早かったので素直に驚いた。けれど、その際に結果を聞くことはできなかった。
何でも、薬の成分を調べたのはセルフィではないので調べた本人に直接聞きに行くよう言われたのだ。レアルはてっきりセルフィが調べるものとばかり思ったので意外に思った。そして、そう思ったときに、専門外ですので、とセルフィによって心を読まれたのであった。
「ここか・・・・」
レアルは言われた部屋の前に到着した。扉の上に取り付けられている鉄製のルームプレートには医務室と書かれていた。
エルトリス魔導学院に通う生徒は日夜自らの腕を磨いている。そう言った日常の中では必然的に怪我をする者が出てくる。時には、魔法の操作を誤り、暴発させて大怪我を負うものもいるらしい。なので医務室のお世話になる生徒は結構いる。
大怪我をした生徒にも適切な手当てができるように医務室の設備は結構良いらしい。
「えっと、失礼します・・・」
一応、挨拶をして中に入る。医務室の内装は清潔感のある白で統一されていた。白だと埃や汚れが目立ちそうなものだが念入りに掃除をしているためか、そういったものは見当たらない。
中は思いのほか広く、寝心地の良さそうなベッドが三つ並んでいた。カーテンも閉められる値が張るやつだ。
「いない、のか?」
部屋を見回してみたが人の影はなかった。たまたま入れ違いになったのかもしれない。
しばらく待ってみようと考えたレアルであったが、一つカーテンの閉まったベッドを見つけた。何気なく近づいて中を覗いてみると誰かがベッドを使用していた。
「すぅー、すぅー」
寝ていたのは金髪の女性だった。規則正しい寝息を立てながら気持ちよさそうに眠っている。けれど、制服を着ていないところを見ると生徒ではないようだ。
そして、代わりに女性が来ていたのは白衣だった。もしやと思いレアルはその女性を起こすことにした。
「おーい、起きてくれ」
「・・・・ん、うぅん・・・」
「風邪ひくぞ」
「・・・・うん?・・・あれ、ここは?」
何度か声を掛けて肩を揺さぶると女性は目を覚ました。ゆっくりと体を起こしてきょろきょろと周りを見回す。そして、レアルの方を向いて首を傾げた。
「あれ?君は?」
「一応、生徒なんだけど。あと、ここは医務室だな」
「医務室?そっかぁ、そうなんだぁ。・・・・えっ!?」
レアルが質問に答えると女性は急に何かに気付いたようだ。そして、オロオロと慌てだした。
「ど、どどどうしよぉ~!!また、居眠りしちゃったよぉ~!?」
「えっと、いいか?」
「え!?な、何かな?先生は別に天気が良いからお昼寝してたわけじゃないからねっ!!」
もうそれは自白しているようなものではないか、とレアルは思った。女性も言ってから気付いたのかしまった、という表情になっている。
先生と言っていたので、多分この女性がセルフィの言っていた薬を調べた人物だろう。
「エメリ・ラッテラって先生のことで合ってる?」
「うん、そうだよ。エメリ先生って読んでね!」
先ほどまで慌てていたが今度は笑顔で肯定した。本人で間違いないようだ。
体の発育は色々と大人な割に、反応が一々子供っぽいため、何だか頭が悪そうに見える。本当に薬の成分を調べられているのか不安になった。
「じゃあ聞くけど、先生は「エメリ先生」先せ「エメリ先生」・・・・・エメリ先生はセルフィさんから話聞いてる?」
「学院長代理から?あ、もしかして、レアル君?」
エメリは思い出したようにレアルの名前を呟く。ちゃんと話は通っているようだ。
「確か、傭兵さんやってるんだよね?まだ、若いのにお仕事してるなんてすごいねぇ」
レアルは一瞬、何でそのことを知っているのか、問い詰めようとしたがやめた。この人も元々レアルが雇われていることを知っている学院長の協力者なのだろう。
考えても見れば、何も知らない教師にレアルの持ってきた怪しい薬を調べさせるなんてするはずもない。
「薬の分析結果を聞きに来たんだけど?」
「それなら、ちょっと待ってね。今持ってくるから」
そう言ってエメリはベッドから降りて奥にあった机に向かう。机の上を探して一枚の小さな紙を持ってきた。
「はい、あの薬の成分が書いてあるよ」
髪には十種類くらいの成分の名称が書かれていた。けれど、この手の知識に詳しいわけではないのでレアルにはさっぱり分からなかった。
けれど、そんなレアルにでも明らかに薬の成分ではないものが書かれているのを見つけた。
「この、一番上の魔木の灰っていうのはなんなんだ?」
「それはね、魔木を燃やして灰にしたものだよぉ」
エメリは言葉通りの説明をしてくれた。文字を見ればそれくらいは分かる。
魔木というのは魔石と同じように育つ過程で魔力を取り込んだ木のことだ。魔石とは違い取り込んだ魔力が多ければ多いほど黒くなっていく。
魔石と同じように魔力を取り込む性質はない。魔木が魔力を取り込むのは地面に生えている間だけで切り倒されてしまえばもう魔力を取り込まなくなってしまう。だが、多くの魔力を内包しているため、対魔法装備の材料として利用されている。
「でも、何で薬の中にそんなもんが入ってるんだ?」
「確か、このお薬を飲むと魔法が使えるようになるんだったよね?」
「ああ」
「お薬の成分のうち、半分くらいが魔木の灰だったの。魔木はね、切っちゃうともう魔力は取り込まなくなっちゃうんだけど、切られるまでに取り込んだ魔力はどれだけ加工されても消費されない限りずっと貯めこんでおけるんだよ」
「つまり、灰の状態になってもまだ魔力は残ってる」
「うん、そうだよぉ」
エメリはにこやかに笑いながら肯定する。
「それで、魔導師じゃない人がこれを飲んで魔法が使えるようになるのは魔木の灰から魔力を摂取してるからだと思うの」
「魔力を食ってるってことか?」
「端的に言えば、そうかなぁ。灰は体の中で消化されるけど、灰に貯められていた魔力はそのまま体に残る。消費されない限りは霧散したりしないからねぇ」
「でも、自分の魔力じゃないのに魔法が使えるって変じゃないか?」
「魔法を発動させるのに必要なのは意思の力。それが魔力と反応すればできると思うよぉ。ほら、私たちだって魔法を発動させるときに空気中の魔力を一緒に使ったりするでしょう?」
レアルはエメリの説明に納得した。見かけによらず論理的な考えを持っていたので驚いてもいた。
「じゃあ、この薬を魔導師が服用したらどうなるんだ?」
「あ、もしかして、レアル君このお薬使う気?ダメだよぉ、このお薬の中には危険な成分だって入ってるんだからぁ」
エメリは突然、子供に注意するような仕草でレアルを咎める。もちろん、使うつもりはないのですぐに否定した。
「そう?なら、いいけど。私たちみたいな魔導師がこのお薬を飲んだら、自身の魔力量が増えるはずなの。けど、それって荷物がいっぱいの袋にさらに荷物を詰め込むような感じだから危険なの」
「例えば?」
「魔法を使うときに必要以上の魔力を流して暴発させちゃったり、保有できる魔力以上の魔力を取り込むとそれだけでストレスとかになっちゃうし、危険な成分混ざってるから、身体的、精神的にも悪影響が出るから、良いことなんて何もないんだよぉ」
エメリの話を聞いてゴーストの魔法の威力の正体が分かった。あれはゴーストが高ランクの魔導師なのではなく、レアルと同じように暴発寸前で魔法を放っていただけのようだ。
これで低ランクのものでも犯行が可能ということになった。あとは条件にあった人物を特定するだけだ。
「他にも聞きたいことある?」
「いや、もう十分だよ。それにしても短時間でよくここまで調べられたな」
レアルは素直に感心した。呑気そうな顔をしているができる大人なのだろう、と少し失礼なことも考えていた。
「こう見えても先生は元研究者なのです」
エメリは胸を張りながら答えた。研究者ということは軍属だったのだろう。けれど、規律の厳しい軍の中でエメリが上手くやっていたとはどうにも思えなかった。
「あ、そうだ。もしかして、セルフィさんが持ってた薬ってエメリ先生が作ったのか?」
「学院長代理の薬?あぁ、あれは私じゃないよ」
「じゃあ、やっぱりセルフィさんが作ってるのか」
「うん。だってあれは薬じゃなくて毒だもん」
「え・・・」
レアルはそれを聞いて一瞬固まってしまった。ここに来る前にセルフィが専門外だ、と言っていた理由がようやく分かった。
そして、レアルは一度その毒を飲まされていることを思い出す。すると、急に体が大丈夫なのか不安になってきたのであった。




